徳山ダム(揖斐郡揖斐川町)の建設に伴い全村民が離村した徳山村の集団移転開始から約40年が経過した。村の最奥で水没を免れた「門入(かどにゅう)」と呼ばれる地区では、かつて住んでいた旧村民たちが定期的に帰郷している。ダム湖の水路や峠越えをして古里に一時滞在し、携帯電話が通じない山に閉ざされた場所で思いをはせる旧村民に同行した。

 湖畔の徳山会館から水資源機構の船で約40分、手前の集落の戸入(とにゅう)で下船してさらに置いてある車で30分ほど走る。窓から見える風景は湖からやがて川に変わり、数軒の家屋が見えてきた。車から降りると、7月上旬のうだるような暑さとは対照的に心地よい風が吹き抜け、鳥のさえずりや虫たちの鳴き声が耳に入ってくる。「ここに来るとやっぱり落ち着く。...