生徒の新聞切り抜き作品や新聞紙で手作りしたえとの置物を紹介する原田結花NIEアドバイザー=岐阜新聞本社
ヒダサンショウウオの学習をまとめた2年生児童の力作などを紹介する奥田宣子NIEアドバイザー=同
岐阜新聞社のかべ新聞コンクール応募はじめ、投稿や広告の利用など多様な新聞活用を紹介する細江隆一NIEアドバイザー=同

地域ニュース高い関心 原田結花 高富中教諭
正しい情報読み解く 細江隆一 美濃加茂西中教諭
記事の文体いい教材に 奥田宣子 富岡小教諭

 県NIEアドバイザーとして活躍している原田結花教諭(山県市立高富中)、細江隆一教諭(美濃加茂市立西中)、奥田宣子教諭(山県市立富岡小)が岐阜新聞社で開いた鼎(てい)談では、2020年度から小中高校で順次実施される新学習指導要領での新聞活用に期待が高まった。

 -新学習指導要領では、地域社会との連携が重点の一つとされている。どのように新聞を活用しているのか。

 原田 担当しているふれあい学級では毎朝、新聞記事の内容に触れている。当初は関心のなかった生徒も話に加わるようになってきた。社会の話題で一日が始まっている。

 細江 中学1年は、生活に直結した話題や教科書に関連した記事に興味を持つ。昨年末"今年の漢字"を予想したが、提示された「災」は、生徒らも大雨による断水を体験して実感したようで、非常に盛り上がった。

 -新聞作りも活発に行われている。

 奥田 昨年、2年生児童がヒダサンショウウオについての学習をまとめたが、内容はもちろん、文字も丁寧で読みやすく、イラストも素晴らしかった。担当の先生のご指導のたまものだが、子どもたちの伝えたいという目的意識が、強い意欲につながると分かった。

 原田 一人の生徒が、自主的に地元で発生した豚(とん)コレラの記事の切り貼りをやりたいと言い出した。自宅からも記事を持参して掲示し、今では時系列の巻物のようになっている。途中で岐阜県地図を描いて、発生場所をマークするなど、主体的な学習がどんどん広がっている。

 奥田 新しくできた新聞部の6年生数人が自主的に「災害」と「福祉」をテーマに新聞を作った。取材やアンケートを行い、割り付けや見出しに苦労しながら、防災訓練の意味や災害対策など充実した内容の新聞を完成させた。自主性が意欲的な活動につながった。

 -地域情報や新聞作りのほか、NIE実践の具体例を。

 細江 新聞はインプットばかりでなく、アウトプットする媒体でもある。投稿による学びは大きく、取り組む先生も増えている。

 奥田 書くことに抵抗を持つ子どもには、5W1Hを意識して書かれている記事の文体がいい教材になる。また、新聞は道徳の生きている教材であり、現実社会と結びつけて考えることができる。大学入試も変わることになり、限られた時間や文字数で自分の考えを書く力は、小さい時から学ぶ必要がある。

 細江 西中では、本の紹介をして、どの本が一番読みたくなったかを競うビブリオバトルをやっている。本の情報は新聞の書評や紹介記事、ランキング、広告を活用する。新聞では多様な本が掲載され、的確な表現で紹介されているので、とても参考になる。

 原田 本年度の実践校の城南高校では、新聞に載ったレシピからアレンジ料理を作り、昨年11月の県NIEセミナーで素晴らしい報告があった。

 -改めてNIEの役割をどのように考えるか。

 細江 新学習指導要領の重点となっている主体的・対話的で深い学びに、NIEが果たす役割は大きい。正しい情報を主体的に読み解き、理解するメディアリテラシーを育て、フェイクニュースを見分けるには新聞を活用する授業が必要。

 原田 新聞をうまく活用すれば、教員の働き方改革にもつながる。教師自身が新聞を読まないと、子供たちに正しいことを教えることができないのでは。

 奥田 新聞は、広げて見ていくことで、意図しないさまざまな情報が目に入り、新しい発見ができる。

 -最後に、今後の希望を。

 原田 山県市の小中高が連携してNIE活動を推進し、保護者も一緒に新聞に向き合う環境を育てたい。

 奥田 教師が主体的に新聞に向き合って活用していける環境が県全体に整うといい。

 細江 新聞を活用している教師は意外に多い。そうした教師のネットワークができると大きな力になる。

 -ありがとうございました。