悪い例 つかむように触ると小さな しこりに気付きにくい
良い例 指のはらをずらしながら、 硬いものがないかをチェック

乳腺外科医 長尾育子氏

 乳がんは自分で見つけることができるがんです。胃や腸にできるがんは自分では見つけられませんが、乳房は体表にあるので、自己チェックで異常に気付くことができます。今回は、乳がんとはどのような姿なのか、そして、自分自身でできるチェック(自己検診)の方法をお伝えします。

 一般的に乳がんは、しこりができる病気として知られていますが、しこりが目立ちにくいものもあることを知っておくことは大切です。

 乳房の中には乳管と呼ばれる管状構造(母乳が通る管)が、乳頭から枝を広げる樹木のように広がっています。しこりができないタイプの乳がんは、この乳管の中にでき、はうように広がっていくため、初めはしこりが目立たず、この段階では検診でしか発見することができません。がんが増大すると、樹状構造の幹や枝の部分が太く膨れ上がり、その部分がぼんやりと硬く触れ始めます。このように乳がんが乳管内にとどまっているものを非浸潤性乳がんといい、転移の心配がないのが特徴ですが、浸潤がんになる可能性はあるので、早期の治療が必要です。

 次にしこりのできる乳がんについてです。このタイプの多くは、乳腺の管状の構造から染み出すように周囲に浸潤して大きくなっていきます。増大するスピードはさまざまで、ゆっくり大きくなるものから、あっという間に増大する場合もあります。前の検診では異常がなかったのに、次の検診までの間に数センチのしこりが出現する場合もありますので、検診で異常なしと言われても、自己検診を続けることは必要です。

 がんが乳管の管状構造外に浸潤したものを浸潤性乳がんといい、治療されている乳がんの約8割が浸潤性、約2割が非浸潤性です。

 乳がんの早期発見のために、乳がん検診を受けるほか、自分で乳房をチェックする自己検診を月1回行ってください。決して乳房をつかまず、さするように3本の指を少しずつずらし、硬い部分がないかを確認していきます。乳房の中に梅干しの種のようなしこりがないか、乳頭の下から周りまでをチェック。しこりとは言えないが、なんとなく硬い部分が気になる、あるいは圧迫すると乳頭から血の混じった分泌が出るなどのサインを見逃さないようにしましょう。

 自己検診のコツは、指の腹でさするように行うこと、そして、気になるところがあったら左右で比較することです。生理前は乳房が張っているので避け、生理後の乳房が柔らかくなった時に行ってください。

 乳がんの確実な予防策はありませんが、閉経後の肥満はリスク要因とされています。適度な運動は発生リスクを減少させます。自己検診と併せて、ぜひ実行してみてください。

(県総合医療センター乳腺外科部長)