プロの演出家や俳優らを講師として県内の高校に招く「演劇ワークショップ」が本年度で11年目を迎えた。演劇ならではの表現活動を活用したゲームを通して、コミュニケーション能力や自己表現力の向上を目指す県教育委員会独自の取り組みで、導入を機に生徒同士の人間関係が円滑になり、周囲への配慮にもつながっている。実施校では中退者が5割以上、遅刻回数は8割ほど減少しているとのデータもあり、今後の継続や展開に注目が集まっている。
当初は硬い表情だった生徒たちに、笑顔が広がった。可児郡御嵩町の東濃高校で15日に行われた演劇ワークショップ。車座になって順番に数字を言うゲームに取り組む生徒に、名門劇団「文学座」(東京都)の演出家西川信廣さんが「思い切り失敗しよう」と声をかけた。キャラクターに扮(ふん)して移動する椅子取りゲームなどにも取り組み、教室は明るさに包まれた。
「ゲームを通して、お互いの見えない部分が見えるようになる」と西川さん。どのゲームにも、相手の動きや思いを想像する要素が含まれており、「演出家」の西川さんが導く方向にムードが形づくられる。当初は恥ずかしがったり、うまくいかなかったりした生徒たちも、次第にお互いの目や動きを見てフォローするようになっていった。
2012年度の東濃高校から始まったワークショップは本年度、県立高校63校のうち少人数の学校を中心に13校まで拡大した。対象は、入学したばかりで学業や対人関係の行き詰まり、孤立などを感じやすい1年生。各校で年3回行われ、県と連携協定を結んでいる文学座の演出家や、俳優の竹下景子さんらが講師を務める。
県教委の調査によると、ある高校では、生徒の中退率が当初は3~4割ほどに上っていたが、ワークショップ導入後は1割台にまで減少。1年間の遅刻の延べ回数も最大3千回に迫るほどから、500回以下にまで減少した。生徒へのアンケートでは「相手の顔を見て話すことが大切だと思った」や「クラスの仲が最初に比べてすごく良くなった」などと好意的に捉える意見が多かった。西川さんは11年間の取り組みを振り返り「学校の雰囲気が劇的に変わる。今後も人とのつながりや居場所をつくるきっかけになれば」と話す。
県教委は、外部機関とのさらなる連携や実施校の拡大、多くの教員や近隣の学校も巻き込んだワークショップの展開などを目指す方針。担当者は「生徒にとってプラスの効果が大きい。地域の人たちにも頑張っている姿を知ってもらえるよう取り組みを充実していきたい」としている。













