小児科医 福富悌

 今年はインフルエンザワクチンが不足しているため、接種できていない人が多いと思います。その一方でインフルエンザの感染も始まっています。こうなると、インフルエンザに感染しないように予防することが大切です。

 インフルエンザウイルスの感染経路は、主に飛沫(ひまつ)感染と接触感染です。飛沫感染とはインフルエンザに感染している人がせきをして、放出されたウイルスを吸い込んで感染することを言います。この場合はせきでウイルスが飛びますが、その距離は1メートル程度なので、2メートル離れていれば感染する可能性は少ないでしょう。

 もう一方の接触感染は、インフルエンザに感染した人のせきや鼻水のウイルスが手に付き、その手でドアノブ、手すりなどに触れ、他者がそこに触ることによりウイルスが移ります。そのまま食事などをすると、口からウイルスが入り感染します。

 これらの感染を防ぐためには、まず栄養と睡眠を十分に取って、体力を維持することが必要です。次に人混みをできる限り避けること、マスクをして直接ウイルスを取り込むのを防ぐこと、外出から戻ったら手洗いをすることです。またインフルエンザウイルスは、周囲が脂質の膜で覆われているので、アルコールで消毒をすると、この膜が壊れてウイルスは死滅するので有効的です。

 このような予防対策に加え、漢方で体力や免疫を整えておくことも一つの方法です。消化機能を高めて免疫力をつける代表的なものに、補中益気湯があります。ストレスや寝不足で体力が低下している人には、加味帰脾湯(かみきひとう)などが良いでしょう。

 風邪の症状を感じた場合には、早い対応が大切です。寒気、発熱、頭痛に対しては葛根湯(かっこんとう)が良く、寒気と鼻水には小青竜湯が合うでしょう。たんが出るせきには麦門冬湯(ばくもんどうとう)、喉が痛い時には桔梗湯(ききょうとう)などが良いでしょう。インフルエンザに感染した時にみられるような悪寒と高熱、頭痛、関節痛などの症状には麻黄湯が効果的ですが、このような場合は医療機関を受診して、インフルエンザの検査を受けましょう。

 師走は何かと忙しく、食事や睡眠が不規則になることもありますが、体調を整えておき、風邪やインフルエンザには注意しましょう。漢方薬については、専門の医師や薬剤師に相談してください。

(福富医院院長、岐阜市安食)