ひざまずき、青いじゅうたんに額を押し当てて、信者たちが静かに祈りをささげる。「コロナの前は、いろんな国の人が肩を寄せ合いながら祈っていたのですが」。イスラム教徒(ムスリム)が集う岐阜市古市場の岐阜モスク(礼拝所)のイマーム(導師)、アブドルカーデル・オバリさん(48)が、周囲を見回してつぶやいた。
シリア出身で2002年に来日し、徳島大で医学を専攻。09年に結婚した妻の柚村詩乃さん(39)とともに11年に名古屋市へ。アラビア語の翻訳やアラビア文化の発信のほか、豚肉やアルコールを使わないハラル料理のケバブ専門店を経営するなどしていた。
日本での暮らしぶりやクルアーン(コーラン)への精通ぶりから、宗教法人の名古屋イスラミックセンター(名古屋市)に声を掛けられ、15年に岐阜モスクのイマームに就任した。岐阜での生活に不慣れなムスリムを助け、イスラム教への理解を広げるための講座なども行った。
モスクでは昨年、新型コロナウイルスの影響で6月までの3カ月、ムスリムにとって特別な「金曜礼拝」を中止した。特に重要な宗教行事「ラマダン(断食月)」があった4月は、折しも緊急事態宣言下。礼拝や日没後の食事会、断食明けの祭事など、全ての活動を取りやめた。
今年のラマダンは食事会をせず、礼拝のみ感染対策を講じて実施。今も、礼拝時は常時換気し、1メートルほどの間隔を空けて祈る。多い時は約120人いた参加者も、現在は多くて30人ほど。アラビア語講座やイスラム文化講座などは再開できていない。
宗教施設や外国人の会食でのクラスター(感染者集団)発生を受けて、信者には、感染対策の徹底を以前にも増して呼び掛けている。「ハラル料理を持ち寄ったり、それぞれの文化を学び合ったりする。以前のような憩いの場に戻る日を待ち望んでいる」










