岐阜県美濃加茂市特産の高級干し柿「堂上蜂屋柿」。交流サイト(SNS)などで食べ方を巡って議論が起こったが、どんな干し柿なのか。生産者に作り方を聞くと、人の目と手をフル稼働し、繊細な手順で一つ一つ丁寧に作られていた。
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最高級品は1個3万円
そもそも堂上蜂屋柿とはどんな干し柿なのか。その歴史は古い。美濃加茂市北部の蜂屋町で育てられ、千年以上前から朝廷や戦国武将へ献上されてきた。普通の干し柿より大きく、中はあめ色で羊羹(ようかん)並みの上品な甘さ。茶会のお茶菓子に使われることもある。1個千円以上することも普通で、今年1月には名古屋市中央卸売市場本場(名古屋市熱田区)で、3個10万円で競り落とされた。
最高級品で1個3万円の干し柿、どうやって作っているのか。同市堂上蜂屋柿振興会長の坂井道夫さん(75)に聞くと、大量生産できず、手作業で作る理由が分かった。
機械化できない理由の一つはその形
まず形が機械化に向いていない。堂上蜂屋柿は上から見ると四角形だ。皮むき器の多くは実に針を刺してくるくる回して刃物で皮をむくが、四角形の堂上蜂屋柿でこの方法は無理だ。「一つ一つ手作業で皮をむくしかない」と坂井さん。
皮をむくタイミングも非常に重要という。坂井さんは11月の生産シーズンに入ると千個ほどの柿を毎日なでて、皮をむくタイミングを見極めるという。この時期を見逃すと、干しても黒くなってしまう。皮をむいたら色を鮮やかに保つため「硫黄燻蒸(くんじょう)」する。
堂上蜂屋柿の特徴の一つが、内部があめ色に輝き、ゼリーのようになっていることだ。そのためにする作業が「もむ」。一つ一つ、手でもんだりなでたりすることで、果肉の内側に水分が残らないようにする。
もう一つの特徴が表面を覆う白い糖分だ。この白い粉をまとわせるためにする作業がある。わらで作った道具「におぼうき」で表面を優しく掃くことだ。細かい傷を作り、そこから内部の糖分を染み出させる。
どこで干されたか見れば分かる
坂井さんによると、この糖分は風の影響を強く受けるという。風が強いところで干した柿の糖分の粒はやや大きくなり、弱いところでは細かくなる。蜂屋町でも場所によって吹く風が違う。坂井さんは堂上蜂屋柿を見ると、地区のどこで干された柿か分かるという。
一つの堂上蜂屋柿ができるまで40日ほどかかる。坂井さんは11月上旬の生産開始から毎日、こうした作業を繰り返す。作っている間は柿に付きっきり。食事も柿を干しているすぐ側で取る。柿を干す作業が終わっても、2月に剪定(せんてい)、5月に摘蕾(てきらい)、7月下旬に摘果、夏は草刈りなど作業は1年中続く。夏の草刈りは午前中だけで2キロやせる。
次の世代に引き継ぎたい
堂上蜂屋柿は途切れそうになったことがある。昭和初期、養蚕業の振興などで柿の木は桑に植え替えられた。1本だけ残った原木から接ぎ木で少しずつ増えて今がある。現在、接ぎ木は特定の業者だけが担い、管理している。
課題は担い手不足だ。ピーク時に120人いた会員は半減。高齢化もしている。手作業が多い堂上蜂屋柿はそれだけで生計を成り立たせるのは難しいという。大量生産、機械化、自動化、効率化。堂上蜂屋柿は、こうした言葉とは対極の作り方をしていた。坂井さんは「いつまでできるか分からないが、次の世代に引き継ぎたい」と話す。







