ヤングジョッキーズシリーズの金沢第1戦。渡辺竜也騎手が2着、水野翔騎手は3着に食い込んだ

 今年も暑かった金沢競馬場。ヤングジョッキーズシリーズ(YJS)のトライアルラウンドで熱戦を展開。笠松から挑戦した若手騎手2人も躍動した。

 第1戦、笠松勢は穴馬での騎乗だったが見せ場たっぷり。18歳の渡辺竜也騎手が2着、21歳の水野翔騎手も3着に食い込んだ。23歳の松木大地騎手(高知)が2連勝を飾り、地方騎手西日本地区のトップに躍り出た。渡辺騎手は3位、水野騎手は5位につけている。

 場内で販売されていた競馬新聞4紙のうちの1紙を開くと、松木騎手の騎乗馬サンデーストリート(牝4歳)に、この日一番の大本命の印が打ってあった。ジョッキー戦では騎乗馬の「くじ運」も大きなポイントで、松木騎手は超ラッキーだった。単勝1.1倍。JRAからの移籍馬で、C級戦では桁違いの強さ。スタートでつまずいたが、楽々と逃げ切って大差で勝利した。

2着に突っ込んで、うれしそうな渡辺騎手

 興味は2秒も離された2着以下の争いに移った。「笠松勢2人の勢いがいいぞ」。水野騎手の7番人気・カワキタグロワールが、4コーナー3番手から追撃。渡辺騎手の6番人気・ミリノカイザーが5番手から猛然と突っ込んできた。渡辺騎手が先にゴールを駆け抜けて、水野騎手も3着を確保。おかげで2人の騎乗馬から買っていた応援馬券(3連単やワイドなど)をゲットできた。

 笑顔で戻ってきた2人に聞いた。

 渡辺騎手 勝ちたかったが、4コーナーで離されちゃって。(馬場状態は)内から2、3頭目が重く感じたので、軽かった外を回した。水野騎手には負けたくなかったんで、最後は追い比べになった。

3着に粘り込んで、笑顔の水野騎手

 水野騎手 内々狙いで行って良かった。最後のひと脚に懸けたが、渡辺騎手にやられてしまった。次は少しでも上の着順を目指します。

 2戦目は、渡辺騎手が1番人気馬を引き当てて、大いに期待したが、最後の直線で伸びを欠いて6着完敗。水野騎手は7番人気馬で、後方からインを突いていい脚で追い込んできたが7着が精いっぱいだった。

 ここで面白い結果が判明した。笠松ラウンドから計4戦。渡辺騎手と水野騎手が「7・8着、4・5着、2・3着、6・7着」と仲良く?ほぼ並んでのゴール。しかも4戦とも渡辺騎手が先着しているではないか。同じ笹野博司厩舎ファミリーの一員。仲間意識とともに、お互い「負けたくない」という気持ちも強いようだが...。今年の笠松リーディング争いでも、渡辺騎手が34勝で6位、水野騎手が33勝で7位に浮上。ここでも並んで、先輩の藤原幹生騎手らを追っている。

パドック横にあった金沢競馬場のすし店内

 レース前の騎手紹介式後には、競馬場内では珍しいすし店で腹ごしらえをした。パドック横の食堂街にあり、カウンター形式で本格的。店主は笠松や名古屋にも親しみがあるようだ。園田の競馬場関係者も来店。笠松出身で59歳になったベテラン川原正一騎手について聞くと、地方競馬通算5300勝を超えて歴代4位だが、まだまだ園田で頑張るそうだ。YJSには、園田から19歳のジョッキー2人も参戦。10代の若者だけに「何かあったら大変」と付き添いで来場したようだ。注文した日本海産の「にぎり」(1200円)をおいしく頂いて、運気もアップ。1戦目の笠松勢の活躍をゴール前で見ることができた。

 2戦目は、上位に食い込めず無念の2人。

 渡辺騎手 逃げたかったが、外の馬が速くて3番手になった。フワフワしていて馬のリズムが崩れ、外に出したが4コーナーでバタバタになった。次は名古屋。ホームみたいな競馬場なんで、挽回していく。連勝して(昨年のように)トップ通過でファイナルに行きたいです。

 水野騎手 名古屋は、そんなに乗ってないからなあ。
 (佐賀に行くことを楽しみにしていたから、そこで1着を狙いたい)

 残るは佐賀、名古屋、園田の3ラウンド。今年は順位の決定方法が変更され、騎乗する6~8レースのうち、上位の着順を得た4レース分の合計ポイントで決定する。渡辺騎手(名古屋のみ騎乗)より2レース多い水野騎手(佐賀、名古屋で騎乗)には、巻き返すチャンスが十分にある。

2連勝で地方騎手のトップに立った高知の松木大地騎手。最高の結果に「大地スマイル」全開だった

 この日のヒーローは連勝して表彰台を独占した松木騎手。騎手紹介式でも「ただいまー!」と元気一番。金沢で2年前に期間限定騎乗(4カ月間に16勝)した縁で、ファンからも「お帰り~」の声援が飛んでいた。

 松木騎手 (1戦目圧勝)ごちそうさまでした。スピードがあって強過ぎましたね。(2戦目は鮮やかな差し切り)今のは「気持ちいい~!」ですねえ。うれしいです。連勝できたのは、金沢の関係者の皆さんのおかげです。        
 金沢ラウンドを終えて、西日本地区の地方競馬騎手の順位とポイントは次の通り。

①松木大地(高知)78 ②長谷部駿弥(兵庫)72
③渡辺竜也(笠松)46 ④塚本雄大(高知)37
⑤水野翔(笠松) 35 ⑥柴田勇真(金沢)20
⑦石堂響(兵庫) 14 ⑧塚本弘隆(金沢)10
⑨出水拓人(佐賀)3

 田村直也(兵庫)0=疾病療養中のため
 山口以和(佐賀)=笠松で勝利したが、自己都合により金沢、佐賀、園田での騎乗を辞退(NAR発表)

トライアルラウンド金沢に参戦した地方、中央の参加騎手たち

 【地方騎手のファイナルラウンド進出条件】
①東西で最上位の1人
②東西各地区の上位3人ずつ(①で選出された騎手を除く)

 現時点では、西日本トップが松木騎手の78ポイント。東日本トップは山本咲希到騎手(北海道)の75ポイント。渡辺、水野騎手がファイナルへ進出するには、西日本4位以内が最低条件となる。

 昨年は笠松、名古屋、金沢から1人ずつがファイナルへ進出し、東海・北陸地区のレベルの高さを示した。賞金・手当の面では、地方とJRAとの間に大きな格差はあるが、YJSの戦いぶりからも、若手ジョッキーの力に差はない。地方騎手の方がなりふり構わず、豪快な追い込みを決めてくれる印象がある。

 今年の名古屋勢にはYJSへの挑戦者がおらず、東海勢として活躍が期待される笠松の渡辺騎手と水野騎手。10月10日の名古屋ラウンドでは、格好良くワンツーフィニッシュを決めて、ファイナルラウンド進出への夢の扉を開きたい。