昨年の盛岡・オパールカップで芝重賞を制覇した渡辺竜也騎手とプチプラージュ(岩手県競馬組合提供)

 「たくさん乗りたい」「東海盛り上げていきます!」と名古屋での騎乗数も増やして「V量産」への意欲をにじませた。笠松競馬の渡辺竜也騎手(25)が2月23日、NARグランプリ2025表彰式(都内ホテル)の晴れやかなステージに出席。ジョッキータイトル3部門のうちの「最優秀勝率騎手賞」のトロフィーを2年連続でゲットした。

 その言葉通り、今年の渡辺騎手は名古屋への積極参戦が目立っている。笠松で82戦27勝に対して名古屋でも同じ82戦で12勝(2月25日現在)。昨年1年間で名古屋騎乗は88戦(7勝)だっただけに、これは大きな変化だ。

 ここ2年ほどは全国勝率トップも意識してか、名古屋の厩舎から騎乗依頼があっても、有力馬への騎乗が減るため参戦をセーブしてきた。ところが今年は明らかに意識改革。2年連続全国勝率トップの自信の表れか。名古屋のヤング2人、塚本征吾騎手(22)と望月洵輝騎手(19)が笠松でもリーディング上位に名を連ね、勝ち星を積み重ねている姿に刺激も受けた。

 さらに昨年は同じⅤ字の勝負服で仲の良い塚本騎手が242勝で東海リーディングとなった。渡辺騎手としては笠松で4年連続リーディングの意地もあるだろう。名古屋への参戦を増やして、より高みを目指す新たな挑戦が始まった。

NARグランプリ2025の表彰式で「最優秀勝率騎手賞」を2年連続で受賞した渡辺竜也騎手

 ■笠松勢では98年のアンカツさんが最後

 渡辺騎手は毎年、高い意識でレベルアップに挑み続けてきた。年間勝利数で川原正一騎手の笠松記録を塗り替えて200勝超え。「最高勝率」の全国タイトルも2年続け手中にした。東海、全国へと翼を広げて成長を続ける笠松の絶対エース。昨年の他場重賞6勝の実績からも全国レベルのジョッキーとして誰もが認める頼もしい存在。今年は笠松勢では1998年のアンカツさん以来となる「東海リーディング」の座を目指したい。その先には「全国リーディング」という厚くて高い壁もそびえている。笠松だけでは騎乗数に限りがあり、名古屋遠征を増やさなければ近づけない頂上である。

 東海勢では岡部誠騎手が241勝(2017年)で全国2位になったのが過去最高。昨年3位の塚本征吾騎手(250勝)、5位の望月洵輝騎手(232勝)と共に「V量産機能」を装備した若手3人。渡辺騎手は笠松だけでは年間700レースほどが限界。だが名古屋に足を伸ばせば、騎乗数は飛躍的に増やすことができる。

 ただジョッキー数が足りていない笠松(14人)の場合、深夜から8時頃まで調教がびっしり。1人30頭以上乗ることも多くスタミナ勝負が要求され、過労からけがにつながるケースも目立つ。まずは無理をせず、体力が許す範囲でチャレンジしてほしい。

晴れのステージでNARグランプリの表彰を受けたジョッキーたち(NAR提供)

 ■渡辺騎手の強みは爆発力と勝率の高さ

 今年でデビュー10年目を迎えた渡辺騎手。まだ25歳と十分に若いし、ジョッキーとして最盛期ともいえる30代に向かってパワーアップ。「東海リーディング」の座を意識して名古屋での勝利数も増やしていきたい。

 渡辺騎手の強みはなんといっても爆発力と勝率の高さ。昨年全国では塚本騎手の14.9%、望月騎手の15.9%に対して渡辺騎手は29.4%。一昨年には騎乗機会8連勝でアンカツさん超えの笠松記録も達成した。

 今年は笠松と名古屋164レースで39勝。このペースなら年間1000レース以上騎乗が可能になる。一昨年は笠松で232勝を挙げており、今年名古屋で70勝すれば300勝ライン突破も見えてくる。25日の名古屋では8番人気オオタニズスマイルで勝って3連単23万円に絡んでおり、遠征先では馬券的にも意外と妙味がある。

 ■名古屋、笠松2場でも夢でない全国リーディング

 全国リーディングはこれまで南関東か兵庫勢がほとんど獲得してきた。2013年には元笠松の川原正一騎手(兵庫)が267勝でトップ。ここ3年は吉村智洋騎手(兵庫)335勝、森泰斗騎手(船橋)295勝、笹川翼騎手(大井)350勝でそれぞれ「最優秀勝利回数騎手賞」を獲得。今年も300勝超えが全国リーディング奪取の目安となりそうだ。

 ただ東海勢はこれまで全国リーディングがない。それでも南関東4場のように名古屋、笠松2場で毎週騎乗できれば、全国トップの勝利数も夢ではない。現実に塚本騎手は昨年、笹川騎手を上回る1692戦をこなし、今年の騎乗数も全国最多だ。

 名古屋でも昨年2勝を挙げた深沢杏花騎手は「(教養センターの後輩でもある)征吾や洵輝は笠松、名古屋でフル騎乗していてすごい。若いからなあ」とそのスタミナに驚いていた。笠松勢では筒井勇介、東川慎、明星晴大、大原浩司騎手も名古屋に多く参戦しているが人気薄での騎乗が多い。一方、笠松の競走馬が名古屋に参戦することは少ない。

昨年の「ジョッキーズチャンピオンシップ」で金沢入り。にこやかな渡辺騎手と塚本征吾騎手

 ■塚本騎手の東海リーディング、大きな刺激に

 昨年の名古屋リーディングは181勝の望月騎手だったが、東海リーディングの座は242勝の塚本騎手がゲット。佐々木竹見カップ ジョッキーズグランプリにも渡辺騎手と共に出場した。

 渡辺騎手としては、塚本騎手の東海リーディング獲得は大きな刺激になった。2017年以降8年連続でその座に君臨してきた岡部誠騎手は引退となって、東海リーディング争いに地殻変動が起きたのだ。

 今年もまだ始まって2カ月だが、望月騎手は正月の名古屋開催5日間で1日5勝を含め計13勝とスタートダッシュ。東海地区で60勝にまで数字を伸ばしている。2位以下は矢野貴之騎手、笹川翼騎手で塚本騎手(44勝)が4位、渡辺騎手は6位(39勝)で続いている。渡辺騎手、1月はけがで出遅れる年も多かったが今年は順調。暑い夏場に強いし「平常運転」で1日4、5勝を積み上げるタイプ。調教時からの落馬のほか、レース後の下馬(昨秋負傷)にも気を付けて、けがをしないことが第一。昨年は馬場改修を含め実質3カ月間の空白があったが、1年間フルに戦えれば結果は付いてくるし、ファンの期待にも応えていきたい。

デステージョに騎乗し、ポラリスサマースプリントで門別初勝利を挙げた渡辺騎手(ホッカイドウ競馬提供)

 ■「いろんな競馬場に呼んでもらい、重賞を勝たせていただいた」

 「最優秀勝率騎手賞」V2を達成した渡辺騎手。地方では620戦182勝で勝率29.4%。選考基準では中央のレース(30戦未勝利)も含められ最終的な勝率は28%だった。2位は赤岡修次騎手(高知)で27.6%で、結構接戦になっていた。    

 NARグランプリ表彰式は、地方競馬で活躍したアスリートたちをたたえる祭典。ジョッキー表彰で登壇した渡辺騎手。ロツキータイガー(船橋)に騎乗した名手・桑島孝春さんからトロフィーが贈られ、騎乗技術の高さが評価される最優秀勝率騎手賞の栄誉を受けた。

 渡辺騎手は「うれしく思います。いろんな競馬場に呼んでもらい、重賞を勝たせていただいた。特に北海道の重賞を勝たせてもらったのが印象に残っています」とデステージョで飾ったポラリスサマースプリントVを思い出のレースに挙げた。

 司会の小堺翔太さんに今年の目標を聞かれると、渡辺騎手はやや重い口を開いて「無事に1年を終えたいなと思います」と苦笑い。アンカツさんや川原正一騎手らの笠松記録を次々と塗り替えてきたが、具体的な数字とかを言うタイプではない。勝ち星を伸ばしていくうちに見えてきた景色の先にあるものを目標にするジョッキーである。

いしがきマイラーズを制覇し、岩手競馬「ドラウマチック 2025」の勝利騎手インタビューを受ける渡辺騎手

 ■「年間最多勝」「最優秀勝率騎手賞」「重賞ハンター」次々クリア

 当欄「オグリの里」では、3年前のシーズン後半に「川原騎手の年間最多勝記録更新」、2年前には2月の段階で「目指せ東海勢初のNAR最優秀勝率騎手賞」、昨年は「目指せ重賞ハンター」と全国での活躍を期待し、提案させてもらった。

 昨年は夏場に2カ月間も笠松の馬場改修があって、勝利数の記録更新は無理だった。調教に追われ、北海道での期間限定騎乗も断念した。このため「吉原寛人騎手(金沢)のように各地を飛び回る『重賞ハンター』を目指して全国区での活躍を」と願っていたが、期待以上の結果を連発。北海道、岩手、佐賀と他地区で重賞計6勝。特に盛岡では芝コースの重賞3連勝と快進撃。このうち1頭は地元・笠松からチャレンジした笹野博司厩舎のプチプラージュで、ゴール前の激戦を制し大きな1勝となった。

 わずか41日間に他場重賞4勝と大ブレーク。岩手競馬の優勝騎手インタビューでも「笠松に渡辺竜也あり」とたたえられ、全国区で成長した姿を猛アピール。ファンに「さすらいの重賞ハンター」ぶりを印象づけ。こちらが設定した「目標」を素晴らしい結果で次々とクリアしてくれて、すごくうれしかった。

「いろんな競馬場に呼んでもらい、重賞を勝たせていただいた」と受賞の喜び語る渡辺騎手

 ■「各地で成績を残せたという自信が大きい」

 NARグランプリの共同会見では「あまり意識はしていなかったですが(最優秀勝率騎手賞を)2年連続で取ることができ、うれしいです」と喜びを語った。
 
 昨秋には、笠松でのレース後「勝率トップで高知の赤岡騎手との争いになりそうだよ。またあの舞台に立ってほしいな」と声を掛けたことがあった。本人も「10月くらいに聞いてから、少し意識していました。特にやることは変わらなかったですが、自分の勝率を見るようになったくらいですね」と重賞ハンターは自らの賞取りレースでも追い込み態勢に入った。

 「競馬がない期間もあって勝利数は落ちてしまったが、全国で有力馬にたくさん乗せていただき、勉強になりました。そこで成績を伸ばせたことはうれしいですし、ジョッキーや先生との交流で学ぶことの多い1年でした」。具体的にプラスになったことは「いろんな所で乗って成績を残せたという自信が自分のなかで大きいです」と遠征先での成果を振り返った。

 「今年が始まってから、ベストフェアプレイ賞を目指していましたが、早くもステッキ連打で制裁を受けてしまったので、新しい目標を考えているところです(笑い)。昨年同様に、勝率を意識しているというよりはたくさん数を乗って、年末に近づくにつれて勝率にも色気が出てくればなと思います」

昨年の笠松競馬成績優秀者を表彰。今年は全国リーディングを目指す笹野博司調教師と渡辺騎手の師弟コンビ

 ■堂々のタイトル防衛。地方競馬トップジョッキーに

 デビュー2年目の「優秀新人騎手賞」、2023年の「ベストフェアプレイ賞」、24、25年の「最優秀勝率騎手賞」で4度目のNARグランプリ受賞。「勝利回数」の笹川翼騎手(大井)、「賞金収得」「殊勲騎手賞」の矢野貴之騎手(船橋)らと共にスポットライトを浴びた。渡辺騎手は堂々のタイトル防衛で、誰もが認める地方競馬を代表するトップジョッキーとなり、さらなる飛躍を誓った。

 師匠の笹野博司調教師は10年連続の笠松リーディングを獲得。今年は全国リーディングを目指しており、渡辺騎手との師弟コンビで「最多勝」「勝率」の全国2冠を獲得し、NARグランプリの晴れの舞台に立って笠松競馬をアピーしていただきたい。

年間235勝、重賞5勝を飾って最優秀新人騎手賞に輝いた望月洵輝騎手(右)

 ■望月騎手、最優秀新人騎手賞「目標としていた」

 デビュー2年目、望月洵輝騎手は年間235勝。サンヨウテイオウで東海優駿、ミモザノキセツでライデンリーダー記念など重賞5勝。地元では181勝を飾り、名古屋リーディングを獲得。渡辺騎手も「名古屋の超新星」と注目する末恐ろしい19歳でNAR「最優秀新人騎手賞」に輝いた。「レースより緊張しています。たくさんの騎乗機会に恵まれ、デビュー前からこの賞を目標としてきました。今年は他の賞を受賞して、憧れのこの場に帰ってきたいです」と初々しい表情で語った。
  
 会見では「受賞できてホッとしています。名古屋だけでなく笠松でも騎乗する機会に恵まれて、より多く勝利に導けるように頑張りました。結果がついてきて良かったです」。重賞初制覇となった東海優駿について「すごく思い出に残る1勝で、さらに頑張ろうと意識するきっかけになったレースです。友人らの声援もすごく聞こえていて緊張もしましたが、うまく乗れました」と振り返った。

デビュー2年目で東海優駿を制覇した望月騎手とサンヨウテイオウ

 ■「長い手足を生かしたダイナミックな乗り方を」

 騎乗の強みは「身長も高いので、長い手足を生かしたダイナミックな乗り方を意識しているので、そこを見ていただければ。騎乗スタイルは自分ではまだまだだと思うので、全てに磨きをかけていきたいです」。自身の描く将来像は「技術が認められて他場からも声が掛かり、全国で活躍できる騎手になりたい。そのためパトロールビデオもたくさん見て振り返りますし、自分のレース映像や騎乗馬の過去のレースも見るようにしています」。

 今年の目標は「夢は大きく、全国リーディングを取りたいです」と意欲を示した。まだ若いし、ちょっと「ビッグマウス」ではあるが、現在全国トップに立って勢いは一番あり、有言実行で「ひょっとしたら」との思いも湧き始めていた。

 ■翌日のレースで10日間騎乗停止の処分

 ところがである。晴れの表彰式の翌日、名古屋の第5レースで望月騎手は騎乗停止処分を食らってしまった。

 「望月洵輝騎手はメイショウオハコ号に騎乗したところ、騎乗法に適切を欠き競馬の公正を害したため10日間騎乗を停止された(3月11日まで)」

 最後の直線、騎乗馬は4着に落ちる結果となったが、ゴール手前から追う姿勢に欠けて「無気力騎乗」と判断されたのか。8R以降の騎乗変更は、けがではなかったが厳しい裁決となった。勝利を諦めてしまって、馬に無理をさせず追わなかったのか。全国リーディングを狙うには手痛い騎乗停止処分となった。

 騎乗技術が未熟な若手にはより厳しい目が注がれる傾向はある。騎手は「公正競馬の確保」が第一。「いい経験になった」とよく反省し、12日(名古屋)から出直していただきたい。

渡辺騎手の地方競馬通算1100勝を祝ったセレモニー(笠松競馬提供)

 ■笠松、名古屋競馬をより盛り上げ

 NARグランプリの「優秀新人騎手賞」はここ10年、東海勢では加藤聡一騎手、渡辺騎手、塚本騎手も受賞しており、望月騎手で4人目。笠松リーディング5位の明星晴大騎手(19)も含めて若手の成長は著しく「乗れているジョッキー」として騎乗依頼も多い。

 もちろん中堅ジョッキーも名手が勢ぞろい。笠松勢ではリーディング経験者の筒井勇介騎手や藤原幹生騎手、名古屋勢では東海優駿5勝の今井貴大騎手、笠松グランプリなど笠松重賞5勝の加藤聡一騎手らの一撃にも注目。若手騎乗の人気上位馬を倒せば高配当も呼ぶ。人馬の熱い戦いで古き良き「走るドラマ」の笠松競馬、「推理とロマン」の名古屋競馬をより盛り上げてもらいたい。


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 「1聖地編」「2新風編」「3熱狂編」に続く第4弾「挑戦編」では、笠松の人馬の全国、中央、海外への挑戦を追った。巻頭で「シンデレラグレイ賞でウマ娘ファン感激」、続いて「地方馬の中央初Vは、笠松の馬だった」を特集。

 林秀行(ハヤヒデ)著、A5判カラー、196ページ、1500円(税込み)。岐阜新聞社発行。ふらっと笠松(名鉄笠松駅)、ホース・ファクトリー(ネットショップ)、酒の浪漫亭(同)、岐阜市内・近郊の書店、岐阜新聞社出版室などで発売。岐阜県笠松町のふるさと納税・返礼品にも。