石破茂首相を取り巻く「民意」が複雑化している。参院選で大敗したのに、直後の世論調査では45%が「辞任は必要ない」と回答。SNS上では「#石破辞めるな」の投稿が広がる。専門家の意見も「選挙の責任を取るべきだ」との退陣論と、「民意は広く捉えていい」とする擁護論が並立する。
「衆参両院で民意が示されたのに、最高責任者が辞めないのは民意に反する」。7月28日の自民党両院議員懇談会。青山繁晴氏が「民意」という言葉を複数回用いて首相に退陣を迫った。同様の批判は他の所属議員からも上がった。
7月の参院選で自民、公明両党は計66の改選議席を47に減らし、衆院に続き参院でも少数与党に転落した。にもかかわらず首相は直後の記者会見で続投を表明した。
退陣論が強まる党内とは対照的に、SNSでは続投を望む投稿が拡散。官邸前などで激励集会が開かれる前代未聞の事態に発展した。
東京大の内山融教授(政治学)は、SNS投稿も集会への参加も「民意の表現の一種」だとし「選挙結果のみを踏まえて民意と言い切るのには疑問がある」と強調する。