自力歩行が困難なのに岐阜刑務所で車いすの貸与が長期間認められず、精神的苦痛を受けたとして、70代の男性受刑者が国に約150万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で名古屋高裁(中村さとみ裁判長)は19日、貸与しなかったのは障害に基づく差別に当たらないとした一審岐阜地裁の判決を支持し、原告側の控訴を棄却した。

 中村裁判長は判決理由で、不許可は診察を踏まえたもので、男性は歩行器で移動できたと指摘。一時期、床をはっていたのは「車いすに固執し、歩行器やつえを拒絶して自らはって移動した」と認定した。歩行器の使用で負った肘の傷も「重いものと認めるに足りる証拠はなく、判断は左右されない」とした。

 原告側の大野鉄平弁護士は判決後の記者会見で「刑務所による虐待を容認している」と批判した。上告する方針という。

 判決によると、男性は2011年1月に入所した際、車椅子の貸与を求めたが許可されなかった。21年2月、身体能力の大幅な低下が認められるとの診察を受け、貸与が認められた。