北海道から笠松に移籍し、歓迎セレモニーで笑顔を見せる水野翔騎手
2日目に2勝を挙げるなど、笠松で好スタートを切った水野騎手
ベテラン勢に交じって、熱戦を繰り広げる若手騎手たち
冬期交流騎手として金沢から笠松に参戦した栗原大河騎手(左)と塚本弘隆騎手の歓迎セレモニー
水野騎手(左)とレースを終えた渡辺竜也騎手。笹野博司厩舎の若手として飛躍が期待される

 20歳の若武者が、新天地を力強く駆け抜けて新風を吹き込んだ。今年、北海道競馬(門別)から笠松競馬に移籍した水野翔(かける)騎手が新春シリーズで好スタート。2日目には移籍初勝利を飾るなど1日2勝2着2回の活躍を見せて「あいつ、乗れるなあ」とファンをうならせた。最終日には3勝目も挙げた。

 金沢競馬からは、2月までの冬期交流騎手として、19歳・栗原大河騎手と22歳・塚本弘隆騎手の2人が参戦。30代以上のジョッキーが多い笠松だが、17歳・渡辺竜也騎手を含めて20歳前後の若手騎手が4人に増えた。競馬場の雰囲気も若返ったかのようで、スタンドでは応援する若者グループの姿も見られた。金沢からの冬期遠征馬も約30頭参戦。競走馬と騎手不足に泣いていた笠松で1日12レースが組まれ、熱戦を繰り広げた。

 初日から同じレースで火花を散らした若手騎手4人に、笠松での目標などを聞いた。水野騎手は神奈川県川崎市出身で、2年連続リーディングの笹野博司厩舎に所属。昨冬にも期間限定騎乗で笠松に参戦し、11勝を挙げた。門別での騎乗が11月前半で終わり、「笠松ではレースが一年中開催され、馬にもいっぱい騎乗できるメリットがある。昨年も騎手や調教師、厩務員の皆さんによくしていただき、いい競馬場だなあと思って」と、笠松への移籍を決断した。「競馬場の主催者や厩舎にも『ウエルカム』で快く受け入れていただき、応援してもらえる」と感謝。地元ファンとしても、生きのいい若手騎手が増えることは大歓迎である。

 「今後、笠松のジョッキーとして上を目指していきたい」と意欲。昨年70勝を挙げた藤原幹生騎手は厩舎の先輩。年下の渡辺騎手とも同じ厩舎で、お互いに騎乗技術を磨き合いながら、良いライバルになりそうだ。初日の歓迎セレモニーでは、「仲良くさせてもらって、(笠松での生活に)めっちゃ慣れてきました。精いっぱい頑張ります」と笑顔であいさつ。持ち前の明るさと真新しい勝負服で記念写真のポーズを決めていた。

 門別では1日5、6戦だったが、笠松初日には、いきなり8戦騎乗。終盤の10、11Rで2着2回と馬券連対圏に食い込んだが、「2カ月ぶりの実戦で疲れました。10Rはもっと前に行くべきだったし、11Rは3、4コーナーで勝ち馬に並びかけてもよかった。内容には満足していないし、勝ちたかったです」と、勝利への強いこだわりを見せた。

 2日目1Rでは、その意気込み通り、6番人気の4歳芦毛馬アイファータキオン(水野善太厩舎)で逃げ切って移籍初勝利。昨年全国リーディング2位の岡部誠騎手が騎乗した1番人気馬を破る殊勲星で、びっくりさせられた。11Rでは「勝利をプレゼントしよう」とばかりに、笹野調教師が親心で用意してくれた自厩舎のシャトーウインドに騎乗。中央の元オープン馬で、1番人気に応えて完勝した。

 水野騎手は、昨年のヤングジョッキーズシリーズ(YJS)にも出場。北海道・東北ブロックで2位(4戦2着2回)と好成績だったが、惜しくもファイナル進出は逃した。それでも「北海道所属でファイナルに行っていたら、今回、笠松には移籍できなかった。YJSはいい経験になった」と納得。新天地での目標は「騎乗技術と人間性を磨いて成長し、厩舎の人やファンからの信頼を築くこと。勝ち負けできる馬にも乗せてもらえ、期待に応えてリーディング5位ぐらいの勝ち星を挙げたい」と闘志満々。これからも笠松や北海道時代のファンの期待を背中に感じながら、勝利を積み重ねる決意だ。

 金沢勢の栗原騎手も神奈川県出身。デビュー4年目で、笠松での冬期交流は3年連続。初日は「久々の笠松で、アッという間に終わった感じ。レースに慣れていい成績を残したい」。YJSファイナルにも渡辺騎手らと出場したが、「技術不足を実感した。騎乗馬も人気がなかったが、もう少しうまく立ち回れたらよかった。初めての南関東、JRAでの競馬が味わえ、いい経験になった」。笠松では「積極的な競馬を心掛け、騎乗馬も結構いるので、2桁勝利を目指して頑張ります」と闘志。3日目に4番人気馬で初勝利を挙げ、重賞・白銀争覇では金沢のディアグリスターで3着と気を吐いた。

 塚本騎手は静岡県出身で、デビュー5年目。昨年9月に船橋競馬から金沢競馬へ移籍した。水野騎手とは同期で、競馬学校で一緒だった。ジョッキーの数が多く、レベルも高い南関東では騎乗機会が少なく、1日1レースぐらいだったという。「(高知など)全国のいろいろな競馬場で乗ってきたが、笠松は馬場がきれいで、とても乗りやすく感じた。印象に残るレースをして、5勝ぐらいできるといい」と意欲を示した。

 昨年4月デビュー、笠松で35勝を挙げた渡辺騎手の2年目の目標は「YJSファイナルで優勝すること。笠松では、50勝以上を目指します」と、大胆さに謙虚さも忘れずに飛躍を期す。「自厩舎では(3勝、2着6回と相性が良い)牝5歳のサクラエが好きな馬です。(自分の騎乗スタイルは)逃げると後ろからのプレッシャーを感じるので、2、3番手から差す競馬を目指す」と頼もしい口ぶり。水野騎手については「楽しい先輩です。競馬学校の実習生の頃から面倒を見てもらった。食事や買い物にも一緒に行ったりしてます」とにっこり。

 若手騎手たちはプライベートでは、食事なども楽しみなようだ。YJSファイナルの表彰式では、副賞(銘柄畜産物セット)として、岐阜からは飛騨牛が2位の岩崎翼騎手(JRA)に贈られた。栗原騎手も昨年、岐阜で食べたギョーザのほか、高山で味わった飛騨牛が「めっちゃおいしかった」と話し、「勝って、おごってもらうことも目標にします」と塚本騎手。3月で20歳になる栗原騎手は、笠松参戦のため、成人式に出席できなかった。昨年は水野騎手も笠松に来ていて、成人式には出られなかったという。レース映像で勝利の晴れ姿を地元の友達たちにも見せられるといい。

 新春シリーズでは、水野騎手が3勝2着6回、栗原騎手が2勝。最終日には塚本騎手、渡辺騎手もうれしい初勝利を飾った。若手騎手たちの活躍に刺激を受けたのは中堅、ベテラン勢。筒井勇介騎手が1日4勝の固め勝ちを含め11勝、昨年リーディングの佐藤友則騎手が7勝と好発進。次の笠松開催は22日から5日間。水野騎手や金沢勢ら若手騎手の活躍は、馬券作戦の上でも侮れないだろう。