「ライトアップinグリーン運動」が打ち出すキーワード

眼科医 岩瀬愛子氏

 2023年3月12~18日は「世界緑内障週間」であり、同期間に実施される日本緑内障学会の啓発活動に「ライトアップinグリーン運動」があります。15年に日本で始めたこの運動の参加施設は、最初は国内で5カ所だったのが、今年は900カ所を超え、海外にも広がりを見せています。しかし「緑内障」は日本の視覚障害原因の第1位の病気であり、高齢に伴い有病率が高くなるため人口の高齢化とともに罹患(りかん)人数が増えているにもかかわらず、まだまだこの病気についての理解が一般化しているとは言えません。

 緑内障は、眼圧がその目の許容量を超えることなどの理由で視神経が障害を受け、視野が慢性に欠けていく病気で、一度進行して欠けた視野は治療をしても元に戻らず、眼圧を下げることで進行を止めるか進行速度を緩めるしかありません。日常生活に支障があるほどに進行させないためには、眼科検診など目の検査をすることで、早期に発見し、治療を継続することが重要です。しかし、眼科検診の機会はまだまだ十分ではありませんので、かなり進行してやっと診断されることも珍しくありません。

 40歳以上の20人に1人という有病率なので、誰もがなり得る病気であるのに、緑内障と診断された多くの方は「まさか自分が緑内障とは。視力は良いのに…」と言われます。それが特徴で、初期には視力が落ちないなどの理由で自覚症状はほとんどないのです。つまり、緑内障発見のための検診は、視力検査では不十分で、「眼底検査」「眼圧検査」「視野検査」などが必要です。

 日本の緑内障の型の中では、眼圧が正常範囲にあっても緑内障を発症するいわゆる「正常眼圧緑内障」が多く、この型は「眼底検査」で発見できますが、一方で数は正常眼圧緑内障より少ないのですが眼圧が高い型の緑内障は進行度合いが早いことが知られており、検診には「眼圧検査」が必須です。また緑内障の視野異常に気付かないまま進行している人に気付いてもらうためには「視野検査」は重要な発見手段です。

 治療は目薬を毎日さすことで眼圧を下げ、眼科に通院して定期検査で進行度合いをチェックします。場合によっては眼圧を下げるための手術治療などをする場合もあります。そして治療は一生続きますが、緑内障だからといって、全ての人が視覚障害になるわけではなく、点眼も手術療法もどんどん選択肢が増えていますので、眼科主治医とコミュニケーションをよく取りながら自分に合う治療法を見つけることが大事です。

 「ライトアップinグリーン運動」で伝えようとしている緑内障のキーワードは「早期発見・継続・希望」です。「継続」には治療の継続とともに、検診を継続するという意味も含まれます。そして、緑の光は「あなたの眼(め)がずっと見えていますように」という希望の光のつもりです。より多くの人に緑内障について関心を持っていただき、たとえ緑内障になっても、適切な治療の結果、高齢になっても日常生活に支障を来すことのないよう、切に願っています。

(たじみ岩瀬眼科院長、多治見市本町)