地元馬が意地を見せた。フォアフロントでぎふ清流カップを制覇。馬上でビクトリーポーズを決める佐藤友則騎手

 馬上で高らかにビクトリーポーズ。笠松競馬の令和初重賞Vは、やはりこの男だった。昨年新設されたご当地重賞「ぎふ清流カップ」。笠松の名手・佐藤友則騎手が、グイグイと流れを引き寄せて、地元生え抜き馬フォアフロント(牡3歳、井上孝彦厩舎)で圧勝。6月11日の東海ダービー(名古屋)に向けて視界良好となる豪快なゴールを決めてくれた。

 初夏の爽やかな風の中、3歳若駒による1600メートル戦。名古屋から4頭、兵庫からも2頭が参戦。駿蹄賞3着と好走した名古屋のアンタエウス(山田祥雄騎手)が単勝1.1倍と人気を集めた。けがから復帰した佐藤騎手は、自厩舎のフォアフロントに2番人気で騎乗。レースは、名古屋のクリスマスベルが先手を奪い、フォアフロントは絶好位の2番手。3コーナー手前からスパートして後続を引き離すと、追ってきたアンタエウスに2馬身半差をつけて余裕のゴール。

 フォアフロントは昨年7月に笠松でデビュー。今年は湾岸ニュースターカップ2着、駿蹄賞5着と勝ち切れないレースが続いていたが、ここへ来て抜群の動きで本格化。地元ファンの前で、圧倒的パフォーマンスを見せて重賞初勝利を飾った。

 断トツ人気のアンタエウスを寄せ付けず「こんなに強かったとは」と、他陣営やファンもびっくり。名古屋、兵庫勢を圧倒して、地元・笠松勢の意地を見せてくれた。3着にも笠松のナラ(筒井勇介騎手)が突っ込み、園田や浦和など全国への遠征経験を生かしてくれた。地元馬を応援していたおかげで馬単、3連単をゲットできた。

先頭でゴールに向かうフォアフロント。駿蹄賞3着のアンタエウスを圧倒した。東海ダービーでは打倒エムエスクイーンを目指す

 レース後は、フォアフロントに乗ったまま「友則スマイル」全開で表彰式へ。「地元コースだから、これだけ動くと分かっていた。相手はアンタエウス1頭で、2コーナーまで緩いペースに落として、先に動いて上がり勝負に持ち込もうと思った。それがうまくいきましたね。厩務員さんがこのレースに向けてしっかりと作ってくれ、馬もその愛情に応えてくれた」と、厩舎スタッフ一丸での勝利を喜んでいた。

抜群の仕上がりで笠松の令和初重賞V。フォアフロントの優勝を喜ぶ井上孝彦調教師(左)ら関係者

 東海ダービーに向けては「輸送と名古屋コースが課題になる。環境の変化に戸惑うとどうか」と大一番を見据えていたが、デビューから10連勝中の名古屋・エムエスクイーン(竹下直人厩舎)に対抗する手応えはつかんだようだ。昨年、ビップレイジングで東海ダービーを制覇した藤原幹生騎手に続いて、佐藤騎手も「ダービージョッキー」の称号をゲットするチャンスが巡ってきた。昨年は名古屋のユーセイスラッガーで9着に終わり、栄冠をつかんだ藤原騎手を祝福する側だったが、今年は、ひそかに「一発」を狙っていることだろう。

 笠松勢Vを果たし、してやったりの井上調教師。「この馬は難しい。フワーッとすると、やめちゃうからね。でも攻め馬はオープン馬並みに動いた。佐藤騎手が最高の乗り方をしてくれて、セーフティーリードを取れたのが勝因」。次走については「東海ダービーを目指しますが、夏場の暑さも大丈夫そうです。距離は1600メートルがベスト。きょうも残り50メートルでは止まっているし、1800メートルになると、切れなくなるんでどうかな」とクリアすべき課題を挙げていた。

東海1冠目の駿蹄賞を制した名古屋のエムエスクイーン(左)。笠松のサウスグラストップが2着

 東海ダービーでは、昨年のサムライドライブと同じく、負け知らずのエムエスクイーンが1番人気になりそうだ。笠松勢ではサウスグラストップ(尾島徹厩舎)も期待の1頭。駿蹄賞では岡部誠騎手の騎乗で、エムエスクイーンから2馬身差の2着だった。その後、骨折のため、東海ダービーを断念した。

 打倒エムエスクイーンへ、フォアフロントは、今年も名古屋の無敗馬を倒して、栄冠をつかむことができるか。抜群の先行力で逃げ切りたいエムエスクイーンだが、ライデンリーダー記念では3番手から辛勝だったように、思わぬ逃げ馬に絡まれて厳しい戦いになるかもしれない。最後の直線での切れ味を磨いて、逆転に燃える笠松勢の走りに注目したい。

駿蹄賞では「金シャチけいばNAGOYA」を盛り上げるマスコットキャラクター「シャチウマくん」も登場し、ファンの人気を集めていた

 ところで、駿蹄賞では「金シャチけいばNAGOYA」を盛り上げるマスコットキャラクター「シャチウマくん」も場内をよちよちと動き回り、ファンの人気を集めていた。笠松では誘導馬のエクスペルテとウイニーがファンとの交流でも活躍。キャラクターでは昭和生まれの「マックルくん」がいるが、着ぐるみのゆるキャラではないためか、全国的にはあまり知られていないようだ。後方から「一気にまくる」イメージで、いい名前なので知名度を高めたいが...。

厩務員らが企画し、競馬場存続を後押しした笠松戦隊「マックルV」。イベントなどでまた帰ってきてほしい

 マックルくんにちなんで、かつては笠松戦隊「マックルV(ファイブ)」が登場して競馬場存続にも貢献してくれていた。2005年に「廃止に打ち勝ってください」と命名されて誕生。厩務員さん中心のメンバーで、子どもたちの人気を集めていたが、最近は見掛けなくなった。レースとして「マックル賞」も開催されているのだから、スタンド前での記念撮影などでファンと交流できるといい。「非公認キャラ」のようだが、笠松競馬を盛り上げるためにも主催者サイドのサポートが必要。表彰式やイベントなどでの再登場が待ち遠しい。

 6月の笠松競馬・水無月シリーズは、4日から7日までの4日間。ご当地レース「飛山濃水杯」(4歳以上オープン、1600メートル)が新設され、6日に開催される。クイーンカップは7月に移ったが、毎月最低1回は重賞があり、厩舎やジョッキーのモチベーションも上がっている。飛山濃水杯には、笠松のヒルノデイバローやストーミーワンダー、名古屋のサムライドライブらの出走が予定されており、実力馬同士の激突で暑さを吹き飛ばす好レースになりそうだ。

 佐藤騎手は「2019地方競馬ジョッキーズチャンピオンシップ」にも出場し、地方騎手日本一を目指す。6月2日のファーストステージ(盛岡、2レース、出場14人)、6月20日のファイナルステージ(園田、2レース、出場12人)に挑戦。優勝者は「2019ワールドオールスタージョッキーズ」(国際招待競走、8月・札幌)の地方競馬代表騎手に選定される。いつも「次のレースを勝ちたいです」という佐藤騎手。笠松や南関東で鍛えた騎乗技術を存分に発揮し、大暴れしてきてほしい。