知床観光船沈没事故では、被害者弁護団が結成され乗客家族を支援している。昨年7月には運航会社と社長の桂田精一被告(61)=業務上過失致死罪で起訴=を相手取り、約15億円の損害賠償を求め集団提訴に踏み切った。山田廣代表(77)は「桂田氏個人の責任を明らかにし、真摯な謝罪をさせる」と力を込める。
始まりは、北海道弁護士会連合会が事故から約1カ月後に実施した無料の法律相談会。刑事罰や損害賠償の見通し、死亡届の取り扱いなど、さまざまな相談が相次いだ。道弁連の犯罪被害者支援委員会が中心となり、道外の家族にも対応できるよう各地の弁護士に協力を要請。2022年6月、組織を立ち上げた。
「家族は今後の不安に加え、事件や救助の遅れに対する怒りもあった。共感することから支援が始まった」と振り返る。
山田代表は被害者支援をライフワークとしてきた。原点は検事だった時代にさかのぼる。当時、被害者は家族以外に支援する人がおらず、社会から疎外されていた。弁護士として支援しようと決意。どのような支援を求めているのか受け止めることを大事にしてきた。