①深沢杏花騎手デビュー、笠松に20年ぶり女性ジョッキー(4月1日)
 
 「涙の初勝利」 笠松競馬でも待望の女性ジョッキーがデビューした。ダイヤモンド柄の勝負服姿で躍動した深沢杏花騎手(湯前良人厩舎)。笠松所属では中島広美さん(1992~2000年在籍)以来20年ぶり。無観客のため、歓迎セレモニーにファンの姿はなかった。初騎乗から36戦目(4月15日第6R)、1番人気・プラピルーン(井上孝彦厩舎)に騎乗し、鮮やかな差し切り勝ち。初勝利をゲットし、18歳少女は涙をにじませた。
 
 騎乗したプラピルーンでは、デビュー2日目に不運なアクシデント(ゲート内に厩務員がいたのに発走)に遭遇し、仕切り直しの一戦。「1着でゴールできて、ホッとして涙が出てきました。周りの方のサポートに感謝でいっぱいです」と1勝の重みをかみしめた。笠松で11勝、名古屋で2勝を飾り、2年目の飛躍が期待されている。機会があれば、今度はファンの前でのセレモニーで激励を受け、大きく育ってほしい。

 コロナ禍前には、岩手の関本玲花騎手が盛り上げてくれた。1カ月余り、笠松で期間限定騎乗。名古屋を含めて計5勝を挙げた。セレモニーは「歓迎、笠松初勝利、お別れ」と3回も行われた。サイン会などで大勢のファンと交流し、期間限定で「また笠松に戻ってきたい」と意欲。深沢騎手との「花・花コンビ」対決をファンは楽しみにしている。10月のデビュー早々、けがをした長江慶悟騎手は年末特別シリーズから元気に復帰。「騎乗技術を高めたい」と闘志を燃やし、まずは初勝利を目指している。

 ②東海ダービー、笠松のニュータウンガールV(6月9日)
 
 「悲願のビッグタイトル奪取」 第50回東海ダービー(名古屋)は、騎手も調教師も「ぜひ取りたい」という東海公営最高峰のレース。1番人気のニュータウンガール(井上孝彦厩舎)に佐藤友則騎手が騎乗。2着エムエスオープンに2馬身差。ただ一頭、次元の違う走りで強烈なゴールを決め、半年間で重賞5連勝。東海3歳世代の頂点に立った。5月の駿蹄賞に続いて2冠目で「東海3冠馬」への期待が高まったが、岐阜金賞はあと一歩及ばず2着だった。

 佐藤騎手は悲願のダービージョッキーの座をつかみ、井上調教師も初制覇となった。「先生の所属馬で『ダービートレーナー』をプレゼントできました」。師弟コンビで歓喜に浸り、「本命の印が付いていても、本心は最後までハラハラドキドキでした」と井上調教師。笠松勢の東海ダービー馬は、藤原幹生騎手が騎乗したビップレイジング(笹野博司厩舎)以来2年ぶりで史上18頭目。

 ダービーと名の付いたレースがない笠松で、9月には第5回西日本ダービーが行われた。金沢の吉原寛人騎手騎乗で、佐賀・エアーポケット(真島元徳厩舎)が中団から差し切り勝ち。吉原騎手は地方重賞100勝目を飾った。 

 ③筒井勇介騎手、2年連続リーディング

 「丸刈りで気合、勇介スマイル」 ゴール目指して猛スパート。笠松競馬の騎手リーディング争いは、筒井勇介騎手が131勝を挙げて、2年連続で笠松リーディングに輝いた。2位は渡辺竜也騎手で 116勝。年末特別シリーズでも、初日に3勝を挙げるなどして筒井騎手が逃げ切った。

 7月9日(名古屋)、サツキオーゴン(伊藤強一厩舎)で地方通算1200勝を達成。「2000勝への通過点。さらなる重賞制覇、連続リーディングを狙いたい」と意欲。ダルマワンサでは2着が多かったが、頭を丸刈りにするなどして気合を注入。名古屋新設重賞・ベイスプリントをウラガーノ(田口輝彦厩舎)で制し、初代王者に。秋風ジュニアもベニスビーチ(田口厩舎)で制するなど勝負強さを発揮。重賞戦線での「2着男」を返上した。ジョッキーズチャンピオンシップ(盛岡)には初挑戦。1戦目10着、2戦目3着で総合6位と健闘した。
 
 リーディングトレーナーは、前年を上回る157勝を挙げた笹野博司調教師が5年連続で獲得。全国リーディングでも2年連続の5位。所属する水野翔騎手、渡辺竜也騎手の成長もあって、勝利を量産した。

 ④騎手3人、調教師1人の免許更新されず(8月1日)

 「突然、騎手一覧から顔が消えた」 トップジョッキーとして活躍した佐藤友則騎手をはじめ、山下雅之騎手、島崎和也騎手、尾島徹調教師は、NAR(地方競馬全国協会)の免許が更新されず「引退」扱いになった。4人ともまだ30代と若く、ファンに親しまれた人材を失い、笠松競馬にとって大きな痛手になった。理由は明らかにされていないが、年1回更新される免許交付がなく、地方競馬で騎乗できなくなった。笠松競馬の公式ホームページや競馬場正門、東門の所属騎手一覧から、顔写真が突然消えたが、主催者サイドの説明はなし。笠松競馬に関わる全てのホースマンや、応援してきたファンのためにも、きちんとクリアに情報公開を行って、説明責任を果たしていくことが、今後の地方競馬のあるべき姿として求められている。

 尾島調教師は19年の笠松・オータムカップをウインハピネスで制するなど重賞3勝を飾った。動画投稿サイトでは、調教師免許をNARに返納したことを明かした。笠松競馬の馬券購入問題については「競馬ファンの皆さまを裏切る形になってしまった」と謝罪。騎手が故意に着順を操作する八百長疑惑について「操作はしていない」と強調した。
 
 また、岐阜県地方競馬組合は現役の調教師20人、騎手14人、厩務員83人を対象に馬券購入に関して聞き取り調査を行い、「違法な馬券購入の事実は確認されなかった」とした。 

⑤コロナ禍で無観客レース、大規模な馬場改修

 「ひっそり、堤防上ではライブ観戦」 笠松競馬でも、新型コロナウイルスの感染拡大防止策として、無観客レースが3月から半年余り続いた。場内の一般スタンドや特別観覧席は無人。場内売店も閉められ、場立ちの予想屋は姿を消してひっそり。ファンの声援はなく、ジョッキーたちは「寂しさ」を感じながらも、ゴールを目指して熱戦を繰り広げた。木曽川沿いの堤防上では、場外から「ライブ観戦」するファンの姿も多く見られた。制限は9月22日から順次解除。年末は上限1000人で開催された。馬券は電話・インターネット発売のみとなった。「巣ごもり生活」でネットのギャンブル需要が増し、売り上げは大幅アップ。8年連続の黒字確保へ好調をキープしている。

 馬場改修は7月と8月前半のレース開催を中断し、走路の路盤改修、パドックへの通路の舗装、ラチの交換などが行われ、笠松コースが真新しくなった。路盤改修は9年ぶり。コースの砂は競走馬に踏み固めらて堆積するため、重機で切削。水はけを良くし、走りやすくした。52日ぶりにレースが再開され、深沢杏花騎手が3番人気のアイカリトマナカ(加藤幸保厩舎)に騎乗し、リニューアルされた馬場で「一番星」に輝いた。

 ■番外 ストーミーワンダー安らかに(5月22日)

 「重賞5勝、嵐のように駆け抜けた」 笠松の大将・ストーミーワンダー(笹野博司厩舎)が、連覇を目指した飛山濃水杯のレース中、右後ろ脚を骨折するアクシデントに遭い、競走を中止。天国に旅立った。嵐のように駆け抜けて、去っていった名馬。「大好きでした」「たくさんの夢や感動をありがとう」と力強い走りをファンは忘れない。白銀争覇や姫山菊花賞(園田)など重賞5勝。くろゆり賞では、東海最強馬のカツゲキキトキトを一気に抜き去る強い競馬。渡辺竜也騎手は重賞3勝を飾り、べストパートナー。「オグリの里2019十大ニュース」では堂々の1位だった。

 このほか、ウインター争覇を制したキタノナシラ(森山英雄厩舎)は4月30日のレース中に馬体故障を発生し、亡くなった。ラブミーチャン記念Vのラジアントエンティは水沢・プリンセスカップのレース中に故障し、永遠の別れとなった。

 競走馬の育成に尽力された法理勝弘調教師(64)は12月12日、亡くなられた。高崎競馬廃止後、07年から笠松に所属し、高い勝率でファンの支持を集めた。通算勝利は1435勝。

 コロナ禍による「3密」回避のため、大みそか恒例の騎手あいさつや餅まきは行われなかった。