笠松競馬の2018年「騎手等成績優秀者表彰」で、活躍がたたえられた佐藤友則騎手ら

 今年の目標は、やはり「次のレースを勝つこと」。昨年、笠松で134勝を挙げて3年連続リーディングに輝いた佐藤友則騎手(井上孝彦厩舎)が、1月は22勝の荒稼ぎで、4年連続リーディングへ好ダッシュ。全レースで勝利を目指す姿は、笠松のエースとして本当に頼もしい。

 場内ウイナーズサークルでのセレモニー。午前中は小雨模様だったが、「晴れ男」佐藤騎手の登場とともに、一気に青空が広がり、ポカポカ陽気に。

 笠松競馬の2018年「騎手等成績優秀者表彰」が行われ、騎手部門でリーディングの佐藤騎手(4回目の受賞)、調教師部門では3年連続リーディングの笹野博司調教師(2回目の受賞)の活躍や貢献がたたえられた。厩務員部門では加藤幸保厩舎の田之上秀雄厩務員が栄誉を受けた。

2歳最優秀馬のボルドープラージュ。ラブミーチャン記念を制覇した

 競走馬は重賞ウイナー3頭を表彰。2歳最優秀馬に笹野厩舎の牝馬ボルドープラージュ。準重賞の秋風ジュニアとジュニアクラウン、重賞のラブミーチャン記念を制覇。ライデンリーダー記念でも2着と奮闘した。地方競馬の出世レースでもあるラブミーチャン記念Vでは、笹野調教師が地方通算600勝も達成。また、年明けの白銀争覇では、佐藤騎手騎乗のストーミーワンダーが勝ち、誕生日だった笹野調教師への大きなプレゼントにもなった。

3歳最優秀馬のドリームスイーブル。佐藤騎手とのコンビで活躍した

 3歳最優秀馬には尾島徹厩舎の牡馬ドリームスイーブル。金沢で行われた「MRO金賞」で優勝。佐藤騎手で挑み、ここでも尾島調教師に重賞初Vをプレゼントすることができた。ラスト200メートルで5馬身ほどあったが、豪快な差し切り勝ち。ゴール後には、誕生日が同じ男同士で抱き合いながら重賞制覇の歓喜に浸った。

4歳以上最優秀馬のダイヤモンドダンス。東海ゴールドカップで重賞初Vを飾った

 4歳以上最優秀馬には、花本正三厩舎の9歳牡馬ダイヤモンドダンスが輝いた。大みそかに行われた東海ゴールドカップを4馬身差の圧勝で、花本調教師とともに重賞初Vに輝いた。「やっと勝てたわ」と花本調教師。筒井勇介騎手と勝利を喜び、大勢のファンから祝福を受けていた。今年2月のウインター争覇では、名古屋の10歳馬メモリージルバが3馬身差の勝利。友森翔太郎騎手も「10歳とは思えない若々しい競馬」とたたえていた。笠松の古馬戦線は、高齢馬も本当に元気だ。
 
 表彰対象は、笠松の厩舎に1年以上在籍(2歳馬は除く)する競走馬。東海ダービーと新緑賞を制したビップレイジング(笹野厩舎)は一時JRAに移籍。復活重賞のウインター争覇とマーチカップを勝ったハタノリヴィール(井上厩舎)は北海道に移籍していた時期があり、選出されなかった。

 それでも、笠松勢8年ぶりの東海ダービー馬が対象外となったことは違和感があった。笠松生え抜き馬を育てることはもちろん大切だが、地方・中央の交流が盛んで、短期間に競走馬の移籍も頻繁に行われる時代。笠松所属で重賞2勝を挙げて、盛り上げてくれたビップレイジングとハタノリヴィールは表彰してほしい2頭でもあった。

昨年、3年連続でリーディングを獲得した佐藤騎手(左)と笹野博司調教師

 ビップレイジングは、JRAでの2戦は完敗続きに終わったが、広い馬場での武者修行で急成長。笹野調教師によると、現在は名張ホースランドパーク(三重県)で休養、育成中という。3月にも厩舎に戻り、4月をめどにレース復帰となりそうだ。東海ダービー惜敗のリベンジに燃える名古屋・サムライドライブとの再戦などで、笠松競馬を盛り上げてほしい。

 最近、ファンを驚かせたのは藤原幹生騎手(37)の移籍。リーディングの笹野調厩舎は過去3年間、勝利数を121勝、127勝、151勝と着実に伸ばしてきた。そんな中、ビップレイジングで「ダービージョッキー」にもなり、厩舎のエースとして勝ち頭だった藤原騎手。2月開催から後藤正義厩舎に移籍した。
 
 笹野調教師によると「本人の意向で、違う厩舎でもっといろんな馬に乗って、腕を磨いてみたい」ということだそうだ。同じ厩舎の渡辺竜也騎手(18)が100勝を突破して一人前になったし、水野翔騎手(21)も道営で先にデビューし、笠松移籍後に100勝をクリア。「これからは渡辺騎手と水野騎手の2人で厩舎を引っ張っていってほしい」と若手の成長に期待を込めていた。

「次のレースを勝ちたい」と意欲を見せる佐藤騎手

 「笠松の顔」佐藤騎手にも話を聞いた。全国の重賞戦線でも活躍し、高知・黒潮スプリンターズCでは、ストーミーワンダーで見せ場たっぷりの5着。今年も南関東での期間限定騎乗に意欲。「抽選なんでまだ分かりませんが、できればまた挑戦したいです」。笠松の騎手については「渡辺騎手がうまくなっている。将来は笠松をしょって立つ存在で、強いところでもっと経験を積めば、リーディングを狙えるかも」と、若手騎手とともに笠松競馬を盛り上げていく思いが強いようだ。

 2月最初の開催は3勝どまりだったが、「一つでも多く勝ちたい。けがなく、無事に過ごして、『この1年間、頑張ったなあ』と大みそかになって納得できる年にしたい。昨年はそれができたから」といつも前向きだ。昨年3勝だった南関東でも、2年目となる今年は活躍が期待できそうだ。「2カ月間だけ行って乗っても簡単には勝てない。地元騎手には地の利があるし、自分の研究も足りなかった」。レベルが高い南関東での大きな経験を生かして、その後の笠松での白星量産につなげた。ダートグレードなどでJRAの馬とも戦える地元馬の出現については「調教師の先生たちが、頑張っていますよ。笠松の騎手らみんなでレベルアップしていきたい」と意欲を示していた。

「笠松は懐かしいです」と話すJRAで活躍する柴山雄一騎手

 この日の地方・JRA交流レースには、2005年に笠松からJRAに移籍した柴山雄一騎手も8年ぶりに参戦していた。久しぶりの笠松競馬場で、前回いつ来たかも覚えていない様子。「変わらないし、懐かしいです。年に1、2回は、笠松競馬のみんなと一緒にご飯を食べたりしています。僕の時代にはなかった大型ビジョンができてすごいな。競馬場らしくなってきた」と話していた。

古巣・笠松で8年ぶりのレースに挑む柴山騎手

 関東所属で笠松への参戦は少ないが、「栗東の大橋勇樹厩舎を手伝っていて、笠松に来ることができました」と、3歳キングイチヒメで雪割草賞に出走。JRA馬5頭のうちでは人気薄で、6着に終わったが、笠松ファンの前で、久々に騎乗する姿を見せてくれたのは、うれしい。1998年、笠松競馬でデビュー。2004年にはリーディング4位になるなど、笠松時代に393勝を挙げて活躍。安藤勝己元騎手の勧めもあって、猛勉強でJRAの騎手免許試験に合格。1年目の05年には80勝を挙げる活躍を見せた。

 笠松でのトークショーに参加したこともある。07年のセントライト記念とラジオ日経賞を制覇し、「ロックドゥカンブでGⅠ勝ちを果たしたいです」と話していたが、菊花賞では追い上げ届かず1馬身半差の3着。15年、フラワーCを勝ったアルビアーノではNHKマイルCで1馬身差の2着と惜敗した。「今年は、まだ乗れるかどうか分からないが、やっぱりGⅠを勝ちたいです」と初制覇に意欲。古巣・笠松の空気をいっぱい吸い込んで、JRAでの新たなチャレンジに闘志を燃やしていた。