芥川龍之介(1892〜1927年)が自作の詩12編をつづった冊子が見つかったことが31日、分かった。存在は知られていたが行方が分からなくなっていたもので、専門家は「『幻の詩集』と言える貴重な資料」としている。東京都北区の田端文士村記念館で6月7日から始まる企画展で公開される。
記念館によると、冊子は縦19・1センチ、横13・5センチ、厚さ2・3センチのハードカバー。1ページに1編の詩を配置するなどレイアウトにこだわり、ペンで丁寧に書かれていることから、詩集刊行を見据えた見本として作られた可能性があるという。
詩は全て4行で書かれ、「汝に夫あるはたへがたし」「二つ心のすべなさは/人間のみと思ひきや」と嫉妬や葛藤などを率直に記している。後ろの約300ページ分は白紙のままになっている。
12編の詩は全集などに掲載されており、専門家の間で冊子の存在自体は知られていたが、原本は確認されていなかった。1921年ごろに作られたものとみられ、記念館が今年4月に東京都内の古書店から入手した。