佐々木朗希投手そっくりの長江慶悟騎手(左)と大谷翔平選手そっくりのマチョ谷翔平さん

 「ものまね?ショー」やチャリティーオークションなどで競馬場内に熱気がみなぎった。いつもは調教やレースで競走馬が駆け抜ける笠松競馬場がレジャーランドに大変身。パドックがプロレス会場になるなど場内を開放した「2023笠松競馬秋まつり」は14日、秋晴れに恵まれて家族連れや若者グループらで大にぎわいとなった。                   

家族連れらでにぎわった笠松競馬秋まつり。騎手らも普段着で参加し、ファンと交流した

 所属騎手たちはレース用の勝負服ではなく、普段着や野球のユニホーム姿で出没。来場者は「昭和レトロ感」漂うスタンドや内馬場パドック、コース内をぶらぶら。ご当地グルメを味わったり、競馬グッズを買い求めたりしながら、さまざまなイベントを満喫した。グッズコーナーでは「オグリの里・聖地編」も販売。昨年のように多く取材できなかったが、興味深い二つのステージには密着した。笠松競馬場まで足を運べなかった全国の「競馬&野球ファン」のためにも、そっくりさん2人の奮闘ぶりを中心にお伝えする。                    

「ものまね?ショー」のステージに長江騎手(左)とマチョ谷さんが登場。ユニホーム姿でファンを楽しませた

 ■長江慶悟騎手とマチョ谷翔平さん、スーパースターに似ている?

 中央スタンド前のメインステージで注目を集めたのが「ものまね?ショー」。プロ野球ロッテ・佐々木朗希投手そっくりの長江慶悟騎手と、エンゼルス・大谷翔平選手そっくりのマチョ谷翔平さんが登場。2人は今年5月、テレビのものまね番組に出演。勝ち抜くことはできなかったが意気投合。今度は「ノーカットでお見せしたい」とお互い主役になってリベンジとなる晴れ舞台に立った。長江騎手はヤングジョッキーズシリーズ(YJS)のポスターでセンターを任されたがファイナル進出を逃し、その悔しさもぶつけた。

 「本物」2人はともに背番号17で、日米野球界のスーパースターへと急成長した。今回、登板したそっくりさん2人。果たして本当に似ているのかどうか。プロ野球のスタンドではなく、競馬場のスタンドから競馬&野球好きが熱い視線を送ってジャッジした。司会は岐阜県各務原市出身の大澤広樹アナ(東海ラジオ)で、ドラゴンズのゲーム実況でもおなじみ。競馬場では珍しい「プロ野球選手そっくりショー」で盛り上がった。 

ピッチングフォームを披露する長江騎手(左)とマチョ谷さん

 ■対決実現「そっくりさん」ぶりをスタンドにアピール

 長江騎手は中学まで部活で野球部に所属しており、自分のグラブを春日井市の自宅から取り寄せた。早速、バットを構えた二刀流のマチョ谷さんにボールを投げて対決。「マウンド上は佐々木朗希です。第1球投げました」と生実況されたが、ステージ限定の「魔球?」は見逃されてしまった。2人はピッチングフォームも披露しながら「そっくりさん」ぶりをスタンドのファンにアピール。熱血トークでも盛り上げた。
 
 大澤アナから「本当に似てますね。すごいわ」と言われると、マチョ谷さんは「毎日ユーチューブを見て地道な研究を重ね、バッティングセンターでは見逃す練習も楽しくしています。表情とかバットの構えとかがポイントで、ユーチューブに投稿していますので、応援してください」と呼び掛けた。

 佐々木投手と同じデビュー4年目の長江騎手は「僕はもう顔が似ているだけなんですが、身長が30センチぐらい違いますし『小さいなお前』とよく言われますね」。長江騎手は160センチあるが、佐々木投手は192センチで、1年前のステージでは「もし会ったら、ツーショット写真を撮ることになるでしょう。佐々木投手にはしゃがんでもらいます」と希望していた。

本業はもちろんジョッキー。勝負服姿でレースに挑む長江騎手

 大谷選手の身長は193センチで、マチョ谷さんは「僕も170センチはあるのに『小さい、小さい』と言われて身長問題はありますね」と悔しい思いもしてきた。清流ビジョンでJRAのレース映像が流れ、馬券を買って応援するファンの歓声が上がる中、ステージ一帯は異次元の空気感。「令和のミスターパーフェクト」と「メジャーのMVP、本塁打王」のそっくりさん2人のコラボが競馬場で実現し、トークも「舌好調」だった。     

 ■「マリンスタジアムで長江騎手が始球式に登板したら面白い」

 長江騎手はロッテマリーンズのレプリカユニホームを着ており、「佐々木朗希投手が投げる日、ZOZOマリンスタジアムで長江騎手が始球式に登板したら面白いですね」との大澤アナのリクエストには、マチョ谷さんも「盛り上がりますよ、2人の顔合わせ。見てみたいですね近いうちに。佐々木投手が海を渡ったら、なかなか会えないので、日本にいるうちに」と、熱い思いを165キロ超えの快速球のように投げ込んだ。

ファンがレースで掲げる応援幕にサインを入れ、うれしそうな長江騎手(右)

 「佐々木投手に会ったことはまだ一度もないです」という長江騎手。「来年あたりがチャンスじゃないですか」という声には「こういうふうに取り上げてもらっているんで、ちょっと練習しておこうかと思います」とすっかりその気だ。本業のレース中にはファンが応援幕を掲げており、闘志に点火。勝利も増えてきた。

 沖縄生まれのマチョ谷さんは、関西育ちで銀行員をやっていたそうだが「タレント活動とイベントで皆さんと会えて楽しい人生です。こんな番狂わせがあるとは。筋肉を鍛えるフィジカルトレーナーとして仕事をしながら、そっくりさんとの二刀流で人生が劇的に変わったんですよ」と充実した日々を送っている。

 長江騎手は佐々木投手に似ていることについて「最初、人から言われましたね。佐々木投手がプロに入って有名になってきてから、お客さんや競馬場の人からよく言われて、このユニホームもプレゼントしてもらいました」とうれしそう。1年前、勝利を挙げたYJS笠松のレース後、ロッテファンの報道カメラマンから「どのくらい似ているか、見てみたいんだよ」と帽子とともに贈られたもので、「プロモデルの高くていいユニホームですね」と大澤アナ。「ただズボンが違いますよね明らかに。テレビに出るならストライプで合わせてもらいたいですね」と突っ込まれ「恥ずかしいですね。もっと勉強します」と長江騎手。次回はどこでどんな姿で登場するのか、注目していきたい。               

内馬場に設置されたプロレス会場前のコース内でもファンと交流

 ■注目を集め感謝、そっくりさんとの二刀流にも意欲

 これまで当欄でも「笠松の佐々木朗希」とアピール。ロッテ戦での始球式登板を「夢の球宴」として後押し。宮城球場での楽天戦では岩手競馬の関本玲花騎手らが始球式を務めており、今後、長江騎手がマウンドに立つチャンスもありそうだ。

 ジョッキーがこういう形で注目を集め「ありがたいなと思います。騎手以外のことでも取り上げて見てもらって」と長江騎手。これに対して「これからタレント?として懸命に生きていくわけですから」と大澤アナ。これにはマチョ谷さんは「騎手が副業のようになっていますが」と笑わせてくれたが、「よろしくお願いします」と長江騎手。そっくりさんとの二刀流にも意欲を見せていた。

サイン会でファンと交流する(左から)馬渕繁治騎手、松本一心騎手、マチョ谷さん、長江騎手

 「今回のイベントは、長江さんにとっても笠松競馬にとっても大きくプラスになること」と期待を込められると、「これを機に少しでも笠松のレースも見てもらえたら、ありがたいです」とアピール。スタンドには長江騎手のお母さんの姿もあり、「ご両親に感謝じゃないですか」との声には「この顔に産んでくれてすごく良かったと思っていますし、自分が大好きです。ありがとうございます」とメッセージを送り、スタンドから大きな拍手が湧き上がった。キャッチボールで使ったボールは、2人のサイン入りでチャリティーオークションに出品された。

 この日の夜には、クライマックスシリーズのロッテ―ソフトバンク戦で佐々木投手が約1カ月ぶりに復帰登板。3回をパーフェクトに抑え、ロッテが先勝。ファイナルステージ進出につながった。長江騎手は「デーゲーム」の多彩なイベントで無事完走。いい流れをマリンスタジアムへと運んだようだ。まだまだ始球式実現へのハードルは高そうだが、本業である騎手の方で勝利を積み重ねて登板をアピールしていきたい。

オークションで人気を集めた長江騎手の勝負服

 ■騎手らのお宝グッズ次々、長江騎手「3000円から」

 ラストイベントのチャリティーオークションも盛り上がった。笠松のほか名古屋、金沢、JRAの騎手らが協力して持ち寄った「お宝グッズ」の数々。サイン入りの勝負服をはじめ、ゴーグル、ゼッケンなどが次々と出品された。

 スタンドに陣取ったファンたちは「レアもの」に熱視線。ここでも長江騎手が「アンバサダー」を務め、誘導馬のようにファンを先導。より高値で買ってもらおうと大澤アナとともにオークションをサポートした。

 長江騎手は「3000円からいきましょう」などと値段を設定。推し騎手らの勝負服などをゲットしようと、落札価格がどんどん上がって一騎打ちの熱いバトルになると「おー、いいですね。でかいですね。対抗してますね」と盛り上げ。スタンドのファンたちは財布の中身を確認しながら、お宝グッズ争奪戦を繰り広げた。

 ■オークションでまさかの値下げパターン

 レースで着た勝負服の争奪戦で高値の声が乱れ飛んだ後、ゴーグルでは波乱が起こった。笠松トップジョッキーのサイン入りゴーグルは「1万円から」と始めたが、ファンの声は響かず。まさかの値下げパターンで5000円どまり。「スタートで恥をかかせて半額になるとは」との声に、長江騎手は「売れると思ったんですが」とガックリ。続く深沢杏花騎手のゴーグルは5000円からスタートすると、1万→1万4000円と跳ね上がってホッと一息。女性騎手ものは高額で落札され、JRA・永島まなみ騎手のゴーグルが2万円、今村聖奈騎手のバッグは1万6000円だった。

笠松グランプリ3連覇を飾ったラブバレットの優勝レイが最高値で落札された

 ■笠松グランプリV3・ラブバレット優勝レイ6万3000円で最高値

 昨年に続いて長江騎手の勝負服も登場し「皆さん、買ってください。お願いします」とスタンドに懇願すると、爆笑に包まれた。前回2万円だったが、今年は3万円にアップし落札されると、本人がその場でサインをして手渡し。勝負服では吉原寛人騎手の3万7000円が最高だった。

 ゼッケンも人気を集めた。アンカツさんが騎乗したレジェンドハンターのレプリカゼッケンが2万円。吉田勝利オーナー提供のJRA出走馬ゼッケンでは、中央競馬ファンが激しく競り合い、最後はマッチレース。中京記念出走のベジャールは3万8000円、札幌・ワールドオールスタージョッキーズ参戦の美女マリー・ヴェロン騎手(フランス)騎乗のビルボードクィーンには5万5000円と高値が付いた。YJS笠松で1着だった田口貫太騎手騎乗のシューラヴァーグは2万円。落札の最高値は笠松グランプリ3連覇を飾ったラブバレットの優勝レイで、3枚セット6万3000円だった。岩手の山本聡哉騎手&菅原勲調教師コンビで偉業を達成した名馬で、現在も笠松1400メートルのレコードホルダーだ。               

キャッチボールで使用した2人のサイン入りボールもオークションに出品された

 ■ナイター登板で「朗希コール」とともに大きな拍手

 笠松勢では岐阜金賞3着のエンジョイリッキー(渡辺竜也騎手)のゼッケンが1万5000円、ヒナアラレ(東川慎騎手)が1万円。ラストの商品は長江騎手とマチョ谷さんのサイン入りボールで、6000円まで上がって落札された。計44点が出品され、総額は昨年の50万円を上回る63万9000円だった。

 イベントに参加したマチョ谷さんも「すごいにぎわいで、めちゃくちゃ楽しかったです。サインボールもまさかの6000円でびっくりしてます」と大喜び。最後に長江騎手が「これからも笠松競馬の騎手、調教師、厩務員で頑張ってやっていきますので応援よろしくお願いします」とあいさつ。クライマックスシリーズのナイター登板?に向けて「皆さん行ってきます」と冗談を言うと、「朗希コール」とともに大きな拍手に包まれた。
 
 この日の2人は大活躍。日本では笠松だけの「騎手バス」乗車体験では、長江騎手もバスガイド役を務め、馬場の1100メートルコースを1周。森島貴之騎手、「新人」の松本一心騎手&馬渕繁治騎手もガイドになって、コースを案内。秋まつりの開会宣言を行った森島騎手は車内で「馬場の中にお墓がありますね。いま掃除をされていますが、通る時には拝んで供養してあげてください」と乗客を笑わせながら、坂越えやコーナーのきつさなどコースの特徴を紹介した。また長江騎手は騎乗練習用の木馬に乗ったり、ゲートからダッシュしてマチョ谷さんと競走。場内でのサイン会や記念写真の撮影でもファンと和やかに交流した。

渡辺明・永世竜王も来場。児童らとの「多面指し」で熱血指導を行った

 ■渡辺明・永世竜王が児童と「多面指し」熱血指導

 秋まつりのスペシャルゲストでは、将棋棋士の渡辺明九段(永世竜王・永世棋王)がトークショーや「多面指し」で大活躍。グリーンチャンネルの「競馬場の達人」にも出演されたことがある競馬好きで知られ、この日の秋華賞予想会にも参戦した。勝利を量産する渡辺竜也騎手は一部で「渡辺竜王」とも呼ばれており、竜王つながりの縁もあってか、渡辺明九段の笠松来場となった。

 同時に複数の人を相手にする「多面指し」では、児童ら7人と指導対局。家族らも見守る中、将棋好きの子たちが真剣なまなざしで駒を一手一手進め、渡辺明九段の丁寧で分かりやすいアドバイスを受けていた。「藤井聡太八冠」の誕生に沸く将棋界でタイムリーなイベントにもなり、未来のプロ棋士を夢見る児童たちは、渡辺さんの熱血指導に目を輝かせていた。

オグリキャップのライバル、1番人気はタマモクロス

 ■「オグリキャップのライバルといえば○○だ」タマモクロスが圧勝

 「多面指し」が行われた隣では「オグリの里・聖地編」コーナーも開設。秋まつりモードで「オグリキャップのライバルといえば○○だ」の人気投票も実施した。最初に吉田勝利オーナーがマーチトウショウに、競馬評論家の古谷剛彦さんはスーパークリークに1票。ウマ娘ファンとみられる若者がタマモクロスに投票すると1番人気をキープ。漫画「ウマ娘シンデレラグレイ」にも登場したタマモクロスは、場内の丸金食堂できしめんを食べていたシーンでも有名。オグリキャップとは「芦毛対決」で昭和最後の名勝負を演じた宿命のライバル。26票を獲得し、ぶっちぎりで1着ゴールを決めた。

 「平成3強」のイナリワンが2着、スーパークリークは3着。ホーリックスは4着だった。笠松勢ではマーチトウショウとハクリュウボーイ(引退後誘導馬・パクじぃ)が健闘。最後の1票は東海ダービー馬フジノノーザン。鷲見昌勇調教師がオグリキャップで取り逃がしたビッグレースのタイトルホルダーだった。ラストラン有馬記念で2着のメジロライアンには1票も入らなったのは意外でした。

 ■大盛況、二刀流で笠松競馬を盛り上げ

 好天に恵まれ、昨年より500人以上多くのファンが来場。大盛況だった秋まつり。前回は渡辺竜也騎手が中心になったが、今年は長江騎手が「笠松競馬盛り上げ隊の隊長」と呼べる活躍ぶりだった。もちろん本業はジョッキーだが「笠松の佐々木朗希」としても、今後も二刀流で笠松競馬を盛り上げてくれそうだ。


 ※「オグリの里 聖地編」好評発売中、ふるさと納税・返礼品に

 「オグリの里 笠松競馬場から愛を込めて 1 聖地編」が好評発売中。ウマ娘シンデレラグレイ賞でのファンの熱狂ぶりやオグリキャップ、ラブミーチャンが生まれた牧場も登場。笠松競馬の光と影にスポットを当て、オグリキャップがデビューした聖地の歴史と魅了が詰まった1冊。林秀行著、A5判カラー、200ページ、1300円。岐阜新聞社発行。岐阜新聞情報センター出版室をはじめ岐阜市などの書店、笠松競馬場内・丸金食堂、名鉄笠松駅構内・ふらっと笠松、ホース・ファクトリーやアマゾンなどネットショップで発売。岐阜県笠松町のふるさと納税・返礼品にも加わった。