日米関税交渉の合意により米通商政策を巡る不透明感が後退し、株価はひとまず上昇した。一方、ある程度の高関税が維持されるため、企業収益や賞与が減り、新たに借り入れる住宅ローンの負担が増える恐れもある。米国産の加工用や飼料用のコメは輸入が増える見通しだが、高騰する主食用米の小売価格の引き下げにはつながらないようだ。
米国は日本にとって最大の輸出先で、2024年は世界全体の約2割を占める。相互関税が25%から15%に引き下げられたことで、当初の見込みよりは悪影響が緩和された。ただ企業収益の下押し要因は消えていない。
第一生命経済研究所の熊野英生氏は、15%の相互関税が続くため「景気後退の可能性を回避したとは言いづらい」と指摘する。関税の支払いで企業収益が3兆2千億円下振れするため、冬のボーナスは減るとの見方だ。
野村総合研究所の木内登英氏は、今回の関税について日本の実質国内総生産(GDP)を0・55%押し下げると指摘する。相互関税25%の場合の押し下げ効果0・85%よりは小さくなり、日本経済への打撃はやや軽減されることになった。