滲出型加齢黄斑変性症の眼底写真。色の濃い所が病変部分

眼科医 金田正博氏

 はじめまして。今回から本欄の執筆を担当することになりました。眼科の病気をできるだけ分かりやすく説明していきたいと思っています。

 今回は加齢黄斑変性症についてお話しします。カメラのフィルムに相当する網膜の中心部、そこを黄斑と呼びます。この黄斑部にある細胞が加齢とともに障害されてくるのが加齢黄斑変性症です。私が医師になった頃は少なかったのですが、生活の欧米化と高齢化に伴って最近かなり増加しており、国内の失明原因で第4位になっています。ちなみに米国では第1位です。

 萎縮型と滲出(しんしゅつ)型の二つのタイプに分けられます。萎縮型は黄斑部の組織が徐々に萎縮し、ゆっくりと視力が落ちていくタイプで、残念ながら今のところ治療法はありません。滲出型は異常血管(新生血管)が網膜の下から網膜内に入り込み、出血や、網膜下あるいは網膜内に水がたまることで(浮腫と呼びます)、比較的急速に視力が落ちるタイプです。こちらも以前は治療法がありませんでしたが、近年は治療法が開発されてきました。

 症状としては変視症といってゆがんで見える現象が起き、中心部分が見えなくなる中心暗点が生じ視力が低下します。ただこれらの症状は黄斑部が障害される他の疾患でも出てきますので、必ずしも加齢黄斑変性症に特有なものではありません。

 滲出型の治療は、第一選択としてVEGF阻害剤を目の中に注射する方法が採られます。新生血管の発生に血管内皮増殖因子(VEGF)が関係していることが明らかになり、VEGFを阻害することによって新生血管を退縮させようという治療法です。基本的に4週ごとに3回連続して眼内にお薬を注入します。目に注射といっても強い痛みはありませんから心配はいりません。その後は経過観察をしながら必要に応じて注射を繰り返し行います。

 もう一つの方法は光線力学的療法(PDT)です。これは新生血管壁に取り込まれる光感受性物質を点滴した後、特殊な波長の弱い出力のレーザーを病変部に照射する方法です。光感受性物質とレーザーが光化学反応を起こして新生血管を閉塞(へいそく)させるものです。ただ、こちらは眼科PDTの認定資格を持った医師しか行えません。

 喫煙は加齢黄斑変性症になる危険性が高まるので禁煙することが大切です。また、予防にはビタミンC、E、ルテイン、亜鉛などを含む専用のサプリメント、緑黄色野菜が有効とされています。

 早めに発見して治療を行えば進行をかなり抑えることができますので、先ほど述べた症状が出たら早めに眼科を受診してください。そして治療を中断しないことが大切です。