中京ペガスターカップを制覇したスタンレーと藤原幹生騎手(名古屋競馬提供)

 暗雲を吹き飛ばし、復活のゴール。2カ月半後に迫った東海ダービーへ視界良好となった。

 笠松のスタンレー(牡3歳、後藤正義厩舎)が14日、名古屋・3歳重賞「中京ペガスターカップ」(SPⅡ、1700メートル)であっさり差し切って重賞初V。1番人気で騎乗した藤原幹生騎手は、愛馬の「再起動」に手応え十分。2着にも渡辺竜也騎手のツミキヒトツ(牡3歳、笹野博司厩舎)が突っ込み、笠松勢がワンツーを決めた。近年、笠松重賞では名古屋、兵庫勢にVをさらわれることも多いだけに、意地を見せてくれた。          

 スタンレーは昨夏には一時JRAヘ移籍し、新潟2歳S(GⅢ)にチャレンジ。10着に敗れたが、勝ち馬キタウイングとは1.0秒差と健闘。夢ある素材として、ファンの期待を集めてきた。

 2月の笠松・ゴールドジュニアでは、逃げて息切れ。陣営では「前走は調整明けで気合をつけて乗ってもらったら、ムキになってしまった」と不完全燃焼だったが、今回の追い切りは抜群のフットワーク。「状態も上がっているし、これだけ動けば文句なし」と必勝を期して送り出した。

優勝馬スタンレーと喜びの関係者(名古屋競馬提供)

 ■3番手から突き抜け完勝、笠松勢ワンツー

 7回目を迎えた中京ペガスターカップ。第1回(2017年)でグレイトデピュティ=島崎和也騎手=が勝って以来の笠松勢Vとなった。東海地区の生え抜き馬限定戦で、スタンレーにとってはメンバー的に恵まれた一戦となった。

 名古屋勢のクフィール=加藤聡一騎手=が逃げ、スプリングカップ4着のエムエスドン=岡部誠騎手=が追走。3番手・スタンレーは4コーナーを回って一気に先頭に立つと楽な手応えで突き抜けた。追い上げた5番人気・ツミキヒトツに2馬身半差をつけての圧勝だった。

 名古屋重賞での笠松勢のワンツーは、4年前・元日の湾岸ニュースターカップ以来。ブライアンビクター(大橋敬永厩舎)が勝ったレースで、騎乗していたのは藤原騎手。2着はフォアフロント=佐藤友則騎手=。1、2番人気で馬連は120円と、珍しく笠松勢2頭が圧倒的な人気を集めたレースだった。

藤原騎手は笠松現役でただ一人の東海ダービージョッキー

 ■「東海ダービーを目標にやっていきたい」

 中京ペガスターカップの表彰式では「ミッキースマイル」がはじけた。待望の重賞Vに「力はある馬。なかなか重賞で結果を出せなかったが、勝てて良かった」。馬体重はマイナス21キロで「今回は減りすぎでしたが、大外から前を見ていく感じで好位につけられて、とても乗りやすかった。向正面で気を抜くところがあったが、気合を入れたら反応して行く気になった」。

 最後の直線では鋭い伸び脚を見せ「前回ばてたので、早くスパートしないよう我慢した。重賞で1着を取れて、2馬身以上離しているんで完勝でしょう」と好感触。これで東海公営クラシックロード1冠目「駿蹄賞」(5月3日)への優先出走権を獲得。「また重賞で頑張ってくれそうです。ここで一つ勝てたんで、東海ダービーを目標にやっていきたい」と力を込めた。

ゴールドウィング賞を勝ったセブンカラーズと2着のスタンレー

 ■6連勝・セブンカラーズの対抗馬に再浮上

 名古屋の3歳馬ではセブンカラーズ=山田祥雄騎手=がデビュー以来6連勝で「絶対王者」。重賞はゴールドウィング賞とスプリングカップの2勝。抜群の先行力を武器に圧勝続きで、東海ダービー馬の最有力候補だ。

 これまで2着馬で最接近したのがスタンレーで、ゴールドウィング賞での「3馬身差」。重賞初Vの勢いもあり、東海ダービーに向けてセブンカラーズの対抗馬として再浮上した。

 弥富コースでは駿蹄賞が2000メートル、東海ダービーは100メートル延びて2100メートル。逃げるセブンカラーズを追うスタンレーにとっては、距離延長に活路を見いだしたいところだ。藤原騎手は2018年の東海ダービーをビップレイジングで制覇。デビューから10連勝中で単勝1.0倍のサムライドライブを豪快に差し切っており、ダービー2勝目を狙う。

笠松デビュー戦で初勝利を飾ったオマタセシマシタと渡辺竜也騎手

 ■オマタセシマシタは、脚の炎症で短期放牧中

 笠松競馬の人気馬といえばもう1頭、1月に初勝利を飾ったオマタセシマシタ(牝3歳、笹野博司厩舎)だ。お笑いトリオ・ジャングルポケットの斉藤慎二さんが馬主で、その動向が注目されている。

 笠松2戦目となった前走は、3~4コーナーで失速し7着に終わったが、馬体に異常はなかった。その後はツイッター上で一時「登録抹消」騒ぎがあったが、誤報と判明。次走に向けて調教に励んでいるはずが、早朝の攻め馬には姿が見られなくなっていた。

 情報が途絶えていたが、斉藤オーナーが14日「愛馬オマタセシマシタについてご報告」と自身の動画を更新。笹野博司調教師によると、歩様に乱れはなかったが、その後、歩き方に硬さが見られたことから、脚元に炎症があることが判明。三重県名張市の牧場で放牧中だという。

笠松・笹野博司厩舎に転入し、前走後は三重県の牧場へ放牧に出ているオマタセシマシタ(笹野博司調教師提供)

 症状は軽く、期間は1~2カ月の放牧となり、笠松への復帰は5月以降になる見通し。斉藤オーナーも「これまで11戦しているから少し休んで、リフレッシュを兼ねて成長してくれれば」と期待。笹野調教師は「治り具合によっては、放牧期間を早めて調教に乗りだすかも」とオマタセシマシタの状態を最優先し、復帰を目指すことになる。

 前走での敗戦後、当欄では「短期放牧などで休養して、2勝目も『お待たせしすぎる』ことになるかもしれない」と今後の展開を予想していたが、笠松には夏以降も所属し、2勝目を狙うことになる。主戦騎手から「牧場に行っている」とは聞いていたが、その通りだった。笹野調教師の早期発見で大事に至らないことを祈り、また笠松で元気な姿を見せてほしい。2勝目を挙げれば、斉藤オーナーの出身地でもある船橋に移籍することにもなるが、当分は笹野厩舎所属でファンの注目を浴びることになりそうだ。

寺島良調教師の実家・寺島書店の店頭にも並んでいる「オグリの里・聖地編」

 ■「オグリの里・聖地編」、寺島書店の店頭にも

 オマタセシマシタの前走は、幸運にも「オグリの里・聖地編」出版記念の協賛レースとなった。場内は盛況で、新刊の先行発売にも多くの笠松競馬ファンに立ち寄っていただけた。

 JRAの寺島良調教師の実家でもある寺島書店(岐阜県本巣郡北方町)は、北方まつりでみこしが練る商店街の真ん中にある老舗の本屋さん(17時まで営業、木曜日定休)。同郷で自宅から近いこともあって、真っ先に「オグリの里」の新刊を店頭に並べてもらった。店内には寺島調教師が助手時代に担当し、思い出深いアサクサキングス(菊花賞優勝、日本ダービー2着)の写真なども展示されている。

日本学校農業クラブ全国大会で最優秀賞を受賞した小栗実さんの新聞記事(2004年11月10日付・岐阜新聞)

 ■岐阜市出身の小栗実さん、JRA調教師デビュー

 中京競馬場では12日、岐阜市出身の小栗実さん(36)=栗東=が待望のJRA調教師デビューを果たした。オグリキャップの初代オーナーだった小栗孝一さんと同姓で、注目度もアップ。新規開業で、初日に2頭を出走させた。

 小栗さんは岐阜農林高3年の時、日本学校農業クラブ全国大会で農業鑑定競技・畜産の部に出場し、最優秀賞を受賞した。(当時の新聞記事があった)

 高校卒業後、軽種馬育成調教センターに入り、武田ステーブル(北海道浦河町)に就職。JRAの厩務員、調教助手を経て7回目の受験で難関の調教師試験に合格した。

 デビュー時の管理馬は3勝馬のトーホウディアスをはじめ22頭。中京での初陣はヤマカツラナウェイで7着。恋路ケ浜特別では実績馬のタイセイドリーマーで5着と掲示板を確保した。18日の阪神では河原田菜々騎手の騎乗でヤマカツリンを出走させる。まずはJRA初勝利を目指して、愛馬たちの育成に励む日々が続く。

 岐阜県出身のJRA調教師は増えて、小栗調教師で3人目だ。国枝栄調教師と寺島良調教師が北方町出身で、小栗調教師の母校である岐阜農林高も北方町にある。全国の市町村の中でも9番目に小さな町として知られるが、人口密度は県内で一番高い。かつては周辺の農家に笠松競馬などへ参戦させる馬もいたそうで、偶然だろうが、優秀な調教師を生む土壌もあるようだ。小栗調教師は開業前には、国枝厩舎や寺島厩舎で技術調教師として研修。郷土の先輩からアドバイスを受けて、馬づくりを学んで調教師デビューを果たした。トレセンなどでは、岐阜弁が飛び交う楽しい交流も広がりつつあるそうだ。

 JRAの田口貫太騎手(19)は笠松への里帰り騎乗で、交流戦を連勝する快挙。中央での4日間では既に20戦。新人では騎乗数が最も多く、馬券圏内は2着2回、3着1回。阪神競馬場で18日に7頭、19日には3頭に騎乗予定。土曜・1Rの未勝利戦では、3戦連続2着の自厩舎・カネトシフラムに騎乗。こちらもJRA初勝利に燃えている。

笠松競馬場で実習に励んだ松本一心騎手候補生。地方競馬の騎手試験に見事合格し、4月デビューを目指している

 ■「サクラサク」の朗報、「松本一心騎手」4月に笠松デビュー

 レギュラーの所属騎手がわずか9人という笠松競馬には、待望の「生え抜き」が誕生する。今冬も多くの期間限定騎乗の騎手たちが笠松に来場して活躍したが、それぞれの地元に戻っていった。場内に掲示されている「所属騎手一覧」の写真は半減し、寂しくなっていたが、笠松競馬に「サクラサク」の朗報が舞い込んだ。

 昨年7月から5カ月間、笠松実習に励んだ松本一心(いちと)騎手候補生が、晴れて地方競馬の騎手免許試験に合格した(4月1日付で交付)。17日、地方競馬全国協会(NAR)から発表された。加藤幸保厩舎に所属し、4月5日からの笠松開催でデビュー予定だ。地方競馬の新人騎手は11人で、大畑慧悟(けいご)候補生も合格。叔父が大畑雅彰騎手で、愛知・倉地学厩舎に所属する。

 松本一心候補生は17歳で、地方競馬教養センター(栃木県)の第104期生。競走実習をクリアして騎手課程を修了した。競馬の世界に入るきっかけは「中学3年の頃に乗馬クラブで騎乗していて、ジョッキーになる夢を膨らませたことから」という。

 教養センターで2年間学び、笠松での実習では朝1時半前には競馬場に来て攻め馬に挑んだ。レース開催中は、装鞍や先輩騎手の鞍磨きなどに励み、実戦モードのハードさを体感。「即戦力として活躍できるように頑張りたいです」と闘志を燃やしていた。デビュー後には「親子ジョッキー」としても注目を浴びるだろうし、父・松本剛志騎手の背中を追って、笠松競馬場のゴールを力強く駆け抜けたい。

桜並木と名鉄電車をバックに疾走する笠松競馬の競走馬

 ■21日に「オグリの里」即売会、桜並木は見ごろに

 笠松競馬・スプリングシリーズ初日の3月21日には、祝日イベントとしてタレントの津田麻莉奈さんを迎え、トークショー&予想会を開催。人気漫画「ウマ娘シンデレラグレイ」でも登場した特設ステージで、司会の長谷川満さんとともに「スプリングアタック」などのレースを盛り上げる。開門時にはオリジナルマグカップを300人にプレゼント。オグリキャップ像近くでは「田口貫太騎手、聖地初V」を祝って、「オグリの里・聖地編」の即売会を開催。正門前では「愛馬会・軽トラ市」も開かれる。

 23日にはオグリキャップ記念トライアルとなる「マーチカップ」が開催され、注目の一戦となる。重賞勝ち馬が多く、ジョッキーでは金沢から吉原寬人騎手、兵庫から田中学騎手と山本咲希到騎手も参戦する。

 今年は桜の開花が早く、笠松競馬場周辺の堤防道路でも、24日までのレース開催中に見ごろを迎えそうだ。桜並木と名鉄電車をバックに疾走する競走馬の姿は美しく、スタンドからの撮影でシャッターチャンスを待ちたい。常連さんはもちろん、家族連れやウマ娘ファンの皆さんのご来場もお待ちしています。