―研究内容について。

 予防医学による医療費削減を目指し、FPP(パパイヤ発酵食品)の研究を行う中で、特に認知症予防に注力しています。アルツハイマー病、パーキンソン病、認知症リスクの高い電磁波過敏症の患者さんでの臨床研究では、酸化ストレス・運動症状・認知機能・脳の血流低下・疲労・不眠などの改善が認められています。

 また、英国アストンマーティン社がル・マン24時間耐久レースに復帰した2005年より、アストンマーティン・レーシングのオフィシャルパートナーを務めており、レーシングドライバーとの実証研究も行いました。

 ―レースで得た知見の活用は。

 近年、高齢者の運転免許証返納の義務化の是非が議論となっていますが、地方では車の運転ができなくなることは深刻な問題です。耐久レースで得られたドライバーの身体的な負荷軽減に関する知見を、高齢者の運転技能維持にも応用したいと考えてきました。現在、中高年ドライバーを対象として大学とタクシー会社との共同研究の準備を進めています。

 この試みは、ドライバーの健康面での負担を軽減し、高齢化によるタクシー運転手不足という社会課題の解決にも通ずるのではないかと考えています。運転技能に関連する視覚や認知・身体機能に対するFPPの作用や、エコノミークラス症候群などの職業病の予防効果を検証し、論文としても成果を発表できる日を楽しみにしています。

 ―研究の目指す先は。

 車の安全性能の進化はますます進むと思いますが、運転を行う「ヒトの安全性能」、すなわち「ドライバーの健康維持・増進」をサポートすることで、運転時の技能維持とリスクの低減に貢献できるのではと。末長く運転を続けたいドライバーの支援に向けて邁進(まいしん)する年にしていきます。