初の勅撰和歌集「古今和歌集」について、平安後期―鎌倉初期の歌人藤原俊成による写本の一部が、天理大付属天理図書館(奈良県天理市)に残されていることが5日、分かった。日本大の久保木秀夫教授(国文学)が確認した。和歌の歴史や意義、古今集成立の経緯をまとめた「序文」と呼ばれる部分で、戦後に行方不明になっていた。

 久保木教授は「古典籍の研究に原本は不可欠。古今集に対する俊成の認識を明らかにしていくことができる」と意義を説明した。

 古今集は905年に紀貫之が中心になって編さんし、全20巻に約1100首の歌が収められている。古今集自体の原本は残っておらず、俊成の息子で歌人藤原定家の写本が広く知られている。久保木教授によると、今回の成果により定家への影響についても研究の進展が期待されるという。

 久保木教授の調査では、序文以外の写本の原寸大複製などと見比べたところ、寸法やとじ穴の位置といった特徴が一致した。勢いある筆跡など俊成特有の要素も確認。複数の専門家のチェックを踏まえて直筆と判断した。