オグリキャップの聖地としてコラボイベントもヒットして、若いファンが増えた2025年の笠松競馬場。「ウマ娘シンデレラグレイ賞」開催日には1万人以上が殺到した。渡辺竜也騎手は全国重賞を勝ちまくり、2年連続での「NAR最優秀勝率騎手賞」も確実に。長年ファンに愛された誘導馬エクスペルテとウイニーの2頭と誘導馬騎手の塚本幸典さんは引退した。アイドルホースとして人気沸騰の白毛馬アオラキは笠松転入後に3勝目を挙げてJRAに復帰したが、福島でのレース中に故障を発生し永眠した。
重賞戦線ではイイネイイネイイネが「くろゆり賞」を制覇し、レジェンドハンター記念が創設された。松本一心騎手はYJSファイナル進出。深沢杏花騎手はLJS準優勝。ラブミーチャン銅像が笠松町役場に新設された。放馬対策として懸案事業である円城寺厩舎の競馬場隣接地への移転は建設が進み、馬券販売も好調で聖地巡礼のファンも増えたこの1年。「オグリの里2025十大ニュース」として振り返った。
①ウマ娘シンデレラグレイ賞盛況、1万人超え(4月29日)
「オグリキャップ愛にあふれ、場内沸騰」 ウマ娘ファンらの熱気が場内に充満。来場者数は笠松競馬場では今世紀最高とみられる1万人超えとなった。「ウマ娘シンデレラグレイ賞」デー。オグリキャップ愛にあふれたウマ娘ファン、トレーナーたちが聖地・笠松競馬場へ殺到。コラボイベントで場内は沸騰した。注目の芦毛・白毛馬限定レースはエイシンロッソネリが「よしっ、差せ」の声援に応えて外からグイッと一伸びしゴールイン。鮮やかな差し切りVを決めた。
オグリキャップが主人公で、笠松競馬場も舞台にした人気漫画「ウマ娘シンデレラグレイ」は大ヒットし完結。テレビアニメ化、オグリキャップ生誕40周年も迎えてパワーアップ。聖地に降臨した声優さん4人のトークショーが開かれ、「カサマツ音頭バトル」で盆踊りの振り付けにも挑戦した。聖地巡礼の若者らが金華山や笠松みなと公園など探訪。名鉄笠松駅を基点とした沿線スタンプラリーも人気を集め、にぎわった。オグリキャップは「観光資源」としても大きな経済効果を地域にもたらした。
②渡辺竜也騎手、全国を駆け回り重賞7勝
「さすらいの重賞ハンター、笠松に渡辺あり」 勝利記録を更新して進化を続ける笠松の若大将・渡辺竜也騎手。25年は他場での活躍も目立ち、重賞ハンターとして全国で7勝を飾った。笠松で馬場改修があった7~8月には笹野博司厩舎のプチプラージュ(盛岡・オパールカップ)をはじめシャイニーロック(盛岡・いしがきマイラーズ、OROカップ)、デステージョ(門別・ポラリスサマースプリント)で41日間に他場4重賞制覇と大ブレーク。盛岡・芝コースでの重賞3連勝は圧巻で「笠松に渡辺あり」を全国の競馬関係者やファンに印象づけた。
その後も笠松で2歳馬のヨサリ(ネクストスター笠松)、佐賀ではサキドリトッケン(ネクストスター佐賀、カペラ賞)で連勝。馬場改修のため勝利数は伸ばせなかったが、4年連続で笠松リーディング。2年連続での最優秀勝率騎手賞のNARタイトル獲得も確実にした。師匠の笹野博司調教師は10年連続の笠松リーディングトレーナーも獲得した。
③誘導馬エクスペルテ、ウイニー&塚本幸典騎手引退(3月)
「猛暑にも耐えて、完歩のゴールイン」 長年、猛暑や悪天候にも耐えて長距離ウオークで笠松競馬を支えてきた21歳誘導馬のエクスペルテ号(愛称・ぺ君)、ウイニー号の2頭と誘導馬騎手の塚本幸典さんが3月開催を最後に引退した。まず先輩のペ君が約17年間のラストウオークを迎え「完歩」のゴールイン。最終12R後、パドック周回を終えてラチ沿いに立つと、女性ファンらから別れを惜しむ声が響き、拍手で見送った。
塚本さんはハクリュウボーイ(パクじぃ)を含め5頭の誘導馬と約37年間、笠松競馬場を支えてきた。3月24日の引退日、ウイニー号は21歳の誕生日だった。「日本一小さな誘導馬」としてデビューし約15年。スタンド前で塚本さんと相棒は立ち止まりながら、長年応援してきたファンに一礼し感謝の思いを伝えた。2頭それぞれの「ふれあい撮影会」も開かれ、大勢のお客さんの前で最後の雄姿を披露した。
④白毛馬アオラキが笠松で3勝目、JRA復帰戦で永眠(11月15日)
「笠松のマイル戦、大好きだったよ」 純白のアイドルホースとして熱い視線を浴びてきたアオラキ(牡5歳)がJRA復帰戦となった福島8R(芝)で故障を発生し、競走中止となり天国へと旅立った。
復帰前は5戦3勝を飾った笠松競馬場の1600メートル戦が大好きだった。まばゆい馬体と父ゴールドシップ譲りのロングスパートはファンを魅了。笠松のマイル戦で気分良く走った時には圧倒的パフォーマンスを披露した。24年には同じくJRA復帰を目指していた人気馬ハルオーブとの「青春(アオハル)対決」もあった。まぶしくて神秘的で、ユーモラスな動きに笑顔があふれた「アオラキワールド」。ラチ沿いでカメラやスマホを構えたファンの熱い視線を浴びた。3勝後にJRA復帰を果たしたが、永遠の別れとなった。
⑤伏兵イイネイイネイイネ、くろゆり賞制覇(8月14日)
「8番人気の地元馬が来たー」 馬場改修が終わった笠松競馬場で真夏の炎天下、くろゆり賞で壮絶なバトルを繰り広げた。残り100メートルを切って4、5頭が横に並ぶ激戦を、地元馬で8番人気イイネイイネイイネ(田口輝彦厩舎)がスルスルと馬群を割って制覇した。笠松の年間ベストレースといえる名勝負となった。
騎乗した筒井勇介騎手が左手を上げて歓喜のガッツポーズ。「よく走ってくれた」とポーンと一発、愛馬に感謝の思いを伝えた。「人馬ともに笠松勢」での地方全国交流重賞Ⅴは6年ぶり。ホーム笠松での伏兵馬による価値ある1勝で、詰め掛けた大勢の地元ファンを驚かせた。
⑥松本一人騎手YJS総合7位、明星晴大騎手100勝超え
「表彰台は逃したが、渡辺騎手超え」 松本一心騎手(20)=加藤幸保厩舎=が2025ヤングジョッキーズシリーズ(YJS)トライアルラウンドの佐賀、名古屋で勝利。地方騎手のトップ通過で東海勢唯一のファイナリスト。園田で3着、6着。中京芝コースでは上がり3F最速で猛追したが差し届かず5着。2戦目7着で表彰台は逃したが、総合7位と健闘した。
笠松勢では渡辺竜也騎手の総合8位(2017年)を上回る過去最高の成績。園田での3着は「スタートでうまく出していれば勝てたかも」と悔しがったが、来年以降の飛躍へ大きなステップとなった。2年目の明星晴大騎手(18)=後藤佑耶厩舎=は通算100勝超えで減量騎手を卒業。松本一心騎手と共に急成長。厩舎サイドの信頼度アップで、2026年は2人とも勝ち星を伸ばしそうだ。
⑦深沢杏花騎手、LJS初勝利で準優勝(11月25日)
「笑顔はじけ、晴れの表彰台」 深沢杏花騎手(24)=田口輝彦厩舎=は「行け、行けー」の大声援に応えてレディスジョッキーズシリーズ(LJS)ザ・ファイナルで準優勝を飾った。笠松ラウンド4位で迎えた名古屋ラウンド第1戦は3番人気でゴール直前、鮮やかに差し切り。これまでジョッキー戦ではくじ運に恵まれず苦戦していたが、ついに悲願の初勝利を飾った。
「素直にうれしいです。最後まで馬が伸びてくれて勝てました」と笑顔がはじけた。名古屋・小笠原羚騎手が2勝目を挙げて総合V。深沢騎手は第2戦も7番人気馬で4着に食い込み、3位の佐々木世麗騎手(兵庫)と晴れの表彰台に上がった。
⑧ラブミーチャン銅像、笠松町役場で除幕(11月5日)
「栗毛のシンデレラ永遠に」 笠松町役場で、ラブミーチャン銅像の除幕式が盛大に行われ、2024年8月31日に天国へ旅立った名牝の偉業を関係者やファンらがたたえた。オーナーのDr.コパこと小林祥晃さんが「ラブミーチャンの功績を永遠に記憶し、笠松町の更なる発展を祈念するため」と銅像を寄贈した。
JRAでは未出走で挫折を味わったが、笠松の柳江仁厩舎で生まれ変わって全日本2歳優駿(JpnⅠ)を制覇。ダートグレード競走を5勝。NARグランプリの年度代表馬に2度輝いた。全国の重賞戦線で「快速娘」として経営難だった笠松の名をアピールし、存続を力強くけん引した。その雄姿は銅像となって、笠松競馬を救ったシンデレラストーリーとして後世に語り継がれていく。
⑨レジェンドハンター記念新設、木之前葵騎手制覇(11月14日)
「GⅠ制覇あと半馬身、伝説の名馬たたえ」 1999年の朝日杯3歳Sで2着、GⅠ制覇まであと半馬身まで迫った伝説の名馬レジェンドハンター(安藤勝己騎手騎乗)をたたえる記念レース。ウインター争覇からレジェンドハンター記念に改称し、新設された。10歳馬ゴールドギア(榎屋充厩舎)が木之前葵騎手の力強い手綱さばきに応えて制覇した。
看板レースのオグリキャップ記念は、張田昂騎手騎乗の2番人気ムエックス(船橋)が好位から鮮やかに差し切りVを飾った。笠松グランプリは、逃げた加藤聡一騎手騎乗の6番人気ストリーム(北海道)が、2着同着となったエコロクラージュ(兵庫)とミスズグランドオー(高知)にクビ差をつけて優勝した。
⑩放馬対策「円城寺厩舎から競馬場東西に集約」急ピッチ、馬券販売は好調
「競馬場の東西にピカピカの厩舎」 放馬対策として懸案事業である円城寺厩舎の競馬場隣接地への集約が急ピッチで進んでいる。競馬場西側の第2駐車場に「西厩舎」、薬師寺厩舎は南側に拡張し「東厩舎」として新設。東西の新厩舎で計約580頭分の馬房が配備される。厩舎集約は26年度末完成を目指していたが、地盤改良工事を追加するため27年夏にずれ込む。
最大規模(460台分)だった無料の第2駐車場移転に伴い、競馬場東方面に第3~6駐車場を新設した。場外馬券売り場「シアター恵那」(恵那市)は、市から県と組合に譲渡の要望があり、廃止も視野に今後協議される。笠松競馬の馬券販売は好調で、1日平均の総売得金(1~11月)は過去最高の約5億1200万円。入場料無料化もあって入場者は1日平均1080人で34.8%増となった。
【次点①】短期騎乗の柿本量平騎手が10年ぶり勝利(4月4日)
「勝つって、こういう感覚だったんだ」 笠松競馬場で期間限定騎乗の柿本量平騎手(船橋)が10年ぶり、忘れていた勝利の味をかみしめた。単勝1番人気とファンの支持を集め、自厩舎の先行馬エイシンドラーゴに騎乗。勝利を願うファンの期待も場内に充満。満開の桜で春らんまん。激しい先陣争いを制して1周目ゴール前を通過。
スタンド前では「柿本、来たー。いけるぞ」と重賞レース並みの大声援で沸騰した。「やったー、うわーっ」とたたえる熱烈なファンたち。笠松では最後にかわされて2着も多かっただけに、久々の勝利の味は格別だった。ゆっくりと1~2コーナーをウイニングラン。2着の藤原騎手が駆け寄り、祝福のグータッチを交わした。笠松で2勝目も挙げたが、地元・船橋での騎乗は極端に少ない。
【次点②】「遅咲きルーキー」井口裕貴騎手と荒木道哉調教師が初勝利(9月10、11日)
「悲願の1着ゴール」 笠松競馬場で今夏デビューを果たした騎手と、初出走から丸1年を迎えた調教師の「遅咲きルーキー」2人が待望の初勝利を飾った。30歳の井口裕貴騎手が38戦目で初Vをゲット。55歳の荒木道哉調教師は初出走から61戦目で悲願の初Ⅴをつかんだ。
ジョッキー仲間やファンらが「歓喜の1勝」を祝福した。井口騎手は「やっと勝てた。必死でした」と、荒木調教師は「また差されて負けたかと。最後、残っていた」と先頭でのゴールインを喜んだ。
【番外】
入場料を無料化、第2駐車場は移転し東門再開
田口輝彦調教師、地方競馬通算1000勝を達成
笠松でも100勝の宮下瞳騎手が引退、調教師に転身
長江慶悟騎手、岡部誠騎手(愛知)が調整ルーム関係の不祥事で引退
【達成された節目の記録】(地方競馬通算)
☆向山牧騎手3800勝
☆筒井勇介騎手1400勝
☆藤原幹生騎手1300勝
☆渡辺竜也騎手1100勝
☆明星晴大騎手100勝
☆伊藤強一調教師2300勝
☆藤田正治調教師1700勝
☆笹野博司調教師1600勝
☆加藤幸保調教師1400勝
☆森山英雄調教師1100勝
☆田口輝彦調教師1000勝
☆後藤佑耶調教師700勝
☆水野善太調教師500勝
☆ファンの声を募集
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(筆者・ハヤヒデ)電子メール ogurinosato38hayahide@gmail.com までお願いします。
☆最新刊「オグリの里4挑戦編」も好評発売中

「1聖地編」「2新風編」「3熱狂編」に続く第4弾「挑戦編」では、笠松の人馬の全国、中央、海外への挑戦を追った。巻頭で「シンデレラグレイ賞でウマ娘ファン感激」、続いて「地方馬の中央初Vは、笠松の馬だった」を特集。
林秀行(ハヤヒデ)著、A5判カラー、196ページ、1500円(税込み)。岐阜新聞社発行。ふらっと笠松(名鉄笠松駅)、ホース・ファクトリー(ネットショップ)、酒の浪漫亭(同)、岐阜市内・近郊の書店、岐阜新聞社出版室などで発売。岐阜県笠松町のふるさと納税・返礼品にも。









