しもやけになった手(左)と足

皮膚科医 清島真理子氏

 3月になりましたが、まだ寒い日が続きます。冬に多い皮膚病の一つに“しもやけ”があります。凍瘡(とうそう)ともいい、冬の初めと終わりに多い皮膚病です。また、しもやけによく似た症状でも、実は全身疾患の一症状のことがあるのをご存じでしょうか? それではしもやけの話を始めましょう。

 しもやけは学童、幼児、若い女性に多く、寒冷にさらされた時に起こります。手指、足の指、手の甲、耳たぶ、頬によく起こります。赤色や赤紫色になり、腫れて少し盛り上がったように見えます。ひどいときは水膨れ、ただれ、潰瘍となることもあります。かゆい、痛い、あるいは痛がゆいとよくいわれます。

 寒冷刺激に対する皮膚の細い血管の反応の異常といわれています。しかし、寒冷時に皆がなるわけではありません。遺伝的素因がある人で、皮膚温の低下による静脈の循環障害が起こるとしもやけになるのです。平均気温4度以下で気温の日較差(1日の最高気温と最低気温の差)が10度以上になるとしもやけができやすいといわれていますが、岐阜ではそれが11月と3月ごろなのです。1~2週間でよくなりますが、冬の間に再発を繰り返し、春には症状がなくなって、また次の冬に起きるという経過のことが多いです。

 典型的なしもやけと少し違う場合は、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、サルコイドーシス、クリオグロブリン血症などの全身疾患の一症状のことがあります。特に春になって暖かくなってもしもやけが治らなかったり、繰り返したりする場合は皮膚科専門医にご相談ください。また、典型的なしもやけであっても、糖尿病や閉塞(へいそく)性動脈硬化症のある人は感染や組織の壊死によって重症化しやすいので注意が必要です。

 治療は温めるのが一番です。循環障害を改善するためにビタミンEや漢方薬、末梢(まっしょう)循環拡張薬などの飲み薬、ビタミンEやヘパリン類似物質の塗り薬、ひどいときはステロイドや、潰瘍の場合は抗潰瘍薬の塗り薬を使います。

 また、予防も大切です。寒い日の外出時にはしもやけができやすい部分の保温が重要です。手袋、耳当て、マスクなどを上手に使いましょう。なるべく寒冷刺激を避けるように、水仕事の時はゴム手袋などを使うとよいでしょう。手足が長時間ぬれていると皮膚の表面の温度が下がってしまい、しもやけを起こしやすくなります。しっかりと水分を拭き取ったり、靴下や手袋を取り替えたりして乾燥させるように心掛けてください。

 凍瘡とよく似た病名で凍傷という病気があります。こちらは冬山登山や、寒中に屋外で泥酔してしまった時など、超低温の状況で起こる皮膚病です。低温によって皮膚組織の壊死が起きて水膨れや潰瘍を生じ、ひどいと感覚がなくなってしまいます。マイナス12度以下が危険といわれていますが、風があるともう少し気温が高くても発症します。この場合はお近くの医療機関を受診してください。

(岐阜大学名誉教授、朝日大学病院皮膚科教授)