つぼみのまま花を咲かせない植物「ヤツシロラン」の仲間は、花粉を運ぶ昆虫に頼らず自家受粉だけで繁殖していることを遺伝子解析によって証明したと、神戸大などのチームが24日までに発表した。自家受粉のみの植物の存在はダーウィンが疑問視していたが、今回初めて確認した。遺伝的多様性に乏しいため、突然変異や環境の変化によって比較的短期間で消滅する恐れがあるという。
多くの植物は花を咲かせ、昆虫や風の力を借りて花粉を運んでもらい受粉する。自家受粉する植物もあるが、昆虫などに花粉を運んでもらう戦略がうまくいかなかった場合の保険という位置付けだ。
チームは、鹿児島県の大隅諸島やトカラ列島に分布する「タケシマヤツシロラン」と「クロシマヤツシロラン」に着目。いずれも暗い林床で菌類から栄養を得て生息し、花を咲かせた姿はこれまで確認されていない。
この2種の遺伝子を解析すると、ある株から他の株に花粉が運ばれて受粉したような痕跡が見られず、チームは閉じたつぼみの中で起きる自家受粉のみで繁殖していると結論づけた。