東日本大震災で父親が犠牲になり喪失感を抱えて生きる男子高校生を通じて、あの日から続く記憶や人々の再生を描いた映画「彼方の家族」を、坂内映介監督(26)らが完成させた。出身地の福島県南相馬市で被災した経験を10年以上の時間を置いて振り返り、当時感じた家族のぬくもりや、なにげない日常の尊さを投影した。「大切な誰かを思うきっかけになればうれしい」
震災で父を亡くした主人公奏多と、父親との間に問題を抱える陸が交流しながら、過去や家族、自分自身と向き合う81分の物語。山形や福島など、坂内さんの地元をほうふつとさせるロケ地にもこだわった。
制作のきっかけはやはり地震だ。2022年3月、南相馬市の実家に帰省していた時、強い揺れに襲われた。机を並べた同級生や家族と突然会えなくなるかもしれない不安。あの頃の感情がまざまざとよみがえった。
少し疎遠になった友達や家族に会いに行ってみよう。「そんな前向きな気持ちになってもらえたら」。上映先を募集中。問い合わせはムービー・アクト・プロジェクト。