ネクストスター笠松、渡辺竜也騎手騎乗のワラシベチョウジャが制覇

 笠松競馬の次世代エースは「お前だ、ワラシベチョウジャ」。

 1着賞金1000万円のビッグレース。2歳新設重賞「第1回ネクストスター笠松」(1400メートル、笠松所属馬限定、未来優駿)が12日行われ、渡辺竜也騎手が騎乗した牝馬ワラシベチョウジャ(笹野博司厩舎)が1番人気に応えて制覇 。6月のデビュー戦から無傷の5連勝を飾り、快進撃を続けている。

 「ネクストスター」は国内ダート競走の体系整備に伴い、3歳短距離路線として新設された高額賞金レース。来年5月の兵庫チャンピオンシップ(JpnⅡ)を頂点と位置付け。2歳秋から3歳春にかけて地方の各場で「ネクストスター」が開催され、ステップレースとなる。

 前走ジュニアクラウンを勝った笠松生え抜きのワラシベチョウジャ。高額賞金を狙って北海道から転入し、2戦目となった4頭を迎撃する形になった。フルゲート12頭立てで、乗り役は笠松3人に対して名古屋7人。金沢の吉原寛人騎手が参戦したほか、JRAの田口貫太騎手が3頭出しの田口輝彦厩舎の1頭に騎乗した。

ネクストスター、優勝馬ワラシベチョウジャと渡辺竜也騎手(左)ら喜びの関係者

 ■「笠松の新星」として大物感の漂う走り

 内ラチ沿いの深い砂の影響でインコースがモコモコしていて、逃げよりも外差しが決まる馬場状態。外枠有利で、ワラシベチョウジャは試練の1番枠だったが、渡辺騎手が好スタートを決めた。4番手を追走し、向正面からの下り坂で気合を注入すると3~4コーナーでは先頭を奪い、最後の直線でも楽な手応えで押し切った。

 ゴールの瞬間、渡辺騎手は左手で軽くポンと愛馬の首筋をたたいて、軽快な走りに感謝した。2着は中団から追い上げたキスリング(田口輝彦厩舎)、3着はアコー(伊藤強一厩舎)。吉原騎手騎乗のミスキャサリン(田口厩舎)も大外から4着に突っ込み、5着まで牝馬が独占した。

 まだ地元限定での5連勝だが「笠松の新星」として大物感の漂うワラシベチョウジャの走りはファンを魅了。未来のスターホース候補として期待は高まるばかりだ。前走は2着を5馬身も引き離したが、今回は1馬身半差。後続を突き放すほどではなかったが、一発を狙っての移籍組も強敵ぞろい。最後の直線も危なげない走りで、応援したファンを喜ばせた。

大一番を制し、歓喜に浸る渡辺騎手

 ■笹野調教師、大一番を制しホッとした表情

 表彰式で渡辺騎手は「うれしいです。プレッシャーもありましたが、こういう強い馬に乗せていただけることを楽しみながら、乗ってこようと」と手応え十分。「みんながマークしてくると思ったので、(馬場が悪い)内々にこもらないようにだけ気を付けました。反応も良くて、早く先頭に立った形ですね」。この馬の強さについては「どんな競馬でもできるので、すごく自信を持って乗ることができます。笠松の代表として、恥ずかしくないように馬と一緒に成長できれば」と飛躍を誓った。

 この日の渡辺騎手は1日6勝の固め打ち。「きのうまで2着ばかりだったのですが、絶好調の馬に乗せてもらって幸せ者です。今後も大きいレースで勝っていきたいので、応援に来てもらえるとうれしいです」とファンの声援を力に白星を積み重ねていく決意を示した。

 夢が広がる期待馬。勝ちタイムは1分30秒9で前走よりも1秒余り遅かった。笹野調教師は「ちょっと早めに動いた分かな。時計勝負の軽い馬場の方がこの馬には向いていて、いい走りをするんで。今開催のような力のいる馬場は苦手かもしれない」と分析した。

「笠松の星」ワラシベチョウジャ

 今後については「月1のローテーションで馬の様子を見ながらに。輸送競馬に弱いところがあるかもしれないので、そこがどうかと。ここが大きな目標だったんで、次走についてはじっくり考えさせてください」と秋の大一番を制し、ホッとした表情だった。

 ■「勝利はもうゲート裏で意識しました」

 ウイナーズサークルで、色紙などへのサインでファンと交流していた渡辺騎手。ワラシベチョウジャの単勝が前走に続いて断トツの1.2倍だと聞いて「まじですか」と人気の高さに驚いた様子だった。

 レース展開について渡辺騎手は「抜け出してからも良かったです。今開催は馬場が重いんで、早めに動いたら止まりますね」。ゴール手前では「まあ、後続馬の足音が聞こえたんで、ちょっと気になりましたね。でも大丈夫です。上がり3ハロンだけしのげれば、僕の馬には届かないと思ったんで。でも伸びてきた馬もいましたね」。馬のコンディションについては「バッチリでしたし、勝利はもうゲート裏で意識しました」と好感触だった。今後はやはり、遠征して結果を残せるかどうか。夢ある素材を育てていくことも渡辺騎手の使命となりそうだ。

宮下瞳騎手との初コンビで3着に踏ん張ったオマタセシマシタ(左)

 ■オマタセシマシタ「宮下マジック」で大逃げ、3着に踏ん張る

 笠松の人気馬オマタセシマシタ(牝3歳、笹野博司厩舎)が10日、宮下瞳騎手との初コンビで大逃げを見せて3着に粘り込んだ。パドック周回から「宮下マジック出るか」とファンが注目。斉藤慎二オーナーも笠松競馬場に来場して観戦し、盛り上がった。

 オマタセシマシタは笠松デビュー戦で初勝利を飾った後、「オグリの里・聖地編」出版記念の協賛レースでも走ってもらえたが、6連敗中だった。短期放牧を経て、厩舎も競馬場から離れた円城寺厩舎に引っ越し。静かな環境になって、精神的にも安定。よく食べて馬体重はプラス10キロで登場。約2カ月ぶりの復帰戦となり、通算1100勝超えの名手・宮下騎手が新味を引き出してくれた。

返し馬に向かうオマタセシマシタと宮下騎手

 3番人気で7枠から好ダッシュを決めたオマタセシマシタ。内に切れ込むと後続を引き離して快調な逃げ。スタンド前では「行った~」と若いファンたちから驚きの声が上がった。3コーナーでは5馬身ほど引き離していたが、笠松、名古屋のリーディングジョッキーが追撃。最後の直線では岡部誠騎手のレッドルヴァンシュ、渡辺竜也騎手のプライムトゥーレにまくられたが、3着は死守した。

斉藤慎二オーナーも笠松競馬場でオマタセシマシタのレースを生観戦した

 ■斉藤オーナーもファンと大興奮

 ゴールの瞬間と、3着(クビ差)確定時にはスタンドのファンから温かい拍手が沸き起こった。斉藤オーナーも来賓席から身を乗り出して、「ハーイ、ナイスですね~!」の派手なアクションで喜びを表現した。最終レース前にはファンに囲まれてサインなど応じて交流。「頑張りました。最後はペースが速くなって、息が上がってバテちゃったけど」と、勝利は逃したが中央からの転入馬2頭に続いたレース内容には大満足の様子だった。

 大逃げで飛ばしていった宮下騎手は「ハナを切ったら、思い切ったレースをしようと。怖がりな面があると聞いていたので逃げられたらいいなと。でもすごく乗りやすい馬でした」と振り返った。大きな歓声でファンも興奮。果敢なレースでオマタセシマシタを気分良く走らせて見せ場たっぷり。次につながる好走で、宮下騎手の手綱で勝利も期待できそうだ。

 笹野調教師も「馬の特徴を生かして乗ってくれた。ハイペースで飛ばしていったんで最後は失速したが、ハナを切って前へ行けたのが良かったです。時計がかかる馬場で、馬体重プラス10キロも良かった。船橋へ移籍する使命もあり、中1週で使えたら」と早ければ23日からの開催で、また宮下騎手とのコンビで2勝目に挑む。「2勝目オマタセシマシタ」と盛り上げてほしいものだ。

地方競馬通算1000勝の大台を達成した馬渕繁治騎手

 ■馬渕繁治騎手が地方競馬通算1000勝を達成

 シリーズ最終日の13日、6Rで馬渕繁治騎手(56)が地方競馬通算1000勝を達成した。牝3歳のメイショウヒエイ(森山英雄厩舎)に騎乗。2番手から差し切り。2着馬を4馬身突き放して、最後は手綱を持ったまま余裕のゴールを決めた。

 道営が休業になる冬場に、笠松で期間限定騎乗を続けていたが、4月に北海道から騎手不足の笠松へ完全移籍。「あと3勝」で迎えた今開催。11、12、13日と3日連続の勝利で大台を達成し、最高の節目を迎えることができた。10月15日に誕生日を迎える馬渕騎手。笠松には移籍してきたばかりで、今後も10年以上活躍していただきたい。


 ※「オグリの里 聖地編」好評発売中、ふるさと納税・返礼品に

 「オグリの里 笠松競馬場から愛を込めて 1 聖地編」が好評発売中。ウマ娘シンデレラグレイ賞でのファンの熱狂ぶりやオグリキャップ、ラブミーチャンが生まれた牧場も登場。笠松競馬の光と影にスポットを当て、オグリキャップがデビューした聖地の歴史と魅了が詰まった1冊。林秀行著、A5判カラー、200ページ、1300円。岐阜新聞社発行。岐阜新聞情報センター出版室をはじめ岐阜市などの書店、笠松競馬場内・丸金食堂、名鉄笠松駅構内・ふらっと笠松、ホース・ファクトリーやアマゾンなどネットショップで発売。岐阜県笠松町のふるさと納税・返礼品にも加わった。