放射線治療医 田中修氏

 今日7月13日は、1948年に母体保護法が成立された日です。おなかの中で生命を育んでいる赤ちゃんや母体を思いやる社会を目指すため「生命尊重の日」と定められました。

 さて、医療の世界は、今やデジタル化とグローバル化の波に押され、一大転換期を迎えています。セカンドオピニオンの普及により、患者が自身の健康についてより深く考え、多角的に情報を得ることができるようになりました。また、インターネットとAI(人工知能)技術の進歩は、チャットGPTのようなテキスト生成ツールの誕生を促し、一人一人にカスタマイズされた情報提供が可能となりました。

 しかし、これらの進歩とともに、新たな課題も浮上しています。その一つが「フェイクニュース(うその情報)」の問題です。

 インターネット上では、誤った情報や誇張された情報が瞬く間に拡散し、それが真実と誤解されることがしばしばあります。特に医療の領域では、信頼できる情報源から得た科学的根拠に基づく情報が極めて重要です。

 フェイクニュースは、そのような科学的根拠に基づかない情報を広めることで、人々の健康を害する可能性があります。誤った医療情報に基づいて自己診断を行い、必要な治療を受けずに病状が進行するケース、信頼できないサプリメントや治療法を信じ、結果的に体調を悪化させるケースなど、フェイクニュースによる影響は深刻です。

 また、AIツールの普及も同様のリスクをもたらします。AIは、ユーザーが提供した情報に基づき回答を生成しますが、AI自体が医療専門家ではないため、その情報が必ずしも正確や安全とは限りません。

 医療情報の信頼性を確保するためには、各人が情報の出所を確認し、信頼性を判断するリテラシーが必要です。また、医療専門家も、最新の情報を取り入れつつ、誤情報を防ぐための役割を果たさなければなりません。

 このデジタル情報化時代において、われわれは情報を正しく理解し、適切に活用することが求められています。例えば、記事の内容ではなく、誰がその記事を書いたのかが非常に重要になります。それが、健康を守るための最良の戦略であり、フェイクニュースの波を乗り越えるための唯一の道です。