◆需要激減、経費抑制より24時間体制選択
2020年4月。新型コロナウイルスによる緊急事態宣言を受けて人流が止まった。保有しているタクシーは260台。従業員はバス事業も含め400人を超える。社長就任から2カ月、いきなり試練に直面した。「タクシーはわずかでも需要があったが貸し切りバスの売り上げは4、5月ともにゼロ。赤字は避けられない」。タクシーの24時間運行体制を崩せば経費を抑制できる。経営を優先するか、公共交通としての責務を貫くか。決断に迫られた。
創業は1950年。各務原市を拠点にタクシー2台でスタートした。駐留米軍が相手の商売だったが、3年後には岐阜市内での駅構内営業許可を得て事業を拡大。保有台数も増え、今は創業時の130倍を数える。観光事業、コミュニティーバスの委託運行を含め、バスも75台を保有する中、4代目の社長に就任した。就任年は東京五輪の開催も予定され、期待を膨らませての船出。直後、世界の動きが止まった。
「創業以来、黒字経営を続けていた。こんなことになるとは」。4月26日には「1日の実車回数がコロナ前の1時間分の稼働にまで低下した。人流が止まりタクシー利用者は激減、飲食店の休業や時短営業を受けて夜の需要もほぼゼロの状態が続いた」。見通せないコロナ収束、時間経過に比例して拡大するダメージ。「収入がないのに税金や車両のメンテナンス費用は変わらない。とはいえ、動いていない車両を売却すれば収入源を失ってしまう」。苦悩は続いた。
「タクシーの原点は、すぐ来て目的地まで安全にお客さまを運ぶこと。深夜から早朝は公共交通機関の中でタクシーしか動いていない時間帯。運転資金の枯渇に直面するまで、タクシー会社としての責務を全うする」。24時間の運行をやめれば運転手だけでなく指令室、管理部門の夜間出勤もなくなる。だが、経費抑制よりも社の責務を貫く判断を下した。
現在、タクシー需要はコロナ前の85%ほどに回復。「日タクは夜間も動いてくれた」とのお客さまの声を聞くたび「24時間体制を貫いてよかった。人員や車両の維持は厳しかったが、赤字という痛みと引き換えに、選ばれるタクシー会社になった」と感じている。今後は「運転業務請負業への挑戦も含め、資本を注入していく」と、コロナ後の経営を見据えている。
◆会社の沿革
1950年創業。65年、一般貸切旅客自動車運送事業認可、観光部を発足。86年、観光斡旋業認可。2006年、岐阜市コミュニティバス事業者受託。タクシー保有数260台、バス75台。本社は岐阜市鶴田町3の7の1。








