加藤聡一騎手の騎乗で、岐阜金賞を制覇したダルマワンサ。2着はニュータウンガールで東海3冠は達成できなかった

 ゴールインの瞬間、加藤聡一騎手が左手で歓喜のガッツポーズ。重賞2着5回のダルマワンサ(牡3歳、田口輝彦厩舎)が「シルバーコレクター」を返上。東海ダービー馬・ニュータウンガール(牝3歳、井上孝彦厩舎)の3冠を阻止し、初めての重賞制覇を飾った。

 27日、笠松競馬場で「第44回岐阜金賞」(SPⅠ、1900メートル)が行われ、タイニーパワー、ミラクルキャッシュの名古屋勢が先行。単勝1.3倍と断トツ人気のニュータウンガールは3番手から3コーナーを回り、先頭に立つ勢い。4番人気のダルマワンサは中団6番手からじっくりと追走。3、4コーナーでは加藤聡一騎手のゴーサインに応えて瞬発力を発揮。残り300メートルを切ってニュータウンガールに並びかけ、直線を向くと2頭でのたたき合いとなった。最後はダルマワンサが迫力と脚色で勝り、ニュータウンガールを1馬身半突き放し、差し切り勝ちを収めた。
 
 岐阜金賞は、JRAの菊花賞に相当する東海地区3歳クラシック戦。昨年から8月末に実施されるようになって季節感は薄れたが、名古屋の駿蹄賞、東海ダービーに続く最後の1冠。フルゲート12頭立てとなったが、今年は園田、金沢勢が参戦せず、笠松7頭、名古屋5頭が猛暑の中、熱戦を展開。笠松勢の岐阜金賞制覇は、2010年のマルヨサイレンス以来で10年ぶり、田口調教師は06年のティアマット以来で2勝目となった。

 ダルマワンサは父フリオーソ、母ユメハオオキク(母父アドマイヤオーラ)という血統。門別デビューで、岩手から笠松に再転入。新緑賞、ぎふ清流Cなど重賞で2着5回、準重賞でも2着2回と「シルバーコレクター」ぶりが際立っていた。ニュータウンガールとは過去4度対戦。笠松デビュー戦の秋風ジュニアでは勝ったが(ニュータウンガールは4着)、その後は3連敗だった。

無観客レースとなったが、自らのサイン色紙を手に笑顔の加藤騎手

 
 今回、陣営は「NAR優秀新人騎手賞」に輝いたことがある名古屋の加藤聡一騎手を起用。3年前のくろゆり賞では、名古屋・ヴェリイブライトに騎乗し、カツゲキキトキトにハナ差勝ちを収めるなど笠松コースは得意だ。ダルマワンサの追い切りにも乗って好タイム。田口調教師も「ジョッキーに感触をつかんでもらって、新味が出れば。好仕上がりで仕掛けどころ次第」と改修後のコースで手応えを感じていたという。
 
 ■勝負どころで瞬発力の勝利

 無観客だったが、ネット越しのファンに最高のパフォーマンスを見せた加藤聡一騎手。「うれしいです。思いもしなかった騎乗依頼を頂いて、勝てて良かったです。スタートが決まったので、馬のリズムを大事にして、勝負どころの4コーナーでの追い比べでは、馬に頑張ってくれと...。すごい瞬発力と馬力で、パーフェクトの競馬をしてくれました」と喜びに浸っていた。

 田口調教師は「スタートからゴールまでいい感じでした。距離は100~200メートル長いかなあと思ったが、息が入る流れで瞬発力勝負になればと。ニュータウンガールに勝てるとは思わなかったが...。今回はマイナス9キロ(馬体重)での仕上げでしたが、夏場はこの方がいい。加藤聡一騎手が上手に乗ってくれた。強い馬を負かしたかった」と振り返った。

 岐阜金賞は「3歳秋のチャンピオンシップ」シリーズの一戦。10月4日に盛岡で開催されるダービーGPの指定競走で、1着馬のダルマワンサに優先出走権が与えられる。一昨年は岐阜金賞を勝った兵庫のクリノヒビキ(現JRA3勝クラス)が、赤岡修次騎手の騎乗でダービーGP2着と健闘した。勝ち馬はチャイヤプーンで、その後、笠松・花本正三厩舎に移籍している。昨年の岐阜金賞では、当時金沢に在籍していたニューホープ(現在は田口輝彦厩舎)が勝ち、ダービーGPで5着に食い込んだ。

 ダルマワンサの吉田勝利オーナーは、昨年のニューホープに続いて、相性の良い岐阜金賞で連覇を達成した。次走については、10月12日の名古屋・秋の鞍(1400メートル)が有力だ。それでも、ニューホープが果たせなかったダービーGP制覇の夢を追い掛けてほしい。距離は2000メートルに延びるが、岐阜金賞のレースぶりなら十分に戦えるのでは。笠松の名馬では、岐阜金賞VのトミシノポルンガがダービーGP(1992年)を制覇している。岩手で重賞2着2回のダルマワンサ。チャレンジする大きなチャンスである。

 岐阜金賞では1~4着を笠松勢が独占した。392キロと小柄な牝馬スカイガーデン(井上厩舎)が中団から追い上げて3着。8番人気での騎乗となった池田敏樹騎手。東海ダービー(10着)では「いい経験になったんで笠松で生かしたい。小さいんで体重を増やしてね」と話していたが、クイーンC3着に続く好走につなげた。4着は10番人気のドリームレイ(後藤佑耶厩舎)も牝馬。388キロでの出走となったが、渡辺竜也騎手騎乗でメンバー最速タイの上がりで突っ込んだ。人気薄の軽量牝馬2頭が掲示板を確保してくれた。

重賞初制覇のダルマワンサを管理する田口輝彦調教師(左)ら喜びの関係者

 ダルマワンサの口取り撮影で、ようやく勝利を実感できた吉田オーナー。「笠松のためにはニュータウンガールの3冠も見たかったですが、それを阻止するのも馬主としての務め。秋風ジュニアでは勝ちましたが、その後は連敗していて逆転したかった。でもまさかここで勝てるとは。1900メートル戦でしたが、思ったよりも前に行って、ジョッキーがうまく乗ってくれた」。オーナーも想定外の勝利だったが、末脚に磨きをかけて笠松を代表するスターホースに育ってほしい。

 敗れたニュータウンガール。もし勝っていれば、史上5頭目、笠松からはサブリナチェリー(1993年)以来27年ぶり、3頭目となる東海3冠馬となっていた。岐阜金賞でサブリナチェリーに騎乗したのが、当時騎手だった井上調教師だった。管理するニュータウンガールでは前走の金沢・MRO金賞に続いて2着となったが、得意とする名古屋戦の秋の鞍などで巻き返してもらいたい。

 ■笠松での観客入場再開は9月22日からか

 第5回西日本ダービーが9月10日、笠松競馬場で開催される。名古屋競馬場では、既に笠松など地方競馬の馬券販売が再開され、1日から始まる名古屋競馬のレース開催では、観客の入場も再開される。3月以降、無観客レースが続いている笠松競馬の対応はどうなるのか。東海公営として名古屋と足並みをそろえたいところだが、どうやら西日本ダービーシリーズ後、9月22日からのレース開催で入場可能になるという。名古屋での「有観客開催」の状況などを見て、総合的に判断することになりそうだ。正式発表を楽しみに待ちたい。