黒川みつひろさんの「恐竜トリケラトプス」シリーズ。

 私は、幼児期の息子に、毎晩、絵本の読み聞かせをしていました。中でも、最も好きだったのが、そのシリーズでした。

 息子は、ティラノサウルスが出てくると、「ティラノ、ティラノ」と叫びました。県図書館へ行くたび、そのシリーズを借りましたが、毎晩、同じ本を読んでほしいとせがむので、結局、書店で購入していました。どの本も、最低1カ月は毎晩読みました。繰り返し読むうちに、私は物語を覚えてしまい、一緒に絵を見て読み聞かせながら、息子との会話を楽しむようになりました。何度も同じ場面で喜ぶ息子の姿にほほ笑み、楽しく絵本を読んでいたことが懐かしいです。

 恐竜のフィギュアやカルタでも、毎日のように遊びました。図書館までの私との競走や、妻とのお馬さんごっこも大好きでした。県美術館や岐阜市科学館にも、頻繁に足を運びました。科学館では、恐竜の展示物や電子恐竜図鑑を何度も見ました。プラネタリウムも、テーマが変わるたびに見ていたことを覚えています。

 大好きな恐竜の博覧会を訪れた高田明浩さんと浩史さん=2007年、名古屋市

 県図書館にも頻繁に通い、恐竜の絵本に限らず、たくさんの絵本を読み聞かせました。昆虫や生き物のお話、図鑑もお気に入りでした。図書館前の広場での水遊びも、よく楽しみました。卒園式で、「本屋さんになりたいです」と発表していたことも、懐かしい思い出です。

 毎晩、絵本を一緒に読み、2人で対話したことは、1歳のときから保育園に通っていた息子にとって、私とのコミュニケーションの時間だったのだと思います。私にとっても、膝の上に乗り、「絵本、読んで」とせがんでくる息子に読み聞かせをする時間は、思い出に残るものでした。ただ一つ残念なのは、あまりに日常的なことであったため、そのときの写真が1枚もないことです。

 その後、息子と対話する題材は、絵本から本、新聞、ネットのニュースへと変化していきました。小学校高学年から中学生の時期は、新聞2紙を比べて読む息子に、経済や世界情勢などの記事について尋ねられ、私にとってもずいぶん刺激になりました。

 今も、息子はいろいろな話をしてくれます。息子の話を聞くたび、良い先輩や友人に囲まれて、幸せな子だなと感じます。私自身は、そういった皆様にお目にかかる機会はなかなかないのですが、この場を借りて、お礼の気持ちを伝えられたらいいなと思います。

(「文聞分」主宰・高田浩史)