奈良市の唐招提寺で行われた伝統行事「うちわまき」=19日午後

 奈良市の唐招提寺で19日、伝統行事「うちわまき」で知られる「梵網会」が開かれた。国宝の鼓楼から宝扇と呼ばれるハート形のうちわ約300本が次々と投げられ、地上で待ち構えた参拝客が手を伸ばして取り合った。

 午後3時ごろ、「ボーン」という鐘の音を合図に、僧侶2人が鼓楼の2階からうちわをまいた。うちわは僧侶や職員の手作りで、厄よけの御利益があるとされる。ひらひらと落ちるうちわを取った参拝客からは「やった」と歓声が上がった。

 同僚と訪れた奈良市の会社員甲斐志津香さん(50)は「5回目の参加。資格試験の合格と家族の健康を願った」と話した。

 うちわまきは鎌倉時代の同寺中興の祖・覚盛上人の命日にちなみ開催されている。上人が、蚊をたたこうとした弟子に対して「血を吸わせるのも修行のうち」と無駄な殺生を戒めた故事にちなみ、死後は蚊を追い払えるように上人の仏前にうちわを供えたのが始まりとされる。