笠松競馬で3カ月ぶりに復帰したオマタセシマシタ。渡辺竜也騎手が騎乗し、ファンの前で元気な姿を見せた

 お待たせしました! 笠松競馬お昼の3歳戦で、地方競馬界のアイドルホースが再起を懸けた一戦に登場。2勝目はならなかったが「オマタセちゃん効果」で熱気ムンムン。ゴール後には無事完走をたたえるファンたちの温かい拍手に包まれた。

 全国の競馬ファンの注目を集めたのは、脚元の不安で放牧に出ていたオマタセシマシタ(牝3歳、笹野博司厩舎)。5月24日の笠松3Rで3カ月ぶりに復帰し、元気な姿を見せた。1月に初勝利へと導いた渡辺竜也騎手が騎乗。中団やや後ろからの競馬になり、最後の直線でも伸び切れず9着に終わったが、まずは脚慣らしのレースとなった。

ゴールを目指すオマタセシマシタ(左)。後方では名鉄電車も走っており、車内からはレースをチラリと観戦できる

■JRAからの移籍組8頭で、厳しい戦い

 オマタセシマシタの馬主は人気お笑いトリオ・ジャングルポケットの斉藤慎二さん。笠松競馬場に家族とともに初めて来場し、愛馬の走りっぷりを優しく見守った。

 門別、金沢を経て今年1月、笠松移籍初戦を力強く勝利で飾ったが、2戦目の「オグリの里・聖地編出版記念」では7着。笹野博司調教師は「放牧先でもしっかりと乗り込んできたし、あとはここでの力関係だけ」と、攻め馬でも渡辺騎手を背に調整を続け、笠松での3戦目に挑んだ。

 出走10頭のうち今春JRAから移籍してきた馬が8頭も含まれ、厳しい戦いとなった。8枠の2頭が上位人気で、競馬専門紙の予想も「ゾロ目強力」。これに対してオマタセシマシタは「無印」の評価。それでも単勝馬券を1枚買って応援するファンは場内でも多く、3番人気に推された。

返し馬からラチ沿いのファンが熱い視線を送った

■観戦動画「愛馬復帰戦!」で祈る思い

 斉藤オーナーは自らの観戦動画で「愛馬復帰戦!」を配信(レース後)。「笠松競馬場にやってきました。いいですね」と旅打ちモードで笠松デビューを果たした。

 正門をくぐると「オグリキャップがデビューした地です。笠松競馬を盛り上げたシンボルが入り口でお出迎え。絵馬もすごいですね」とパワースポットでもあるオグリ像の前で、オマタセシマシタの勝利を祈願。ゴール前では最上階から場内を眺めると「内馬場パドックにはびっくりしました。若い人も多いですね」とファンに手を振ってあいさつ。中央経験組の強敵ぞろいとなったが「パドックでは落ち着いた様子だった。無事に走ってくれれば」と祈る思いでライブ観戦となった。

笠松競馬場に来場し、レースを盛り上げた斉藤慎二オーナー(笠松競馬提供)

スタンド一帯で応援したファンたち。最上階で見守った斉藤オーナーに温かい拍手を送った

■無事完走、健闘をたたえる拍手湧く

 スタンドはにぎわい、ラチ沿いもスマホやカメラを構えたファンでびっしり埋まった。ゲートオープンで好ダッシュを決めたオマタセシマシタ。スタンド前では内から3番手につけていたが、8枠の人気2頭が他馬を大きく引き離していく展開。後方へ下がったオマタセシマシタに「うわー、いっぱいか。頑張れ、頑張れー」と声援を送る斉藤オーナー。最後の直線でも前との差は縮まらず、ブービーでゴールに入ると悔しそうだったが、馬券を買って応援してくれたファンたちに向かって「ごめんなさい」とおわび。期待には応えられなかったが、けがなどなく無事完走。健闘をたたえる大きな拍手が湧き起こった。人気馬のオーナーとスタンドのファンが心を通わせるという、笠松競馬場では珍しいワンシーンとなった。     
 
 観戦動画で斉藤オーナーは「スタートをうまく切れた。厳しい戦いになりましたが、よく頑張ってくれたし、元気な姿を見て、厩舎でも会うことができました。現地で観戦できたことが一番で、無事に走り切ってくれただけで十分。最高でした」と熱いメーセージ。のどかな雰囲気が気に入った様子で「皆さん、笠松競馬場に遊びに来てください」とも呼び掛けた。
 

斉藤オーナー(左)とレース内容を振り返る渡辺竜也騎手(中央)、笹野博司調教師

■「砂をかぶって嫌がった」「3コーナーで外へ逃げた」と課題

 レース後、斉藤オーナーは装鞍所エリアの外で笹野調教師、渡辺騎手と対面。オマタセシマシタの走りっぷりを振り返ってもらった。

 笹野調教師は「向正面で砂をかぶってしまい、嫌がって後ろに下がってしまった」「勝負どころの3コーナーでは外へ張って逃げる感じで、そこでスピードに乗れず、加速がつかなかった」と二つの課題を挙げた。「8枠の2頭が強く、競り合ってバタバタにならないよう、2列目からの競馬をしたかったが、前にいた馬が下がってきて位置取りが悪くなった」と残念がった。

 斉藤オーナーは渡辺騎手に「初勝利を挙げていただきました」と感謝。スタートは速かったが、渡辺騎手も「キックバック(前の馬が蹴り上げた砂が飛ぶこと)を嫌がりました。3コーナーでの課題も克服できてなくて」と敗因を分析した。

砂をかぶりながら、ゴールインするオマタセシマシタ

■渡辺騎手「好スタート、逃げる競馬もありかな」

 次走以降について笹野調教師は「パドックでの雰囲気は良かったんで、もう少し付いていけて2、3番手が取れれば。砂をかぶらない外枠の方が競馬をしやすいかも。レース後の脚元は大丈夫です」と。渡辺騎手は「きょうぐらいスタートで出たら前へ行くことが可能で、逃げる競馬もありかな。課題を克服できれば、もう少しいい競馬ができます」と前を向き、3歳牝馬の成長力に期待した。順調なら中1週で月2回程度走り、笠松で2勝目を目指すことになる。

 この後、斉藤オーナーは笹野厩舎に向かい、レースを終えたオマタセシマシタと対面。放牧明けで脚元の不安もあったが、無事完走を果たしてくれた愛馬の頑張りをねぎらった。

ファンに囲まれ、サインに応じる斉藤オーナー

■「サイン&撮影会」サービス精神旺盛で笠松競馬を盛り上げ

 場内ではファンとの交流にも力を注いでもらえた。スタンド前に斉藤オーナーが現れると、さすがは人気者。応援するファンたちに囲まれて、ツイッターでの約束通り「サイン&撮影会」が始まったが、出走馬の入場が近づいて「また後で」ということになった。

 オマタセシマシタのレースが終わり、1時間近く経過していたが、東門近くでは大勢のファンたちが、厩舎訪問を終えた斉藤オーナーを待っており、再び「サイン&撮影会」となった。色紙や専門紙のほか、オマタセシマシタの単勝馬券にサインしてもらうファンも多く、長い列ができた。 

レース後もファンとの記念撮影で盛り上がった

  かつて「ファンのオアシス」としてにぎわった愛馬会売店前。70~80人ほどが集まり、斉藤オーナーから丁寧なサインをもらうと「やったあ」とファンは大喜び。スマホでの記念撮影にも応じて、笑顔で愛馬への応援に感謝。「優しく見守るファンの存在はうれしいですよ」とサービス精神旺盛で、笠松競馬を盛り上げていただけた。ツイッター上では「斉藤オーナーと写真を撮って、サインもいただきました」と喜びの声が相次いだ。

 場内でのもう一つの楽しみはご当地グルメで、斉藤オーナーはチョコバナナや串ものを賞味。昼食には名物・どて飯も食べて「すごくうまいなあ」と笠松の昭和の味を堪能していた。

 この日、重賞レースはなかったが、オマタセちゃん効果は抜群。ランチタイムの3Rがメインレースのようになった。入場者は1000人超えで通常より5割増し。馬券販売は約5億円と好調な一日になった。

 笠松勢では、3Rを勝ったプロスパーバイオに騎乗した松本剛志騎手が、笠松移籍後通算200勝を達成。6Rでも勝利を挙げたが、長男の一心騎手は2着にハナ差届かず3着。「親子ワンツー」の達成は持ち越しとなった。

オグリキャップの4走目、マーチトウショウとの一騎打ちになった1987年7月26日の笠松1R出走表など(競馬エース)

■オグリキャップ笠松4戦目「芦毛対決」まさかの連敗(1987年7月26日)

 笠松時代のオグリキャップのレースを振り返るコーナー。デビュー4戦目は宿敵マーチトウショウとの2度目の「芦毛対決」となった。キャップは連勝中で断トツの1番人気だったが、落とし穴が待ち受けていた。

 競馬エースはキャップにグリグリの◎印6個。前走を逃げ切ったフェートチャールスが〇印。同じレースで出遅れて3着に敗れたマーチトウショウは▲印に甘んじていた。
 
 キャップはデビュー戦でマーチトウショウに惜敗しており、リベンジのチャンスだった。「エンジンがかかってからのスピードはケタ違い」との評価。2戦目で初勝利に導いた自厩舎の高橋一成騎手が騎乗した。

 800メートル戦。ともに出遅れたが最後方から追撃し、一気に馬群を割ったマーチトウショウが原隆男騎手の騎乗で1着。最後は芦毛2頭のマッチレースになったが、猛然と追い込んだキャップはまたしてもクビ差及ばず。2度目の芦毛対決もマーチトウショウに軍配が上がった。キャップの負担重量は55キロで1キロ増量。40日以上もレース間隔が空き、14キロ増の馬体重も響いたのか。距離不足にも泣いた。3着は3馬身差でフェートジェットで、フェートチャールスは7着に終わった。

 枠連は①⑦で450円。芦毛2頭のワンツーではまずまずの配当となった。キャップは中央入り後、同じ馬に2度も先着を許したのはタマモクロス、スーパークリーク、ヤエノムテキ、オサイチジョージと4頭いたが、さすがに3敗した相手はいなかった。もう負けられないキャップ。17日後、再び2頭による宿命の対決は火花を散らした。