味の素グループの冷凍食品工場(千葉市)で働くパート従業員中村孝さん(60)=同市=が味の素と味の素冷凍食品に対し、業務改善提案を行うために費やした時間外労働分の賃金支払いを求め、千葉地裁に提訴したことが16日、本人や代理人弁護士への取材で分かった。社が提案を受け業務体制を是正するといった功績があり、「公益通報」に該当し得るとしている。

 代理人の黒葛原歩弁護士は、食の安全を脅かす問題を改善するため業務として行ったもので「手弁当であればこうした模範的な行為を誰もしなくなる」と意義を強調。米国では功績に応じた告発者への報奨金制度があり、「日本も声を上げた人が報われる社会になるべきだ」と訴えた。

 味の素と味の素冷凍食品の各担当者は「訴状が届いておらずコメントできない」としている。

 訴状によると、中村さんは別企業での経験や専門知識を生かし、厳正に管理すべき清掃用の薬品を、管理者以外が持ち出せる状態になっていると社の内部通報窓口に報告。社はこれを受け、取り扱い方法を文書で掲示するなどの対策をした。