笠松競馬場でのトークショーに3年連続出場。大みそかには欠かせない顔になった田口貫太騎手

 笠松競馬場の「大みそかの顔」といえばこの人。「紅白歌合戦」じゃなくて、恒例のトークショーに3年連続で出場したJRAの田口貫太騎手(栗東・大橋勇樹厩舎)。笠松の厩舎もある岐阜県岐南町出身で「里帰りライブ」にもなった。髪の毛を伸ばしてぐっと大人っぽく変身。2025、26年の漢字1字をしたためた色紙には「情」けない年から「変」化の年へと決意を新たにした。

 会場では「貫ちゃん」などと女性ファンからも声援が飛んでいたが、両親が笠松競馬の元騎手という「田口ファミリー」の一員として成長した姿を見せており「貫太騎手」と呼ばせてもらう。

2023年2月、JRA騎手試験に合格した田口貫太騎手(中央)と喜びを分かち合う元笠松競馬騎手の父・輝彦調教師(左)、母・広美さん

 04年のJRA・フェブラリーS、父・田口輝彦調教師の管理馬ミツアキタービンは最後の直線で一時先頭に立って4着に粘り込んだ。厩舎スタッフはもちろん、応援したファンにとってもハートを射抜かれた感動的なレースとなった。あのときの夢と興奮をもう一度。田口調教師は昨年末、地方競馬通算1000勝を達成。夏にはイイネイイネイイネで全国重賞「くろゆり賞」を制覇するなど大活躍の1年となった。

 長男である貫太騎手はJRA重賞初Ⅴとともにその延長線上にある「GⅠジョッキーに」という野望もめらめらと燃えやしている。飛躍を誓う田口ファミリーの愛馬たちとの新たな挑戦に注目した。

 ■勝ち星を伸ばせなかったが、頭髪は伸びていた

 トークショーはオープニングから大盛況。貫太騎手は「ミュージックステーション」のノリで、定番となった2階からの「階段下り」で登場。癒やし系の貫太スマイルに会場は「待ってました」と拍手の渦。25年は勝ち星を伸ばせなかったが、頭髪は予想以上に伸びていた。レースや調教ではヘルメット姿でもあり、髪が長くなった貫太騎手の姿を想像できなかったのか、特設ステージ前に陣取ったファンを一瞬ドキリとさせた。

丸刈りから髪を伸ばして、ふさふさ感も出てきた貫太騎手

 笠松競馬場の特設ステージといえば漫画、アニメの「ウマ娘シンデレラグレイ」でもオグリキャップがウイニングライブを行った場所。レーシングアナウンサーの長谷川満さんが毎度おなじみの軽妙トークと鋭い突っ込み。デビュー3年で見習騎手を卒業し、一人前のジョッキーへと成長した22歳の「ぶっちゃけトーク」を引き出した。「人気だねえ」の声に貫太騎手は「いつまで続くか分からないですけど」と語り、ファンを笑わせた。

 ■「丸刈りの方が良かった」というファンも多いが

 第1ステージ。まずは貫太騎手といえば、避けては通れないガチガチの「鉄板ネタ」から始まった。長谷川アナも「今までと雰囲気が違うぞ。きょうは髪形がフワッとなって大人びた感じ」と注目すると、貫太騎手はファンの写真撮影「ウエルカム」と歓迎した。

 「100勝するまでは丸刈りで」という師匠の大橋先生との約束もあった髪形問題。本人は1年前「まあ、当たり前に伸ばそうと思っています。23とか24歳で丸刈りだったら、ちょっとおかしい」といつまでも子ども扱いされたくない思いを述べていた。昨年7月、京都競馬場のトークショーでは「ヘアスタイルとか分からないですけど、とにかく伸ばしたいですね。色は赤とか」と語り、ファンをちょっと驚かせたこともあった。

昨年8月にJRA100勝を達成した貫太騎手。セレモニーでは髪の毛が少し伸びていた

 昨年8月23日には中京で「JRA100勝」を達成し条件をクリア。中央の騎手は、地方競馬でのJRA交流戦勝利を含めて101勝で「見習騎手」を卒業できるが、貫太騎手は昨年8月の時点では少し伸ばし始めた程度だった。先生との約束はどうやら「見習卒業」ではなく、JRA100勝を達成だったようで「かわいい」とファンの支持を集めていた丸刈りは卒業した。

 自ら「ホーム」と語る笠松競馬場では「昭和顔」とも言われたノスタルジックな丸刈りから、ふさふさ感も十分。「伸ばしちゃいました。結構伸びてきました」と満足そう。すっきりとしたツーブロックで、ボリューム感もあって爽やかな印象の好青年へと変身。最前列には応援している女性ファンらも駆け付けた。

 会場の反応はさまざまで、長谷川アナが「貫ちゃんは丸刈りの方が良かったという人」という声には、多くのファンが反応していて「デビュー時のままでいてほしかった」が多数派ではあった。これを受けて長谷川アナは「いずれ丸刈り戻り説もあるのでは」と復活も期待している様子。貫太騎手は「ちょっと分からないですけど」と否定はしなかった。

 確かに笠松競馬でも成績不振に陥ったり、心機一転で出直したい時には、かつてのリーディング佐藤友則騎手や筒井勇介騎手らも「丸刈り」にしたこともあった。貫太騎手は調教時間に遅刻し大橋先生に怒られてレースにも騎乗できなかったり、斜行で騎乗停止処分を受けたこともあった。流れが悪くなって「一から出直そうと」再び丸刈りになることもあるかもしれないが、不祥事は困る。ステージ上でまずは似合っているヘアスタイル。そろそろ彼女も欲しい20代前半の青年の気持ちを尊重して「保護者会」の皆さんと共に温かいまなざしで見守っていきたい。

おしゃれな服装で、裏地まで見せて盛り上げてくれた

 ■JBC制覇「一つ大きなところを勝って良かった」

 服もおしゃれになった。まずは同年代の若手ジョッキーたちの影響も受けて、この日のファッションはグレードアップ。中央競馬は賞金や手当も高く、リッチな一面も披露してくれた。「この服、上下あるんですけど、なかなかこの柄で着ることはなくて。でも笠松やしホームだから(上だけでも)いいかな」と。高級感あるオーダーメードで裏地まで見せて、モデル気分になってファンサービスで盛り上げてくれた。

 「いいことも悪いこともあったなあ」という2025年。「門別のJBC2歳優駿(JpnⅢ)を大橋先生と一緒に所属馬のタマモフリージアで勝てた」と地方では2度目のダートグレード制覇を果たした。「(クビ差の勝利で)あの時はうれしかったですね。一つ大きなところを勝って良かった。先生らにもいろいろと迷惑をかけてきたんで。勝ったことを知って『良かった、良かった』と。担当の人も泣いて喜んでくれて、僕もホッとしました」と師弟コンビで頂点を極めた。

JBC2歳優駿をタマモフリージアで制覇した貫太騎手(NAR提供)」

 ラブミーチャンも勝ったことがある12月の全日本2歳優駿(JpnⅠ、川崎)ではタマモフリージアで今度は惜敗。「情けないなあという感じですね。競馬の内容と結果、あの着差(クビ差)なんで、もうちょっと何とかできたんじゃないか」と悔しがった。2戦ともクビ差の決着で、明暗が分かれた結果となった。

 一方で「デビュー3年目までに取りたいと目標にしていた中央の重賞勝ちをまだ達成していないし、勝ち星も前年を上回れなかったので、頑張りたい。25年は36勝(24年40勝)と前年を下回りました。このままではその辺りの騎手で終わっちゃうんで、もっと高めていきたい」と力を込めた。男性ジョッキーとしては、通算100勝までの「1~3キロ減」が全て取れてからがこの世界での本当の勝負になる。

 ■JRA通算111勝、まだアンカツさんの10分の1

 一緒に乗っている若手でうまいと思うジョッキーは「(1年後輩で同じ関西の)高杉吏麒騎手や吉村誠之助騎手。しっかり乗っていますね。負けないように頑張ります」。2人とも既に通算100勝を突破しており、貫太騎手にとってライバル意識も強い存在。中京での自身の100勝達成セレモニーには2人の姿もあり「後輩ジョッキーがすごい勢いで追い上げてきているので、それに負けないように頑張りたい」と思いを述べていた。

 これまでJRA通算111勝。幼少の頃から「師匠」のように慕ってきたアンカツさんがJRAでは1111勝だったから、貫太騎手はまだ10分の1だ。新年、JRAでは24戦して未勝利。3着以内もなく苦戦しているが、デビュー4年目を飛躍の年にしたい。

 ■「中央でも重賞Ⅴ、死に物狂いで頑張りたい」

 先輩では「岩田望来さんとはいつも一緒にトレーニングしたりしてお世話になりっぱなしで、全日本2歳優駿でもちょっと負けたんで、そこをやっぱり超えたいと。でもレースの幅が増えたんで、あとはもう勝つだけ。結果を出して、もっと上のレベルで戦えるように」と意欲を示した。

 それでもファン目線では「減量も取れて大人のジョッキーになったが、やはり負担重量が同条件になって伸び悩んでいる」といった印象もある。GⅠ騎乗でのⅤ争いも期待されており「中央でも重賞を勝って、(年間の)勝ち星も増やしていきたい。4年目は勝負の年だと思うんで死に物狂いで頑張りたい」と闘志をたぎらせていた。

じゃんけん大会でファンにプレゼントされた2025年の漢字「情」のサイン入り色紙

 ■2025年の漢字は「情」で「情けない1年でした」

 貫太騎手にとっての2025年を漢字で表すと色紙に「情」の1文字。「24年はいろいろと成長できた年でした」と「成」だったが、25年は苦労も多かった。「字が小さい」と突っ込まれると「小さいのにも意味があって、情けない1年でしたので情けなく書いてみました」という思いを込めた。「あとちょっとで勝てた2着のレースは、自分が何とかしていればというのもあってそれが情けなくて」と振り返った。

 色紙プレゼントの争奪戦は来場者によるじゃんけん大会で熱く盛り上がり。「阪神、京都でよく見に行って応援しています」という男性がゲットした。

 ■「地方競馬もよく見て勉強しています」

 JRAの騎手ではあるが「もちろん地方競馬もよく見ています。乗りに行くことが多いんで。その競馬場の特徴をうまく捉えられるように日々勉強しています」とも。

 24年夏にはフランスでも武者修行を積んで最終日に2勝を挙げた。海外遠征については「25年も行きたかったですが。年始の成績とか流れが良くなくて大橋先生に『行くな』と言われたんで。また海外へという気持ちはあります」とチャンスがあれば再挑戦もありそうだ。

昨年2月のゴールドジュニアでは父・田口輝彦厩舎のハビビに騎乗。父子タッグでの重賞制覇を狙ったが5着

 ■パパの管理馬で重賞ゴールドジュニア挑戦、5着

 笠松遠征では25年も活躍し、JRA交流戦などで4勝を挙げた。2月のゴールドジュニアでは田口輝彦厩舎のハビビに騎乗。父子タッグでの重賞制覇を狙ったが5着だった。当日はJRA交流戦があり、エキストラ騎乗で重賞挑戦が実現した。笠松の番組的にもJRA交流戦と重賞が同じ日にあれば、人気のJRA騎手による笠松馬での重賞Ⅴも実現するかも。坂井瑠星騎手や今村聖奈騎手らにも地方重賞で出番があれば盛り上がる。貫太騎手、撮影タイムでポーズを決めると「かっこいいよ」と女性ファンの声も飛び、スタージョッキーとしても人気絶大だ。

 ■東海ゴールドC、元自厩舎で騎乗経験あるニホンピロタイズ注目

 第2ステージは年末の大一番・東海ゴールドカップ(1着賞金1000万円)の予想会。「競馬エース」チーフTMの竹中嘉康さんも加わって本命、穴馬をかき分けて狙い目を絞り込んだ。

 ダートの2500メートルは力勝負になりそうで、貫太騎手は「動かしてなんぼだと思うんで、追えるジョッキーを選んだら持ってきてくれそう」と推理。「芝はリズムと折り合いでビュッと来る感じで、ダートはゴリゴリ乗った方がいい。タマモフリージアは頑張ってくれていて、ゴリゴリやった方がいい馬」とジョッキー目線で解説した。

有馬記念と同じ2500メートルで、年末を彩った東海ゴールドカップの1周目ゴール前。約5400人のファンでにぎわった

 「乗るとしたらどの馬」と問われた貫太騎手は「(名古屋の)ニホンピロタイズは大橋厩舎だった馬で、僕も芝の準オープンで何度か乗ったことがある。ダートでは乗ってないので、どんな走りをするのか。全盛期の時がすごかったし、ダートでも活躍しているんで応援している一頭」と一推し馬に指名。竹中TMの予想も◎(2頭)のうちの1頭だった。

 今後、楽しみにしている馬はやはり「(明け3歳の)タマモフリージア。スイスイ行ってくれて乗りやすいんで」。放牧中で次走未定だが、末脚堅実でさらに成長が期待でき、大物感もある。

 騎乗馬の人気について貫太騎手は「乗りやすさでは、人気していた方が競馬のイメージがしやすく、力があるんで面白いです。人気がない馬は勝ちにいかずに乗れるんで、一発狙った乗り方ができます。人気はファンがつけるもので、僕らはあんまり関係ないですが」。パドック周回中にはボードでも単勝オッズが分かり「こんなに人気しているんだということも。『よしっ』とはならないですが、よく買ってくださっているんだなあ」と思うそうだ。

 騎乗馬の調子については「パドックでまたがって活気がある馬は、返し馬に行ってもいいです。返し馬の1歩、2歩目でどれだけ自分に反応してくれるかで状態の良さが分かります」とのことで、注視すれば馬券作戦にも生かせそうだ。

 東海ゴールドカップの出走馬で、貫太騎手の父が管理する田口厩舎のヒストリーメイカーは11歳。前走勝ったが、高齢でもあり陣営は「腰に疲れがあってじっくり調整して改善した」とベテランの奮起を期待。長谷川アナが◎の1頭に推した。

 田口厩舎はイイネイイネイイネとの2頭出し。「日頃はどんなお父さんですか」と問われた貫太騎手。「いいお父さんですけどね。結構何でもズバズバ言うタイプで、そこは僕も似ちゃったのかなと。お母さんは結構ヌケテいるところがありますね。そしてその間で生まれて、何かぽわぽわしているのが僕ですね。『天然』とは言われないですが『変わっているな』とはいろいろな人に言われます。自分で分かってたらやばいですけど」と本音トークに、会場は笑いに包まれた。

2026年の漢字に選んだ「変」の1文字。サイン入り色紙がファンにプレゼントされた

 ■26年の漢字には「変」を掲げ「勝負の年」に

 さらに2026年の漢字として1文字を披露。「変化の『変』という字にしました」。25年は「挑戦」を掲げたが、思うようにいかず悔しいレースも多かった。「毎年30~40勝前後なんで、そこら辺のジョッキーからもうちょっと上のレベルで戦えるかどうか。大橋先生も(定年まで)残り6年ぐらいなので、ずっと先生のすねをかじっているわけにもいかず、取り組み方を変えて何とか少しでも自立できるよう頑張りたい気持ちを込めました」

 やはり4年目を「変化の、勝負の年」と位置付けトレーニング強化とともに、いい馬に乗せてもらうためには「営業とかもいろいろ考えていきたいです」と飛躍を誓っていた。

 「変」のサイン入り色紙もじゃんけんゲームでプレゼント。勝ち抜いた男性は「岐阜の者ですが、応援しています」と頑張りを期待。竹中TMも「重賞で勝てそうな馬を注目していますし『岐阜の星』として皆さん応援しています。頑張ってください」とエールを送った。

特設ステージでの撮影タイム。ファンサービスでポーズを決める貫太騎手

 そんな貫太騎手。ファンサービスのポーズを決めた後、トークショーを終えて階段を上がっていく途中で「貫ちゃん、ちょっと待って」と長谷川アナ。来場者に「3年連続で貫ちゃんを大みそかに呼んでいますが、26年も貫太騎手に来てもらいたい方、拍手をお願いします」と呼び掛け。多くのファンが貫太騎手の成長した姿も願って大きな拍手を送った。これには貫太騎手も「もういいでしょう。皆さん良いお年を」と階段を駆け上がって立ち去った。

 これでトークショーへの4年連続出場はほぼ決まりか。1年も前にステージイベントの事実上のオファーを受けるとは。貫太騎手はやはり「岐阜県の宝」(前岐阜県知事の言葉)といえる存在だ。

 1、2年目の勢いからするとやや物足りない成績だった3年目。今年こそまずは重賞を勝って、GⅠ勝利も期待できる有力馬に騎乗し、応援するファンをアッと驚かせる活躍を見せたい。成績が落ち込むようだと大みそかには丸刈りに戻っていて、新しい年を迎えることになるかも。トークショーのネタ的にはその方がおいしいが、「何勝したい」といった目標の数字は公言しなかったので、けがなくリズム良く1年間を乗り切っていただきたい。


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 「1聖地編」「2新風編」「3熱狂編」に続く第4弾「挑戦編」では、笠松の人馬の全国、中央、海外への挑戦を追った。巻頭で「シンデレラグレイ賞でウマ娘ファン感激」、続いて「地方馬の中央初Vは、笠松の馬だった」を特集。

 林秀行(ハヤヒデ)著、A5判カラー、196ページ、1500円(税込み)。岐阜新聞社発行。ふらっと笠松(名鉄笠松駅)、ホース・ファクトリー(ネットショップ)、酒の浪漫亭(同)、岐阜市内・近郊の書店、岐阜新聞社出版室などで発売。岐阜県笠松町のふるさと納税・返礼品にも。