泌尿器科医 三輪好生氏

 血尿に関するお話です。ある日突然、尿の色が赤かったら誰でもびっくりすると思います。血尿と一言で言っても原因はさまざまです。心配のない血尿もありますが、自分で大丈夫と判断するのはとても危険です。中にはすぐに治療が必要なものもあります。今回は血尿の原因と普段よく聞く血尿のうわさについて解説をします。

 まず、血尿は大きく二つに分けられます。目で見て明らかに色が赤い尿のことを肉眼的血尿と呼びます。一方、見た目は赤くないけれど検査で尿に血液が混ざっているものを顕微鏡的血尿と呼びます。検診などでよく指摘される尿潜血は尿定性検査と呼ばれるもので、尿に試験紙を浸して色の変化を見て判定します。

 尿定性検査では実際に血液が混じっていなくても陽性になるいわゆる偽陽性もあるため、正確には実際に顕微鏡で観察をする尿沈渣(ちんさ)という検査を行います。肉眼的血尿も顕微鏡的血尿も尿に血液が混じっていることには変わりありませんが、肉眼的血尿の方が混ざっている血液の量が多く、精密検査を行うと何らかの異常が見つかることが多いです。

 一方、顕微鏡的血尿の場合は精密検査でも原因が見つからないことも多いですが、中には膀胱(ぼうこう)がんなどの早期発見につながることもあるので一度は泌尿器科で検査を受けることをお勧めします。

 血尿の原因としては悪性腫瘍、膀胱炎、尿路結石、腎臓病などがあります。この中で早期に発見して治療が必要なものは悪性腫瘍です。膀胱がん、腎盂(じんう)・尿管がん、前立腺がんなどで血尿が見られますが、特に膀胱がんの85%は肉眼的血尿で発見されるといわれています。悪性腫瘍による血尿は痛みなど他に症状を伴わない、いわゆる無症候性肉眼的血尿というかたちを取ることが多いです。血尿が出ても痛みがないから心配ないのではなく、むしろ急いで受診すべきです。

 尿路結石や膀胱炎では多くの場合で痛みを伴います。腎臓の糸球体などの異常からなる腎臓病では尿にタンパクが混じっていることが多いです。血尿と尿タンパクを指摘された時には腎臓内科を受診することをお勧めします。

 その他、まれではありますが腎臓内の血管の奇形(腎動静脈奇形)や腎静脈の圧迫によるうっ血(ナットクラッカー現象)などで血尿が出ることもあります。腰痛などの痛みや貧血になるような血尿が続く場合は治療が必要になります。

 激しい運動をした後には血尿が出るという話を聞いたことがあるかもしれません。これは血尿ではなく、激しい運動で血管が障害を受け赤血球が破壊されたことによって起こるヘモグロビン尿や、筋肉が障害を受けることによって筋細胞から出てくるミオグロビン尿を見ていると思われます。また、運動で脱水になると尿の色が濃くなり茶色っぽく見える濃縮尿も見られます。

 朝起きて最初の尿の色が濃いのも同様に濃縮尿です。尿漏れのある中高年女性が尿取りパッドに血液が付いたという場合には、血尿の精査とともに不正出血を疑い、婦人科の受診をお勧めします。どのような血尿でも自分で大丈夫と判断することはせず、特に肉眼的血尿が出た時は早めに泌尿器科を受診しましょう。

(岐阜赤十字病院泌尿器科部長、ウロギネセンター長)

◆血尿の原因

・悪性腫瘍(膀胱がん、腎盂・尿管がん、前立腺がん)

・尿路結石(尿管結石、膀胱結石、尿道結石)

・膀胱炎

・腎臓病(糸球体腎炎、ネフローゼ症候群など)

・腎動静脈奇形

・ナットクラッカー現象