2日で10勝を挙げて、3年連続リーディングへ大きく前進した佐藤友則騎手

 師走の寒風を切り裂いて力強く駆け抜けた。2日間で何と10勝(6勝、4勝)の固め勝ちで、連日の「友則デー」。注目された笠松競馬の騎手リーディング争いは、佐藤友則騎手が、追撃していた筒井勇介騎手を一気に突き放して、3年連続奪取へ大きく前進した。

 12月前半のウインターシリーズ。佐藤騎手の119勝を、筒井騎手が6勝差の113勝で追っていた。筒井騎手には、逆転の可能性もあったが、地方競馬通算1000勝まであと3勝に迫って足踏み。シリーズ4日間で12勝を挙げた佐藤騎手は、その差を17勝に広げてセーフティーリード。2歳戦準重賞「ジュニアキング」では、生え抜き馬フォアフロント(井上孝彦厩舎)で、圧倒的1番人気のボルドープラージュを差し切り、好騎乗が光った。

来年は東海ダービー制覇が期待される佐藤騎手

 佐藤騎手は8月末から2カ月間、南関東で期間限定騎乗。エース不在の間に「筒井騎手が逆転するのでは」とみられていたが、トップを奪うことはできなかった。南関東初挑戦だった佐藤騎手は、1、2番人気馬での騎乗が多い地元・笠松と違って、上位人気馬での騎乗は少なくて苦戦。「ナンカンの厚い壁」に阻まれて3勝どまりだった。それでも、レベルが高い南関東でのレース経験を今後に生かし、来年以降もまたチャレンジして「笠松の佐藤」を全国にアピールしてほしい。そして、筒井騎手がエレーヌで、藤原幹生騎手がビップレイジングで手にした「東海ダービージョッキー」の称号を、佐藤騎手にもつかんでもらいたい。

1000勝の大台に迫っている筒井勇介騎手。今年はリーディング2位に躍進した

 昨年、99勝を挙げて笠松リーディング3位だった筒井騎手は、今年「夏男」として大ブレーク。7月の高原シリーズでは4勝、5勝の日もあって1カ月で17勝を量産。佐藤騎手の背中が見えるまで猛追した。2月には地方通算900勝を達成していたが、「900という数字は通過点。年内に区切りとなる1000勝ができればいい」と意欲を示していた。そして、1000勝まであと3勝で迎えたウインターシリーズ。2着が目立ち、大台到達へのプレッシャーもあったのか、1勝に終わった。1000勝達成は年末特別シリーズに持ち越しとなった。

 リーディングジョッキーの座は、最高の栄誉。馬券を買うファンは、ゴール前での攻防に一喜一憂するが、ジョッキーにとって、人馬一体となって先頭でゴールする「勝利の味」は、最高に気持ちいいことだろう。C級でも重賞のレースでも、「1勝」ずつの積み重ねが、リーディング上位への道となる。

 笠松競馬のこれまで(1978年以降)のリーディングジョッキーは、歴代の名手が名を連ねている。

   1978~95年、98年  安藤勝己
   96、97、99~2004  川原正一
   05~08、10、11   東川公則
   09、12        尾島徹
   13          向山牧
   14、15        吉井友彦
   16、17       佐藤友則

 安藤勝己元騎手の18年連続、計19回のリーディング獲得は突出した成績。笠松での勝利の味には「おなかいっぱい」になったようで、JRA参戦、移籍へと突き進んだ。後継者となったのが川原正一騎手で、6年連続を含め計8回のリーディング。東川公則騎手が4年連続を含め計6回で続いて、この3人が長年、笠松競馬をけん引してきた。ここ10年では、尾島徹元騎手(現調教師)が2回、 吉井友彦騎手と佐藤友則騎手が2年連続で輝いている。新潟時代に9度もリーディングになった向山牧騎手は、5年前に笠松で初めて獲得した。

 ウインターシリーズを終えて、笠松競馬の勝利数の上位ランキングは次の通り。(12月14日現在)

 【騎手ベスト10】
      18年  17年
      勝利数 勝利数  
①佐藤友則 131  140
②筒井勇介 114    99  
③藤原幹生  95    70
④向山牧   77   102
⑤東川公則  72    93
⑥渡辺竜也  61    35 
⑦吉井友彦  52    84
⑧山下雅之  44    37
⑨水野翔   41   -
⑩池田敏樹  36    52

 佐藤騎手が年末特別シリーズを残してリードを広げた。筒井騎手が100勝を突破。笹野博司厩舎に所属する藤原騎手、渡辺騎手、水野翔騎手(北海道から今年移籍)の活躍が目立った。

 【調教師ベスト10】 

      18年  17年
      勝利数 勝利数
①笹野博司 145  127
②尾島徹  108  74
③後藤正義 81    85
④伊藤強一 79    73
⑤川島弘吉 69   95
⑥加藤幸保 56   95
⑦法理勝弘 55   40
⑧井上孝彦 50   51
⑨田口輝彦 46   47
⑩湯前良人 32   9

 笹野調教師の3年連続リーディングトレーナーもほぼ決まった。尾島調教師、湯前調教師の躍進が目立っている。また、ジョッキー時代にオグリキャップの笠松デビュー戦(2着)に騎乗した青木達彦調教師が今年10月に引退した。騎手として通算648勝、調教師として通算414勝を挙げた。オグリキャップに騎乗した2戦目の800メートル戦で勝利を飾っている。

通算100勝を達成した渡辺竜也騎手。YJSの名古屋ラウンドでは2連勝。「ヴィクトリー」のポーズも決めて、ファイナルラウンドへ闘志

 通算100勝まであと3勝と迫っていた渡辺竜也騎手は、初日に2勝、2日目にも1勝を挙げてあっさりと達成。「年内に決めたいと思っていた。厩舎スタッフには、いつも素晴らしい馬を準備してもらい感謝しています」と喜びを語り、3日目には101勝目を飾って、晴れて減量騎手を卒業。先輩騎手たちと対等の負担重量でレースに出られるようなった。

 ヤングジョッキーズシリーズ(YJS)では、名古屋ラウンドで2連勝。若手騎手の間ではやっている「ヴィクトリー」のポーズも決めてくれ、勝負服のデザインとマッチ。笠松で磨いた騎乗技術をどんどん全国の舞台でアピールしていきたい。

 渡辺騎手は昨年に続いて西日本地区トップの成績でトライアルラウンドを突破した。昨年のファイナルラウンドでは騎乗馬に恵まれず、総合8位に終わった。それでも中山の芝レースで3着に入るなど見せ場はあった。26日の笠松開催日には「100勝達成&壮行セレモニー」もある。

 まだ18歳の渡辺騎手だが、一人前のジョッキーの仲間入りを果たしたことから、今回が最後のYJS挑戦になる。27日の大井、28日の中山では思う存分に暴れてきてほしい。2年連続のチャレンジで本人はもちろん総合Vが目標だろう。ライトアップされた表彰台の真ん中に立って、ファンらの祝福を受けられれば最高である。昨年はヤンキース投手・田中将大さんがプレゼンターを務めて盛り上がった。

昨年のYJS・ファイナルラウンドの表彰式では、田中将大さんがプレゼンターを務めた。レースには、渡辺騎手や藤田菜七子騎手らもチャレンジして熱戦を繰り広げた

 昨年、愛知の加藤聡一騎手が受賞したNARの優秀新人騎手賞争いは、デビュー2年目までの騎手が対象。北海道の新人・落合玄太騎手の58勝に対して、2年目の渡辺騎手は61勝で一歩リード。ただ、2人はYJSのファイナルで直接対決することから、その結果次第で、優秀新人騎手賞の行方も決まりそうだ。渡辺騎手は来年1月に高知で開催される全日本新人王争覇戦競走にも出場予定。

 笠松競馬のウインターシリーズでは、馬券販売額が2日目から3日間連続で3億円を超えて好調をキープ。今年の開催も26日、29~31日の年末特別シリーズのみとなった。イベントが盛りだくさんで、30日に「アンカツさん・トークショー&パドック解説」、31日には所属ジョッキー全員による年末あいさつと「餅まき」なども行われる。レースでは30日にはライデンリーダー記念、31日には東海ゴールドカップが開催され、2日連続の重賞開催で熱戦が期待できる。