結節性痒疹でのかゆみとかきこわしの悪循環(サノフィ疾患啓発サイト「アレルギーi」より引用)
結節性痒疹の皮膚症状

皮膚科医 清島真理子さん

 今回は結節性痒疹(ようしん)という聞き慣れない病気についてお話しします。まず、痒疹はその名の通り、とてもかゆい、いぼのようなぼつぼつができる皮膚の病気です。統計では皮膚科の外来を受診する患者さんのうち約2%が痒疹だそうです。痒疹の中で5ミリ以上の赤や茶色の盛り上がり(結節)がいくつもできる病気は結節性痒疹と呼ばれます。中高年に多く、数年以上も続くこともあります。

 結節性痒疹では強いかゆみのためにかきこわしてしまい、しばしば出血します。眠れないとか、寝付いてもかゆくて夜に目が覚めてしまい昼間に眠いという方もおられ、仕事に集中できないこともあります。皮膚症状のため、人目を避けたり、人付き合いが悪くなったり、不安症やうつ傾向など心の健康に支障を来すこともあります。結節性痒疹の患者さんのアンケートでは、かゆみで目が覚めることなくぐっすり眠りたい、対人関係で積極的になりたい、結節を気にせず服を選びたい、仕事や勉強に集中したいなどの希望が挙げられています。

 原因が全く分からないこともありますが、虫刺されやアトピー性皮膚炎、あるいは糖尿病、腎臓病などに関係していることがあります。これらの病気がないかを調べて、もしあった場合はその治療を始めます。

 原因がはっきりしない時は保湿剤を使ったスキンケア、抗ヒスタミン薬の飲み薬、ステロイドの塗り薬、紫外線治療を行います。しかし、それでもなかなかよくならない時や重症の時にはシクロスポリンという免疫抑制剤やステロイドの内服を行うこともあります。

 結節性痒疹でどんなことが起こっているか、最近の研究で少しずつ分かってきました。かゆみのためにかきこわしてしまい、皮膚に炎症が起きます。炎症には免疫細胞の出すインターロイキン(IL)-31や4、13といったサイトカインが関与していて、これらによってかゆみを伝える神経が増加したり、かゆみを起こす物質が増えたりして、かゆみがさらに強くなります。この繰り返しで皮膚にぼこぼことした盛り上がりが形成されてしまいます。

 そこで、最近では二つの注射薬が結節性痒疹の治療に使えるようになり効果を上げています。デュピクセントとミチーガという薬で、いずれも既にアトピー性皮膚炎で使われています。デュピクセントはIL-4と13を、ミチーガはIL-31を抑えることで炎症やかゆみを抑えます。それぞれ2週間置き、4週間置きに注射をします。ただし、一定期間塗り薬や飲み薬で治療しても十分な効果が得られない患者さんでのみ使えることになっています。

 なかなかよくならないかゆみの強いぼつぼつでお困りの場合には皮膚科専門医にご相談ください。