整形外科医 今泉佳宣氏

 2007年に日本整形外科学会は「運動器の障害によって移動機能が低下した状態」をロコモティブシンドローム(以下ロコモ)と名付けました。13年11月4日付の本欄でロコモについて紹介しました。それから10年が経過し、あらためてロコモについての最近の知見をいくつかお話しします。

 ロコモの認知度について15年から毎年、全国調査が行われています。それによるとロコモという言葉を「理解している」または「聞いたことがある」と回答した人は、毎年45%前後でほとんど変わりありません。これは国が目標とする認知度80%に遠く及ばず、残念な状況が続いていると言わざるを得ません。

 次にロコモ度3の追加です。(いろいろな高さの台に座った状態からの)立ち上がりテスト、2ステップテスト(2歩幅÷身長)、ロコモ25(25項目の身体・生活チェック)の三つを組み合わせロコモの程度(ロコモ度)を評価するのですが、従来はロコモ度1と2しかありませんでした。しかし20年5月に最も重症であるロコモ度3が発表され、その程度を3段階に評価することになりました=表=。より細かい評価法に改定したことで、高齢者を対象としたスクリーニングや、通院している患者さんの状態の評価に役立つことが期待されています。

 三つ目はがんロコモです。がん診療の進歩で生命予後が改善し、がんになっても就労の継続や地域での社会参加の継続が可能となりました。しかしその継続を可能にするためには、がんが影響して移動機能が低下した状態、いわゆる「がんロコモ」への対応が重要となります。私たち整形外科医には「がんを治す」ことはできませんが、「がん患者が動ける状態を維持する」という役割が求められています。

 最後に子どものスポーツとロコモです。小中学生で部活動などのスポーツに定期的に参加していると、スポーツをしていない同年代の人と比べて筋肉の割合や骨密度が高く、体脂肪率が低くなることが最近報告されました。そして子ども時代に運動が好きで運動参加度が高いと50代以降も運動参加度が高くなっていることも報告されました。このことは子ども時代のスポーツへの参加が、将来のロコモを予防したり、進行を抑制したりする可能性があることを意味しています。

 以上、最近のロコモに関する話題をいくつか述べました。毎日、ロコモを意識して無理のない範囲で運動をしましょう。