大みそかまで年末シリーズが行われ、多くのファンでにぎわった笠松競馬。大一番・東海ゴールドカップは、筒井勇介騎手が9歳牡馬ダイヤモンドダンス(花本正三厩舎)で優勝。元日の名古屋・湾岸ニュースターカップは藤原幹生騎手、佐藤友則騎手が騎乗した笠松勢2頭がワンツーフィニッシュ。年またぎでの重賞勝ちとなった。

 笠松競馬は昨年も盛り上がった。ビップレイジングが東海ダービーを制覇。佐藤友則騎手が3年連続でリーディングジョッキーを獲得。馬券販売は好調で、6年連続の黒字へ右肩上がり。「オグリの里2018十大ニュース」として人馬の活躍を振り返った。

 ①東海ダービー、笠松勢8年ぶりV(6月)

 「名古屋の全勝馬を豪快に差し切った」。東海ダービーを勝ったのは、藤原幹生騎手が騎乗した笠松のビップレイジング(笹野博司厩舎)だった。デビュー以来10連勝中の名古屋・サムライドライブが逃げ切るかと思われたが、4コーナーから大まくりで衝撃の結末。「やったぞ、笠松」とゴール前で叫んでしまった。笠松勢では2010年のエレーヌ(筒井勇介騎手)以来、8年ぶりの優勝。ダービージョッキーとなった藤原騎手は「サムライドライブを差し切れて、いい気分でした」。笹野調教師は「実感が湧かず、びっくりしています」。笠松勢が意地を見せて、名古屋勢を圧倒した一戦だった。サムライドライブは岐阜金賞でも2着に惜敗した。笹野厩舎のエース・藤原騎手は、湾岸ニュースターカップをブライアンビクター(大橋敬永厩舎)で制覇し、幸先良いスタート。後輩騎手に良い手本を示し、今年も重賞戦線をにぎわせてくれそうだ。

 ②佐藤騎手、3年連続リーディング

 「笠松の顔、キラキラ」。リーディングジョッキーには、134勝を挙げた佐藤友則騎手が3年連続で輝いた。2位に120勝の筒井勇介騎手、3位には97勝の藤原幹生騎手。佐藤騎手は8月末から2カ月間、南関東で期間限定騎乗に旅立ったが、筒井騎手には抜かれなかった。重賞勝ちは、ハタノリヴィール(井上孝彦厩舎)でウインター争覇とマーチカップ。ドリームスイーブル(尾島徹厩舎)では金沢・MRO金賞を制覇し、尾島調教師に初重賞Vをプレゼント。新婚さんでもあり、充実した1年になった。年末にはサウスグラストップで通算1500勝も達成。今年もウイナーズサークルで友則スマイルがいっぱい見られそうだ。リーディングトレーナーには、3年連続で笹野博司調教師。昨年の127勝を上回る151勝を挙げて躍進。

 ③渡辺騎手「YJS」2年連続ファイナル進出

 「表彰台の真ん中に立ちたかった」。笠松2年目の18歳・渡辺竜也騎手が名古屋ラウンドで2連勝し、ヤングジョッキーズシリーズ(YJS)のファイナルラウンドに連続出場。中山・芝コースで2着と見せ場十分。最終戦に勝てば総合Vのチャンスもあったが、12着に撃沈。それでもトライアルからナイスファイトで「名手の里・笠松」の騎手レベルの高さを全国にアピール。年末のライデンリーダー記念では、自厩舎のボルドープラージュでゴール前まで先頭に立ち、自身初の重賞Vまであと一歩の2着。「東海ダービー馬候補」の呼び声高い名古屋の無敗馬エムエスクイーンを苦しめた。東海ゴールドカップでも最低人気馬で3着に食い込み、3連単で44万馬券を演出。1年目は地方競馬で38勝、2年目は64勝を飾り、通算100勝を突破。晴れて減量騎手を卒業でき、一人前のジョッキーに成長。表情もキリッとして頼もしくなってきた。


 ④オグリキャップ記念、エンパイアペガサス独走V(4月)

 「牧場も大喜び」。オグリキャップゆかりの牧場育ちの5歳馬が、驚異の大差勝ち。オグリキャップ記念は、岡部誠騎手が騎乗した1番人気の浦和・エンパイアペガサスが、2着馬に2秒8差をつける桁違いの強さで優勝を飾った。北海道新冠町の佐藤牧場の生産馬で、2、3歳時に8連勝を飾った岩手ダービー馬。佐藤牧場では、オグリキャップ最後の産駒であるミンナノアイドルを繁殖牝馬として管理しており、長男ストリートキャップは引退し、金沢の誘導馬を目指している。5年ぶりに誕生した次男(ゴールドアリュール産駒)は2歳となり、JRAデビューの予定。第3子(モーリス産駒)の長女も誕生し、オグリの血を継承する後継馬としても期待が大きい。

 ⑤笠松グランプリ、ラブバレットV4ならず(11月)

  「ついに崩れた不敗神話」。笠松グランプリは、兵庫の芦毛馬エイシンバランサー(新子雅司厩舎)が、下原理騎手の好騎乗で初制覇。このレース3連覇中だった岩手・ラブバレット(菅原勲厩舎)は最後の直線で伸びを欠いて4着に終わり、V4はならなかった。地方競馬のレジェンド・菅原調教師は、騎手時代の1999年に岩手のメイセイオペラで、JRAのGⅠ・フェブラリーSを制覇。騎手、調教師として参戦した笠松のレースでは5戦5勝だったが、ついに敗戦を味わった。「笠松に来れば負け知らずで、勝ち続けたかったが...。JBCスプリントからレース間隔が短く、きつかった」と菅原調教師。禁止薬物問題で揺れる岩手競馬だが、ラブバレットには今年も笠松グランプリに挑戦してほしい。
 
 ⑥カツゲキキトキト、笠松でリベンジ(8月)

 「もう負けられない」。名古屋の大将・カツゲキキトキト(錦見勇夫厩舎)が1年ぶりに笠松へ参戦し、真夏のレースを盛り上げた。笠松デビュー馬でもあり、重賞の「くろゆり賞」に出走。前年の勝ち馬ヴェリィブライト(笹野博司厩舎)との直接対決となったが、大畑雅章騎手とのコンビですっきりとリベンジを果たした。ゴール前では2頭のたたき合いになったが、カツゲキキトキトが半馬身差で制した。大畑騎手は「4コーナーで振り向いたら、丸野さんがいたので、ちょっとドキッとしましたが...」。錦見調教師は「この馬で何とかダートグレード競走を勝たないとね」。JBCクラシックにも挑戦して12着。地方馬同士限定の強さでもあり、今年こそ悲願のダートグレード制覇を達成したい。

 ⑦アンカツさん、ミルコさんトークショー盛況

 「ぶっちゃけトーク全開」。オグリキャップ記念とライデンリーダー記念の当日、笠松競馬場に里帰りしたアンカツさん(安藤勝己元騎手)。現役時代の減量苦から解放されて「太め残り」にはなったが、トークショーに予想会にアンカツ節は絶好調。JRAのレースではパドック解説もしているが「あんなもの分かるはずがない。みんないい馬だもの」と本音をズバズバ。詰め掛けた大勢のファンは大爆笑。ライデンリーダー記念の予想も軽く的中。地方時代の騎乗馬ベスト3は、①オグリキャップ②フェートノーザン③レジェンドハンター、JRA時代は、①キングカメハメハ②ダイワスカーレット③ダイワメジャー。

 18年、JRAで153勝(GⅠ4勝)のミルコ・デムーロ騎手は、猛暑の中で熱血トーク。笠松のイメージについて「最高ですね。小回りでアメリカの競馬場みたい。スピードが必要になるね」と気に入っている様子。JRAで44勝、笠松でも6勝と活躍した川又賢治騎手も緊急参戦。暑さのため「好きです!笠松競馬」のTシャツ姿に着替えて、笠松モード全開。ミルコさんの思い出の競走馬ベスト3は、①ドゥラメンテ②ディープインパクト(レース経験はなし)③ネオユニヴァース。
 
 ⑧ラブミーチャン長男、笠松で初勝利(7月)

 「やっぱり笠松では強い」。ラブミーチャンの長男で、JRAから笠松競馬の後藤正義厩舎に移籍したラブミーボーイが、笠松2戦目で待望の初勝利を飾った。3歳の1400メートル戦に6馬身差の圧勝。騎乗した東川公則騎手は通算2700勝も達成。「母のラブミーチャンほどスタートは良くないが、外枠から楽な展開でした」とにっこり。笠松では3勝2着2回3着1回と好走し、船橋の川島正一厩舎に移籍した。弟のラブミージュニアも門別で2勝を挙げて大井に移籍。南関東で兄弟対決が実現するかもしれない。

 2歳牝馬重賞・ラブミーチャン記念はボルドープラージュが制覇。秋風ジュニア、ジュニアクラウンに続いて3連勝。管理する笹野調教師は通算600勝を重賞Vで飾った。ライデンリーダー記念でも2着好走、東海ダービー制覇へ名乗りを上げた。

 ⑨筒井騎手通算1000勝、東海ゴールドカップV(12月)

 「さすがはダービージョッキー」。リーディング2位に躍進した筒井騎手は「夏男」の本領を発揮し、7月に17勝を挙げた。年内を目標にしていた「通算1000勝」の大台を12月30日にゴッドミラクルで達成。セレモニーが行われた大みそかには、東海ゴールドカップを9歳馬ダイヤモンドダンスで制覇。二重の喜びとなった。花本正三調教師にとっても重賞初Vで、「やったなあ」と関係者の歓喜の輪が広がった。19年も勝利を積み重ねて、ワールドオールスタージョッキーズに挑戦したい。

 ⑩水野騎手、北海道から移籍し好デビュー(1月)

 「よくぞ、来てくれた」。ちょうど1年前、若武者が笠松を力強く駆け抜けて新風を吹き込んだ。北海道から移籍してきた水野翔騎手。新春シリーズ2日目には移籍初勝利を飾るなど2勝2着2回の活躍を見せて、ファンの熱い視線を浴びた。神奈川県川崎市出身で、笹野博司厩舎に所属。期間限定騎乗の経験(11勝)もあり、笠松への移籍を決断した。藤原騎手、渡辺騎手と同厩舎。調教中のけがで、YJSファイナルへの挑戦は断念したが、移籍1年目で45勝を挙げる活躍を見せた。19年は大きく飛躍する年になりそうだ。  

 【番外】FC岐阜戦でPV盛況、「馬場BBQ」も開店

 「サマーイベント花盛り」。真夏の夕暮れ、J2「横浜FC―FC岐阜」のパブリックビューイング(PV)が笠松競馬場内で行われた。アウェー戦でスタンドに陣取った大勢のFC岐阜サポーターが「清流ビジョン」に向かって熱い声援を送った。笠松競馬のジョッキーたちも来場者を歓迎。「豪雨災害義援金」への支援を呼び掛け、ハーフタイムには、じゃんけん大会で盛り上げた。

 場内では「馬場BBQ」も開店し、地元のグループで大盛り上がり。ナイター開催のレースを迫力ある清流ビジョンで観戦。レース結果に一喜一憂しながら、いっぱい食べて飲んで真夏の夜を満喫していた。