脳神経外科医 吉村紳一氏

 こんにちは、吉村です。この欄では「脳卒中予防に関する最新情報」を紹介しています。皆さん、一緒に勉強しましょう! 今回も「開頭手術」についてお話しします。

 さて私たち脳神経外科では、太さ1~2ミリ、あるいはそれ以下のサイズの脳神経や血管を傷付けないように手術をしなければなりません。全身の手術の中でも、最も細かい作業の一つと言えます。では、このような細かな作業を、どのように行っているかご存じでしょうか?

 肉眼ではそのようなことは不可能です。「手術用顕微鏡」=写真=を使うのです。写真をご覧いただければ分かると思いますが、かなり大型の機器です。ですから、実際にはとても重いのですが、うまくバランスが取れた状態であれば、手術中の操作は極めて軽く、まるで宙に浮いているような感じです。

 最近では、ボタン一つでバランスを取ることが可能ですし、ハンドルを握ることでロックが解除され、自由に動かし、またロックして、手術操作に移ることが可能です。この手術用顕微鏡を使用することによって、非常に明るい状態で20倍から30倍以上に視野を拡大して観察することが可能なので、神経や血管を高い確率で温存できるのです。オートフォーカスはもちろん、特殊な蛍光色素撮影機能が付いているものもあります。

 顕微鏡の導入によって、脳神経外科の手術は飛躍的に発展しました。そして、現在も年々改良され、安全性を高めることに寄与しています。

 (兵庫医科大学脳神経外科主任教授、大垣徳洲会病院外来担当)