真夜中に岐阜県を通過する〝深夜特急〟がある。特急「ひだ」でも「しらさぎ」でも「しなの」でもない。東京と四国、山陰を結ぶ寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」だ。闇夜に幻想的な光跡を残し、静かに走り去るサンライズ。その姿を〝新垂井駅跡〟で捉えた。
昔は数多くあった寝台特急も、定期運行しているのは今や国内でサンライズだけ。岐阜県でその姿を見た人は少ないかもしれないが、実は毎日、岐阜県を通過している。東京駅と高松駅(香川県)、出雲市駅(島根県)の間を東海道線経由で結び、岐阜県内は上下線でおおよそ午前2~3時台に走る。寝ている間に。しかも、岐阜駅でも大垣駅でも、さらには名古屋駅でも米原駅でも乗車できない。身近なようで身近ではない、幻のような列車だ。
岐阜県内の東海道線。大垣―関ケ原間は2ルートある。高松、出雲市行きの下りのサンライズは、ほかの特急や貨物列車と同じように垂井駅を経由しない、北側の山沿いの〝迂回(うかい)線〟を走る。正式には、この迂回線が東海道線下り線といい、ここに戦中から1986年まで「新垂井駅」があった。跡地には今、石積みのホームが残るだけだ。
下りのサンライズが新垂井駅跡を通過するのは、午前3時前。静寂に包まれた真夜中の新垂井。満天の星の下、カメラを向けて待ち構えていると、何本か貨物列車が過ぎた後、温かみのある光の線で闇夜を切り裂きながら、サンライズがやってきた。まるで銀河鉄道のよう。本当に存在していた。思わず息をのんだ。
後日、東京駅に出向いた。下りのサンライズは午後9時50分、東京駅の東海道線ホームから出発する。岡山駅まで高松行きと出雲市行きの車両を連ねて走る。切符の取りにくい人気列車で、ホームに入線すると旅人たちが列をなして乗車。すぐさま車窓に缶ビールが並ぶのも、この列車ならではの光景のようだ。
岐阜県を通る国内唯一の定期寝台特急。眠い目をこすりながら一度、見てみては。


















