小児科医 福富悌氏

 今年のインフルエンザの流行は1月上旬から始まり、収束に向かっているとはいえ、いまだに続いています。今年のインフルエンザの流行の特徴は、A型とB型が混在していることです。

 また、昨年末にはインフルエンザワクチンが不足していたせいか、例年よりも流行が大きいような印象があります。今シーズンはすでにかかった方も多いと思います。「インフルエンザに一度感染したからもう大丈夫だ」と、考えている人もいると思いますが、安心はできません。

 インフルエンザウイルスの表面には、ヘマグルチニン(H)とノイラミニダーゼ(N)という2種類の突起があります。ヘマグルチニンは、人に感染する時に細胞に結合する働きがあります。ノイラミニダーゼは、感染した細胞の中で増えたウイルスが、外へ出て行くために必要な役割を持っています。このノイラミニダーゼの働きを阻害する薬剤が、現在一般に使用されている抗インフルエンザウイルス薬です。

 しかし、毎年流行している同じ型のウイルスでも、少しずつ変化することがあります。人混みなどで同時に少し違ったウイルスに感染すると、両方のウイルスの遺伝子を持った新たなウイルスが生まれることがあります。そのため2回目の感染があるとすると、今シーズンA型に既に感染した人ならば、次はB型の感染だと思われるでしょうが、人に感染しながら生まれた、新たなA型のインフルエンザに感染することがあります。このような特徴はA型だけとされています。

 今年の流行は、4月ごろまで続くと予想されていますので、今後も注意が必要です。季節が変わる今の時期は体調を崩しやすく、インフルエンザにも感染しやすくなります。暖かくなっても冷えが続く時は、自律神経が不安定になっていることも考えられます。

 漢方薬で補うならば、体力がない時には十全大補湯、人参養栄湯(にんじんようえいとう)などを用います。肩が凝り、疲れが取れない時には加味逍遙散(かみしょうようさん)、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、ストレスが多い時には、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)、桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしぼれいとう)などがよいでしょう。体調がすぐれない時には医師に相談してみましょう。

(福富医院院長、岐阜市安食)