蘋果日報の本社があったビルの前に立つ元同紙記者=21日、香港(共同)

 中国に批判的な論調で知られた香港紙、蘋果日報(リンゴ日報)が香港当局によって廃刊に追い込まれてから24日で4年。民主派系のインターネットメディアも閉鎖になるなどメディアを取り巻く環境は大きく悪化。取材に応じた元同紙記者の30代男性は「当局が情報を公開しなくなり、画一的で表面的な報道が増えた」と嘆いた。

 男性は報道の仕事から離れているが「明らかに内容が薄い報道が増えた」と実感する。以前は当局者も社会で正確な情報を共有することの意義を認識し、発表以外にも取材に応じ市民が内容を理解する上で必要な情報をある程度話した。しかし「今は情報管理の徹底に重きが置かれている」。

 同紙には考え方が異なる記者が多くいたが、「重大事件が起きると一致団結して仕事を成し遂げる文化があった」と懐かしむ。取材テーマの選定も自由度が高く、必要なら人員や資金の投入をためらわない社風だった。現在は多くの優秀な記者がメディア業界を去った。影響力のあった同紙の廃刊で「社会で共通の話題を議論することが減った」と感じている。