息子明浩の、2021年3月6日のプロ入り決定後は、毎日のようにお祝いに来る方がいて、慌ただしくもうれしい日々を過ごしました。30人ほどの方からプロ入り祝いを頂き、多くの皆さんのおかげで息子がプロ入りできたことを改めて感じたときでした。
息子は、師匠の森信雄先生や一門の先輩、女流棋士の先輩などから頂いたネクタイやシャツ、アマ四段の繁田浩一さんから頂いた駒などを、今も大切に使っています。
コロナ禍のため祝賀会などはなかったのですが、私の教室の生徒たちも、お祝いの絵やお手紙、花束などを持って来てくれました。先日放送のNHK・Eテレの番組「将棋フォーカス」で特集された際、息子がスーツに付けていたけん玉のピンズも、生徒手作りの物です。
3月10日、柴山芳之先生と一緒に、各務原市の浅野健司市長にプロ入りを報告しました。市長は、息子が小学生のときにプレゼントした置き駒のことなど、昔の出来事を懐かしく話され、わがことのように喜んでくれました。
3月19日には、森先生に報告に行きました。先生は、奥様と共にレストランでお祝いしてくださり、豪華な花束など、さまざまなお祝いをくださりました。
それまでの先生は、将棋になかなか集中できない息子に対し、本人の将来を考えて苦言を呈されることが多かったのですが、その日は大変な喜びようで、大きな期待の言葉をかけてくれました。
特に、「将棋の力が伸びるのは若いうちだから、今は、指導やイベントなどの普及活動はせず、将棋の勉強に集中して、藤井君に挑戦できるようになりなさい」と何度も話されていたことは、記憶に残っています。
息子はよく、「森先生は直接将棋の指導はしないけど、棋譜を提出するだけで、自分が勉強しているかどうかを見抜くのがすごい。さぼっていると見抜かれて、厳しい言葉をかけられる。頑張っているときは、結果が悪くても励まされる」と話していました。
これは、その子をかなり観察していないとできないことです。森先生は、多くの弟子がいる中でも、一人一人を注意深く見られているのだなと感じました。
私も今では、生徒が書く作文の字や内容を見ると、その子の意欲や、どのくらいの時間をかけて書いたものかが、手に取るように分かるようになりました。そうなるまでには何年もかかりましたが、今も、森先生の姿を思い出し、より注意深く子どもたちを観察して、その子に合った声かけや指導をするよう心がけています。
(「文聞分」主宰・高田浩史)