―美術商・画商へのこだわりは。

 ただ絵を売買するだけでなく、専門資格と専門知識を強化して活動する、老舗としてニュータイプの美術商・画商を目指しています。発起人の一人として立ち上げた全国組織の協同組合美術商交友会運営、また学芸員資格を有する者も画廊に在籍しています。岐阜の生んだ巨匠・熊谷守一作品の取り扱いナンバーワン画廊として、価値を次の時代へ引き継ぐため、2018(平成30)年に長良文庫という別部門を設立しました。これまで地道に集めてきた熊谷先生の文献や各種資料をアーカイブ化することを進めています。

 ―創業からの歩みは。

 祖父が1919(大正8)年に創業しました。まだ画廊という言葉がなく、絵画の専門店もない時代でした。洋画材料を扱っていたこともあり絵描きさんの出入りが多く、自然と絵画も扱い始めたようです。柳ケ瀬画廊という名前になったのは2代目の父の代で70(昭和45)年からです。父は武者小路実篤先生とお付き合いがあり熊谷守一先生をご紹介いただきました。今日に至るまで熊谷作品を扱っています。

 私は、大学の専攻で美術関連のことを学びました。現役で活躍している方のことには詳しくなかったため、現場に出て毎日一歩ずつ美術商としての経験を積み重ねてきました。毎日が新鮮で楽しいです。美術商は本当に積み上げが大事で継続に尽きます。これまでに熊谷作品を、油絵だけでも240点以上を納品してきました。一人でも多くの方に熊谷芸術を知ってもらうために、美術館への熊谷作品の貸し出し、鑑定など、さまざまな活動をしています。

 ―地元柳ケ瀬の活性化について。

 岐阜柳ケ瀬商店街振興組合連合会や中心市街地協議会の会長を務めていますが、岐阜高島屋の閉店という難題が起きました。美術商として培ってきた人脈も駆使しながら、現状を切り開いていきたいと思います。