小児科医 福富悌

 今の時期に多い病気の一つに、手足口病があります。これはその名前の通り、口の中の粘膜と、手や足などに2~3ミリの水膨れができる病気です。

 時に肘、膝、臀部(でんぶ)などに出現することもあります。口の中の水膨れは、つぶれて口内炎のようになります。発熱は全症例のうち約3分の1に見られますが38度以下のことがほとんどです。手足の水膨れは通常は3~7日で消え、つぶれることはありません。重症化することもほとんどありません。潜伏期は3~5日間ぐらいです。

 原因には、エンテロウイルスなどいくつかのウイルスがあります。多くは4歳ごろまでにかかりますが、小学生やまれに大人でも感染することがあります。大人は子どもよりも症状が重くなることがあります。手、足、口の水疱(すいほう)だけでなく、頭痛や筋肉痛、悪寒といった症状も出ることがあります。

 毎年夏に多く発生し、今年も全国的に流行していますが、秋から冬にかけても多少の発生が見られることがあります。せきなどで排出されたウイルスで感染しますが、便中に排せつされたウイルスによる経口感染、水疱内容物からの感染などもあります。

 手足口病の特別な治療法はなく、発疹もかゆみなどを伴うことはほとんどありません。口の中の水膨れがつぶれると痛いため、食事が取れないことがありますが、脱水症状にならないように水分補給することが大切です。

 予防としては、接触感染を防ぐための手洗いが大切です。もう一つは体調を整えておくことです。夏の暑さによる体力消耗には、まず胃腸を整えておくことが第一です。

 そこで胃腸を整える漢方を挙げますと、次のようなものがあります。食欲がなく疲れやすい場合には六君子湯、暑さでのどの渇きや腹痛がある場合は胃苓湯(いれいとう)、冷たい物を飲みすぎて体がだるい場合は防己黄耆湯(ぼういおうぎとう)、暑さで疲労や食欲不振が続く場合は清暑益気湯が良いでしょう。まずは漢方に詳しい医師や薬剤師に相談してみてください。

 暑い時期に風邪症状があり、手足に発疹がある場合は、手足口病に注意しましょう。第3種の学校伝染病なので、登園や登校については主治医の先生に相談しましょう。

(岐阜市安食、福富医院院長)