阪神競馬場でJRA初勝利を飾り、笑顔の田口貫太騎手

 「来たー、貫太だ!」。桜が見ごろを迎えた阪神競馬場の夢舞台で、新人ジョッキーのスマイルが満開となった。
 
 デビューして38戦目、19歳の田口貫太騎手(栗東、大橋勇樹厩舎)がついにJRA初勝利をゲットした。岐阜県出身では第1号のJRA競馬学校卒業生が「歴史的1勝」を決めた。
 
 3月26日、阪神競馬場で田口騎手は1Rと4Rで有力馬に騎乗。「初Vはどっちかだ」と勝利を信じて駆け付け、雨の中でライブ観戦。勝利の喜びを一緒に体感することができた。

レッツゴーローズに騎乗した田口騎手(右)。1周目のゴール前

 1Rは3歳未勝利戦(ダート、1800メートル)。田口騎手は自厩舎の牝馬レッツゴーローズに1番人気で騎乗。好スタートを決めて先団4番手から抜群の手応え。4コーナーを回って先頭に躍り出ると、そのままゴールまで一直線。酒井学騎手のヤマニンブルトンヌに食い下がれたが、最後は2馬身突き放して歓喜のゴールイン。3着には河原田菜々騎手のピエナパイロが粘り込んだ。 

「祝・JRA初勝利」のセレモニーで喜びの田口騎手

 ■北村友一騎手ら先輩から「おめでとう」

 レース直後、憧れの北村友一騎手ら先輩たちに次々と「おめでとう」の声を掛けられ、満面の笑みで検量室前に戻ってきた田口騎手。これまで2着が3回と悔しい思いをしてきたが、勝利をプレゼントしてくれたレッツゴーローズと初めて「1着」の枠場入り。厩舎スタッフらに迎えられて、ホッとした表情で愛馬の頑張りをねぎらった。
 
 「祝・JRA初勝利」のセレモニーでも、今村聖奈騎手ら先輩たちに囲まれて最高の気分。「前走より手応え良く、4コーナーもスムーズに回れたので、最後は自信を持って乗りました。僕が初勝利で大橋先生は300勝で、切りがよく勝つことができて良かった。まだまだ未熟ですが、これからも精いっぱい乗るので、応援よろしくお願いします」とファンにアピール。今年デビューした新人では3人目の初勝利を、みんなが温かい拍手で祝った。

 4Rではデビュー戦2着だった自厩舎の芦毛馬クリノクリスタルに騎乗し、大外から豪快に追い込んだが3着どまり。続いてハナ差4着だった5R後、田口騎手に改めて初勝利の喜びの声を聞いた(単独インタビュー)。

レース後、見ごろを迎えた桜並木をバックに勝利の味をかみしめた

 ■「先生に感謝の気持ちでいっぱい」

 ―JRA初勝利の味は格別でしょう。
 
 「大橋先生がデビュー週からずっと多くの騎乗馬を与えてくださったので、何とか結果を出したいと思っていました。先生に感謝の気持ちでいっぱいです」

 ―位置取りも良く、素晴らしいレースができましたね。

 「ゲートもうまく出てくれたので、いいポジションから競馬ができた。2着だった前走でこの距離(1800メートル)が合っていると分かっていたんで、自信を持って馬のリズムを重視して乗りました」

  ―3~4コーナーでは手応え良く上がっていき、完勝でしたね。

 「あんまり切れるタイプでなく、ジリジリといい脚を使う馬。待っていても後ろから来た馬に離されると思い、早めに前を捕まえようと。馬が強かったです。
 

検量室前の枠場入りでは、関係者に迎えられホッとした表情も

 ■笠松競馬で「馬の力を信じて乗れば勝てると学んだ」

 ―他の新人(小林勝太騎手と河原田菜々騎手)が先に勝っていてどうでしたか。

 「他の新人騎手もそうですが、やっぱり先輩方はみんなうまいんで『誰にも負けないように頑張らないと』と感じていました」

 ―笠松競馬で交流戦を連勝し、JRAでの騎乗にも生かしていますか。

 「笠松で勝たせてもらって『馬の力を信じてしっかり乗れば勝てる』ということを学ばせてもらいました」

笠松競馬場でのJRA交流戦で初勝利を挙げた田口騎手(左)と大橋勇樹調教師(中央)

 ■「みんなのメモリアルVになった」

 ―初勝利と大橋先生の300勝も重なり、すごい節目になったね。
 
 「先輩の方たちにも『おめでとう』と言われました。オーナーさんも中央初勝利だということで、みんなにとってメモリアルVになった。先生が『299勝』だと分かっていたんで、なんとか自分で決めたいと思っていました。先生に感謝しています」

 ―先生には何か言われましたか。

 「その後のレースも結構人気していたんで、自分にはまだまだ課題ばっかりなんで。先生には『取りあえず1勝して良かったな』と言ってもらいました。これからも気を引き締めて頑張っていきたいです」

 ―1勝できて気持ち的にはどうか。

 「同期のみんなも勝っていたし、2着が続いていたんで、一つ勝つことができて良かったです」

 ■「勝ちを目指して頑張っていきたい」

 ―競馬学校でもそうでしたが、デビューしてから2着(3回)が多いというイメージがあった。
 
 「2着ばっかりでなかなか勝ち切れていなかったが、こういう馬に乗せてもらって勝ち切れたのは良かったなと。模擬レースは勝ち負けよりも、経験としてやっていたんで。本当の競馬は勝ちしか求められていないんで、これからも勝ちを目指して頑張っていきたい」

 最後に「すごくいい競馬だったね。おめでとう。次のレースも頑張って」と声を掛けた。ジョッキー人生の大きな一歩となる初勝利。ご家族や笠松の厩舎関係者、ファンたちの応援にも背中を押され、最高のパフォーマンスを見せてくれた。目標の年間30勝に向けて、今後もこつこつと勝利を積み重ねていきたい。

2019年12月、父・田口輝彦調教師の管理馬ニューホープが東海ゴールドカップを制覇。セレモニーに参加した長男の貫太さん(左)

 ■大橋調教師「貫太で勝てたんで良かった」

 大橋調教師は通算300勝を達成。「今まで頑張ってくれた馬たちやジョッキー、関係者に感謝したいです。これからも400勝、500勝を目指して頑張っていきたい。所属騎手の貫太で勝てたんで良かったです」。

 笠松では3月8、9日に大橋厩舎の馬で連勝した田口騎手だが、中央のレースでは初勝利までやや時間がかかった。先生に本人は苦労してるのか聞いてみると「そんなことなはない。ケロッとしてますよ。頑張ってます」との返事。先に勝った新人もいたが「笠松での交流競走で勝っているから、気持ち的には楽だったでしょう」と。中央でも笠松のレースでも、いっぱい騎乗馬を用意しサポートを続けている。

 田口騎手の両親は笠松競馬の元ジョッキーで、父・輝彦さんは現役の調教師を務めている。2019年末の東海ゴールドカップでは、田口厩舎のニューホープが制覇。JRA競馬学校入学前だった長男の貫太君も優勝馬の口取りなどセレモニーに参加。将来への大きな夢を膨らませていた。当時はあどけない少年だったが、あれから3年余り、JRAのジョッキーとして初Vを飾り、立派に成長した姿を見せてくれた。

岐阜農林高時代から競馬の世界に興味を持っていた小栗実さん。JRA調教師としてデビューし、初勝利を飾った

 ■小栗実調教師もJRA初勝利

 田口騎手初V後の阪神7R(1勝クラス、芝1600メートル)では、岐阜市出身の小栗実調教師(36)=栗東=がJRA初勝利を挙げた。3月に開業し、初出走から11戦目。ミツルハピネス(酒井学騎手)が好位から抜け出して5馬身差で圧勝した。岐阜県出身の現役トレーナーとしては国枝栄調教師、寺島良調教師に続いて3人目の勝利となった。

 小栗調教師はこの日、中京競馬場で勝利を見守り「今まで開業にあたり、家族や両親が支えてくれた。大切な愛馬を預けていただけるオーナーをはじめ、さまざまな方のおかげで初勝利を迎えられ、感謝をお伝えしたい。チーム一丸となって常に探求心と向上心を持ち、取り組んでいきたいので、これからも応援よろしくお願いします」と喜びを語った。同期開業4人のうち上原佑紀調教師、西園翔太調教師に続く3人目のJRA初Vとなった。

 勝ったレースでは小栗厩舎から2頭出しで、枠番も隣同士だった。「落ち着いて調整できていて、体の張りもいいし、荒れた馬場も良さそう」と送り出した。ミツルハピネスで勝ったこの日は3月26日。「ミツル(3・2・6)の日」でもあるとかで、初勝利の記念日にもなった。国枝調教師、寺島調教師の大きな背中を追って、次の1勝を目指して厩舎一丸で頑張っていく決意だ。

4月26~28日に笠松競馬場で開催される「ウマ娘プリティーダービー連掲事業」の告知

 ■笠松競馬、4月28日に「ウマ娘シンデレラグレイ賞」

 笠松競馬の看板レース・オグリキャップ記念は4月27日に開催される。翌日の28日には「ウマ娘プリティーダービー連掲事業」として、芦毛馬限定の記念レース「ウマ娘シンデレラグレイ賞」と栗毛馬限定の「ウマ娘ベルノライト賞」が行われる。

 笠松競馬場を舞台に、オグリキャップのサクセスストーリーを再現した大ヒット漫画「ウマ娘シンデレラグレイ」にちなんだコラボ企画(集英社、Cygames協力の連携事業)として、26~28日に盛りだくさんの内容で開催。ウマ娘ファンら大勢の来場者で混雑しそうだ。

 オグリキャップ像前と場内特設ステージには「ウマ娘 プリティーダービー等身大パネル」計4枚を設置。「ウマ娘POP UP STORE」(27~28日)も出店する。

 28日には昨年人気を集めた「クリアうちわ」を先着4000人に、売店での購入者にはポストカードもプレゼントされる。オグリキャップ役の声優・高柳知葉さん、イナリワン役の声優・井上遥乃さんのトークショーも開催。高柳さんはこれまで名古屋など他場でのイベントには参加していたが「オマタセシマシタ」、ようやくオグリキャップの聖地に降臨していただける。最終レース後ということで、漫画でも登場した「ウイニングライブ」的なシーンも期待したくなるが、どうなるか。コロナ禍で昨年は入場制限(上限5000人)があったが、今年は上限8000人(滞在人数)の設定となっている。

2月の笠松・ゴールドジュニアに参戦し、ニシケンボブで圧勝した吉村智洋騎手

 ■岐阜新聞電子版で、大阪杯からGⅠレース予想

 岐阜新聞電子版では、4月から土曜日にJRA重賞レースの馬柱や予想記事を掲載。GⅠレースでは大阪杯から「オグリの里」出張コラムとして「ヒデの目」を出稿します。電子版では岐阜新聞朝刊の全紙面が読めるほか、土・日曜には特別版「CLIP(クリップ)」を発行。電子版単独コースもあり、月額1980円で利用できる。

 球春到来で選抜高校野球に続いてプロ野球も開幕。2004年「落合監督元年」のドラゴンズ優勝時には名古屋支社に勤務していて、ナゴヤドームのネット裏でハイライト記事を書いていた。当時、タイトルカット「ヒデの目」の予定はボツになったが、今回、電子版競馬面で同タイトルが採用されることになった。馬券的には、高配当が見込める「無印」の馬が好きだが、空振りも多い。GⅠでの会心の一撃は福永祐一騎手がワグネリアンで初制覇した日本ダービー。5→4→16番人気の3連複を1枚ゲットした。3連単ではコパノリッキーが最低の16番人気で勝ったフェブラリーS。大きく負けていても、最後は「代打逆転サヨナラ満塁場外弾」を狙って振り回していきたい。

 今年も地方競馬の全国リーディングを突っ走っているのは兵庫の吉村智洋騎手。2月のゴールドジュニアでは笠松に参戦し、ニシケンボブで圧勝した。スカパー番組「アタック!地方競馬」に出演した吉村騎手は「ノリと勢い、運とタイミング」を大切にしてトップの座へ「ガーッ」と駆け上がってきたそうだ。JRA初勝利の田口騎手、小栗調教師も上昇気流に乗って勝ち星を増やし、近い将来、GⅠレースにチャレンジできるホースマンへと大きく羽ばたいてもらいたい。